
デジタルガバナンス・コードとは|概要をわかりやすく解説
企業の競争力を高めるために、DXは欠かせない要素となっています。しかし、DXをどのように進めるべきか分からない企業も多いのが現状です。そこで重要になるのが「デジタルガバナンス・コード」です。これは、企業が適切にデジタル技術を活用し、経営戦略と一体化させるための指針を示したものです。本記事では、デジタルガバナンス・コードの概要やDX推進の方法、成功のポイントについて解説し、企業が持続的に成長するためのヒントを提供します。
DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください。
リンプレスでは、DX推進人材を育成する研修プログラムと、DXの内製化をサポートするコンサルティングを提供しています。自社のDX推進にお困りの方はぜひご相談ください。
目次[非表示]
デジタルガバナンス・コードとは
デジタルガバナンス・コードは、企業がデジタル技術を活用し、持続的な成長と競争力の向上を図るための指針です。経済産業省が策定し、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の枠組みを明確にすることで、企業が適切なデジタル経営を行うための基準を示しています。
具体的には、デジタル技術の活用方針や組織体制、リスク管理など、経営レベルでの取り組みの指針が示されています。デジタルガバナンス・コードは、企業のDX推進の方向性を定めるだけでなく、投資家や取引先などのステークホルダーに対して、企業のデジタル戦略の透明性を高める役割も担っています。
「DX認定制度」の審査における重要性
デジタルガバナンス・コードは、DX認定制度の審査基準として重要な要素となっています。
DX認定制度とは、経済産業省が企業のデジタル経営の成熟度を評価し、一定の基準を満たした企業を認定する制度です。審査では、企業がデジタルガバナンス・コードの考え方に沿ってDXを推進しているかが問われ、特に「ビジョン・戦略」「ガバナンス体制」「リスク管理」などの項目が評価の対象となります。
認定を受けることで、企業としてDXに積極的であるという姿勢を示すことができ、投資家や取引先からの信頼を獲得しやすくなります。また、政府や自治体が実施するDX関連の補助金・支援策を活用しやすくなるメリットもあります。そのため、企業にとってデジタルガバナンス・コードの適用は、競争力強化の重要な要素となっています。
デジタルガバナンス・コード3.0の概要
デジタルガバナンス・コードは時代に合わせてアップデートが行われており、2025年2月現在において「デジタルガバナンス・コード3.0」が最新版となっています。
デジタルガバナンス・コード3.0は、「3つの視点」と「5つの柱」から構成されています。
それぞれの視点から、概要を紹介します。
3つの視点
デジタルガバナンス・コードでは、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する際に意識すべき、以下の「3つの視点」が示されています。
● 経営ビジョンとDX戦略の連動
● As is - To beギャップの定量把握・見直し
● 企業文化への定着
これらの視点をバランスよく考慮することで、企業はデジタル技術を活用しながら持続的な成長を実現できます。それぞれの視点について、具体的に見ていきましょう。
経営ビジョンとDX戦略の連動
DXを推進するには、経営ビジョンとDX戦略を一貫性のあるものにすることが不可欠です。デジタル技術の導入が単なる業務効率化にとどまらず、企業の成長や競争力向上につながるよう、経営層が明確なビジョンを打ち出す必要があります。
そのためには、DX戦略を経営計画に組み込み、中長期的な視点でデジタル変革を進めることが重要です。例えば、データ活用を中心としたビジネスモデルの転換や、新たなサービス創出を目指す際には、経営陣が主導してDXの方向性を示し、組織全体で取り組む体制を整えることが求められます。
経営戦略とDX戦略が連携することで、企業はより効果的にデジタル技術を活用し、持続的な成長を実現できます。
As is - To beギャップの定量把握・見直し
DXの成功には、現在の状態(As is)と理想的な未来の状態(To be)を明確にし、そのギャップを定量的に把握することが必要です。
デジタルガバナンス・コードでは、現状と目指すべき姿を具体的な指標で評価し、定期的に見直すことを推奨しています。データ活用度、業務プロセスのデジタル化率、新技術の導入状況などをKPIとして設定し、定量的な目標を持つことで、DXの進捗を測ることが可能になります。
ギャップを明確にすることで、課題の優先度を整理し、適切な施策を実施できるようになるでしょう。DXは一度で完結するものではなく、継続的な改善が必要なため、定期的な見直しが企業の成長に直結します。
企業文化への定着
DXの推進には、企業文化の変革が不可欠です。デジタル技術を活用するだけでなく、従業員の意識や行動の変化を促し、DXを企業文化として根付かせることが求められます。
