
DXの事例11選を業種別に紹介!成功のポイントとは?
デジタル技術を活用して業務やビジネスモデルを革新する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、今や多くの企業にとって不可欠な取り組みとなっています。
しかし、「どこから着手すべきかわからない」「DXに成功した事例が知りたい」と感じている方も多いのではないでしょうか。本記事では、小売・医薬品・製造・運送など各業界でDXに成功した11社の事例をもとに、具体的な施策や成果、成功のポイントをわかりやすく解説します。自社のDX推進のヒントとして、ぜひ参考にしてください。
DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください。
リンプレスでは、DX推進人材を育成する研修プログラムと、DXの内製化をサポートするコンサルティングを提供しています。自社のDX推進にお困りの方はぜひご相談ください。
事例から学ぶDX推進のポイント
DXを成功に導くには、単なるIT導入にとどまらず、業務プロセスの見直しや企業文化の変革が欠かせません。
実際の事例を見ると、経営層が強いリーダーシップを発揮して現場と連携し、データやデジタル技術を活用して新たな価値を生み出しているケースが目立ちます。また、現場の課題を的確に捉え、小さく始めて効果を見ながら展開するステップも成功の鍵です。
DX化とデジタル化の違いとは?
デジタル化は紙の資料を電子化するなど、既存業務を効率化する手段を指します。一方、DXは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業文化そのものを変革し、新たな価値を創出することが目的です。DXは単なるツールの導入ではなく、企業の在り方そのものを見直す取り組みと言えます。
DXとデジタル化の違いについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。
DXとデジタル化の違いとは? 3つの視点でわかりやすく解説
【小売業界】DXを実施した企業の事例
小売業界では、消費者ニーズの多様化や業務効率化への対応が求められる中、DXの取り組みが加速しています。単なるオンライン化ではなく、リアルとデジタルの融合によって、顧客体験の向上やサプライチェーンの最適化を実現した企業が高く評価されています。
ここでは、アスクル株式会社と株式会社丸井グループの事例を紹介します。
アスクル株式会社
アスクル株式会社は、DXを重要課題と位置づけ、顧客体験の向上と革新的なバリューチェーンの構築を目指しています。
同社は膨大なECデータを自社だけで活用するのではなく、サプライヤー、担当販売店、配送事業者など、「機能主義」のビジネスモデルを構成するパートナー企業とデータを共有することでオープンイノベーションを推進している点が特徴です。このデータ共有により、業務効率を向上させ、物流の効率化や新たなビジネスモデル創出に成功しています。
また、BtoB事業におけるECサイト統合や、AIロボットを用いた物流センターのプロセス自動化により、労働負荷軽減とコスト削減を実現しています。
株式会社丸井グループ
株式会社丸井グループは「インパクト」を企業の方向性として掲げ、社会課題解決と企業価値の向上を目指しています。
DX推進の一環として、社長直轄の「DX推進室」を設置し、デジタルツールを活用した新ビジネスの創出や人材育成を進めています。特に注目すべきは、ブロックチェーン技術を活用したデジタル債の発行です。エポスカード会員向けに、投資と社会貢献の両立を実現させました。さらに「OMEMIE」サイトでは、テナントの出店契約をオンラインで完結させるシステムを構築し、リアル店舗未経験の企業にも対応可能な柔軟な出店環境を提供しています。
【医薬品業界】DXを実施した企業の事例
医薬品業界では、創薬スピードの向上や生産・品質管理の高度化が求められる中、DXが大きな役割を果たしています。デジタル技術を活用して研究開発やサプライチェーンの変革を進めることで、医薬品の安定供給や新薬の早期開発を可能にしている企業が多く見られます。
以下では、中外製薬株式会社、第一三共株式会社、塩野義製薬株式会社の先進的な取り組みを紹介します。
中外製薬株式会社
中外製薬は、将来のビジョンとして「画期的な薬を開発する企業」としての信頼を確立し、さまざまな企業や人材を引きつけることを目指しています。そのため、10年間の成長戦略「TOP I 2030」を策定し、デジタル技術を活用して創薬や開発の効率化、革新的なサービスの提供を進めています。
特に、「AI × デジタルバイオマーカー × リアルワールドデータ」を活用した個別化医療を目指し、DXを全社的に推進する体制の強化に注力しています。
さらに、社員のデジタルリテラシー向上を目指し、「Chugai Digital Academy」という独自の教育システムを構築しました。「高度解析型データサイエンティスト」「 デジタルプロジェクトリーダー」の本格育成もDX成功の鍵となっています。
第一三共株式会社
第一三共株式会社は、「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことを目指し、革新的な医薬品の創出と社会課題の解決に取り組んでいます。
DX推進の一環として、データ駆動型経営と先進的デジタル技術の導入を進め、「Healthcare as a Service」の実現を目指しています。具体的には、AIを活用した創薬の効率化、リアルワールドデータ(RWD)を活用した医薬品開発の最適化、RPA基盤を使ったバリューチェーンの効率化を行っています。また、AI画像解析技術を導入し、研究開発の加速化に貢献しています。さらに、データ統合基盤(IDAP)を活用し、安全性情報や治療情報を迅速に提供する体制を構築しています。
塩野義製薬株式会社
塩野義製薬株式会社(SHIONOGI)は、従来の「創薬型製薬企業」から「ヘルスケアプロバイダー」へと変革し、社会に新たな価値を提供することを目指しています。
DXを活用し、データに基づく意思決定システムや高度な業務プロセスを整備し、生産性向上を図っています。特に、コロナ治療薬の開発では、シミュレーション技術やAIを駆使して効率的に臨床試験を行い、緊急承認を得ました。今後はバリューチェーンのデータ連携を強化し、仮説と検証のサイクルを高速化することで、新たな価値創出を目指しています。
【機械・製造業界】DXを実施した企業の事例
製造業界では、熟練人材の減少やグローバル競争への対応が課題となる中、DXによって生産性向上やサービス型ビジネスへの転換が進んでいます。各社はIoTやAIなどの先端技術を活用し、従来のモノづくりを超えたソリューション提供に注力しています。
ここでは、株式会社小松製作所、株式会社トプコン、ダイキン工業株式会社の取り組みを紹介します。
株式会社小松製作所
株式会社小松製作所は、2022年から2025年にかけての中期経営計画「DANTOTSU Value」に基づき、DXを推進しています。具体的には、建設機械の自動化やデジタルツインを活用し、建設現場の安全性と生産性を向上させる「DXスマートコンストラクション」を進化させています。
また、鉱山機械分野では無人ダンプトラックの運行システム(AHS)を拡大し、オープンテクノロジープラットフォームを推進しました。従来型建機にICT機能を追加する「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」を導入し、デジタル化の促進を目指しています。さらに、デジタル人材育成やオープンイノベーション推進人材の育成を進め、社会とお客様のニーズに応えるための持続的成長を目指しています。
株式会社トプコン
株式会社トプコンは、「医・食・住」に関する社会的課題を解決し、豊かな社会づくりに貢献することを目指しています。
DX施策として、ヘルスケア分野では眼疾患の早期発見を促進するフルオートの3次元眼底像撮影機器、農業分野では自動化農機やデータ管理システムを提供、建設分野ではICT自動化施工システムを通じて、建設現場の効率化を図っています。
これらのDXソリューションは、ワークフロー全体の効率化と生産性向上に貢献しており、特に農業や建設分野ではデジタル化が進んでいない中、革新をもたらしています。さらに、グローバルなR&D拠点と強力なM&A戦略により、デジタル技術の獲得とソリューションの拡充を続けています。
ダイキン工業株式会社
ダイキン工業は、デジタル技術を活用して空気価値提供やソリューション事業を進めるために、「FUSION25」戦略を掲げています。この戦略では、ビジネスイノベーションとプロセスイノベーションの2つの観点からデジタル技術を活用し、新しいビジネス創出や既存ビジネスの発展を目指しています。
具体的には、空調分野ではIoT・AIを活用して、最適なエネルギーマネジメントを自動で行うシステムを提供するほか、クラウド型空調コントロールサービス「DK-Connect」を展開し、顧客の空調機の運転データを収集・管理することで、エネルギー効率の向上や管理工数の削減を実現しています。また、アフリカ市場では、サブスクリプション型の省エネ空調機を提供し、現地の課題である低い空調機の普及率や省エネ性能の不足に対応しています。
また、ダイキンでは「ダイキン情報技術大学」を設立し、社内でのデジタル人材の育成にも力を入れ、約400人が卒業し現場で活躍しています。これにより、デジタル技術を駆使できる人材を確保し、DX推進を加速しています。
【運送業界】DXを実施した企業の事例
運送業界では、デジタル技術の活用により、業務効率の向上や新たなサービスの創出が進められています。
以下に、日本郵船株式会社、ヤマトホールディングス株式会社、ANAホールディングス株式会社の取り組みを紹介します。
日本郵船株式会社
日本郵船株式会社は、DXを重要な戦略の一部として位置付けており、2023年に発表した中期経営計画では、デジタル技術を活用して新たな成長事業を開拓し、既存の事業を深化させる「ABCDE-X」の方法論を導入しています。
DX推進のために、日本郵船は自社のITリソースを「持たないIT」化し、業務プロセスの標準化やデータの活用を進めています。具体的には、パブリッククラウドへの移行や、海運事業ERPの導入により、業務の効率化と環境経営への貢献が実現されています。
また、人材育成にも力を入れており、「Project Mt. Fuji」プログラムでビジネスリーダーを育成し、全社的にデジタル人材を育成する体制を整えています。
同社のDXは脱炭素化にも貢献しており、ゼロエミッション燃料のアンモニアの実用化を目指し、船舶運航データを活用して安全運航や燃料節減も推進しています。
ヤマトホールディングス株式会社
ヤマトホールディングス株式会社は、2021年からデジタル戦略を中心に物流ネットワークやオペレーションの構造改革を進めています。具体的には、EC専用物流ネットワークを構築し、データ活用を基盤にコスト適正化と業務効率化を推進しています。
また、リアルタイムモニタリングを活用した医薬品物流の品質管理やトレーサビリティの強化を実現し、サプライチェーン全体の最適化を実現しました。デジタル技術を活用し、DXによる物流の価値提供を拡大しています。
ANAホールディングス株式会社
ANAホールディングス株式会社は、DXを経営基盤の一つとして位置付け、デジタル技術とデータ活用によるビジネス変革を加速しています。特に、顧客コミュニケーションの中心となる「ゲートアプリ」を開発し、100以上のANAグループのサービスを統合して提供している点が大きな変革といえるでしょう。
また、データ活用の推進に向けて、データマネジメント基盤「BlueLake」を構築し、コスト削減や業務効率化を実現し、構造改革を進めています。
DXに成功する企業の特徴
DXを成功に導くには、単にITツールを導入するだけでは不十分です。組織全体での意識改革と、戦略的なビジョンのもとで一貫した取り組みを行うことが求められます。
DX推進に成功している企業に共通する3つのポイントとして、以下が挙げられます。
経営層まで巻き込んだ改革を行う
DX指針に沿った方針を立てる
DX人材の育成に注力する
それぞれ、詳しく紹介します。
経営層まで巻き込んだ改革を行う
DXは企業の構造や文化を大きく変えるため、経営層の関与が不可欠です。
成功企業では、トップ自らがビジョンを示し、全社をリードしています。また、部門横断でプロジェクトを推進し、現場との対話を重視する姿勢が、変革の浸透を後押ししています。リーダーシップの有無がDXの成否を左右するといえるでしょう。
DX指針に沿った方針を立てる
経済産業省が示す「デジタルガバナンス・コード」などの指針に基づいて、現状の課題を把握し、段階的に戦略を策定することが重要です。成功企業は自社のデジタル成熟度を正しく評価し、優先順位を明確にしたうえで、実行可能なロードマップを描いています。これにより、着実かつ継続的なDX推進が実現できます。
自社のDXの方針決定に役立つ「デジタルガバナンス・コード」については、以下の記事で詳しく紹介しています。
デジタルガバナンス・コードとは|概要をわかりやすく解説
DX人材の育成に注力する
DXを進めるうえで、デジタルスキルを持つ人材の確保と育成は不可欠です。
成功企業では、社内教育プログラムやリスキリングの導入を通じて、社員のスキル向上に取り組んでいます。また、外部人材との連携や専門部門の設置など、人材面での投資を惜しまず、変革を支える基盤づくりを行っています。
DX人材の育成に注力した企業の事例については、以下の記事で詳しく紹介しています。
DX人材を育成した事例8選を紹介|大手企業から学ぶ成功のポイント
DXの内製化・人材育成には「リンプレス」
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リンプレスのDX推進人材育成プログラム
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IT・システム企画研修
IT・システム企画研修では、デジタル技術を活用したビジネス設計力を養えます。
ビジネスプロデューサーに求められるのは、技術に詳しいことだけではなく「技術をどう使って価値を創出するか」を描く力です。本研修では、システム要件の整理方法や業務改善のアプローチの基本などを学ぶことで、DX時代に対応したビジネスプロデュース力が身につきます。
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デザイン思考研修は、ユーザー中心の視点で課題解決を行う思考法を学ぶプログラムです。顧客の潜在ニーズを引き出し、共感・発想・試作・検証のプロセスを通じて新しい価値を創出する力を育みます。既存の枠にとらわれない柔軟な発想力は、ビジネスプロデューサーに欠かせません。チームでのワークショップ形式によって、実践的に思考法を習得できる点も魅力です。
プロジェクトリーダー研修
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まとめ
本記事では、業種別に11の企業事例を通じて、DXの具体的な取り組みと成功のポイントを紹介しました。DXを推進するには、経営層のリーダーシップ、明確な方針、そして人材育成が不可欠です。特に、単なるデジタル化にとどまらず、ビジネスモデルや企業文化の変革を伴う「真のDX」が求められています。これからDXに取り組む企業は、今回紹介した事例を参考に、自社の課題に即した戦略を描いてみてはいかがでしょうか。内製化や人材育成を進めたい場合は、リンプレスの支援もご活用ください。
<文/文園 香織>