そのためには、全社的なDX推進体制の構築や、従業員教育の強化が重要になります。デジタルリテラシー向上のための研修を実施したり、社内でのデジタル活用事例を共有したりすることで、従業員の理解を深めることができます。
また、DX推進に対するインセンティブを設けることで、社員の積極的な参加を促すことも有効です。企業文化としてDXを定着させることで、変化に強い組織を作り、市場環境の変化に柔軟に対応できるようになります。
DX人材を育成する研修は、プロによるサポートを受けることでより高い成果が見込めます。
累計4,000社以上の支援実績を持つ「リンプレス」によるDX推進人材育成プログラム一覧は、以下のリンクからご覧いただけます。御社の課題に合わせて、最適なカリキュラムをご提案いたします。
リンプレス DX推進人材育成プログラム
5つの柱
デジタルガバナンス・コード3.0では、企業がDXを推進する際に重視すべき以下の「5つの柱」が示されています。
- 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
- DX戦略の策定
- DX戦略の推進
- 成果指標の設定・DX戦略の見直し
- ステークホルダーとの対話
これらの要素をバランスよく取り入れることで、企業はデジタル技術を活用しながら持続的な成長と競争力の向上を実現できます。ここでは、5つの柱について詳しく解説します。
1.経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
デジタル変革を成功させるためには、まず企業の経営ビジョンを明確にし、それに基づいたビジネスモデルを策定することが不可欠です。
DXの実現に向けて、経営層は「どのような市場でどのような価値を提供するのか」「デジタル技術をどのように活用するのか」といった長期的な視点を持ち、ビジョンを具体化する必要があります。
例えば、データ活用を基盤とした新しい収益モデルの構築や、AI・IoTを活用した顧客サービスの強化などが考えられます。また、サブスクリプションモデルを導入するといった方法で従来のビジネスモデルをデジタル化することも、競争力を高める手段となります。こうした経営ビジョンが明確であれば、DXの方向性が組織全体に共有され、各部門が連携しやすくなります。
2.DX戦略の策定
デジタルガバナンス・コードの5つの柱では、経営ビジョンを実現するためには「DX戦略」を策定することが必要であるという指摘もされています。DX戦略とは、企業がデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、市場競争力を高めるための具体的な計画です。
戦略を立案する際には、まず短期・中期・長期の視点を持ち、デジタル技術の導入ロードマップを明確にします。例えば、「3年以内にデータ基盤を構築し、業務のデジタル化を進める」「5年以内にAIを活用したパーソナライズドサービスを導入する」といった段階的な目標を設定すると、組織全体のDX推進がスムーズになります。また、DX戦略を実行する際には、KPI(重要業績評価指標)を設定し、進捗を定期的に確認することも効果的です。
明確な戦略があれば、デジタル投資の優先順位を決定し、限られたリソースを最大限に活用することができます。
DX戦略については、以下の記事で詳しく紹介しています。
『DX戦略とは?策定する方法や実行の手順・事例を紹介』
DX戦略の推進
DX戦略を策定した後は、それを実際に推進するための具体的な取り組みが必要です。デジタル技術の導入だけでなく、組織体制の整備、人材の育成、ITインフラの構築・強化が求められます。DXの成功には、企業全体の変革が不可欠であり、経営層のリーダーシップと現場の協力が重要になります。ここでは、DX戦略を推進するために不可欠な3つの要素について詳しく解説します。
①組織づくり
DXを効果的に推進するためには、DXをリードする組織の整備が必要です。多くの企業では、DX推進室やCDO(Chief Digital Officer)を設置し、全社的なデジタル戦略を統括しています。
また、各部署がDXを自発的に推進できるよう、部門横断型のチームを編成することも有効です。DXの方針を明確にし、経営層と現場が連携しながら進めることが成功の鍵となります。
②デジタル人材の育成・確保
DXを推進するには、デジタル技術やデータ分析に精通した人材の確保が欠かせません。
社内での教育・研修を充実させるとともに、必要に応じて外部の研修サービスやコンサルティングの活用も検討すべきです。また、従業員全体のデジタルリテラシーを向上させることも重要であり、基礎的なITスキルを持つ社員を増やすことで、組織全体のDX対応力を高めることができます。
リンプレスのIT基礎トレーニングコースについて詳しくはこちら
③ITシステム・サイバーセキュリティ
DX推進には、強固なITインフラの整備が必要不可欠です。
クラウドサービスの活用、データ基盤の構築、AI・IoTの導入など、最新技術を適切に取り入れることで、業務の効率化や新たなビジネスモデルの構築が可能になります。デジタル化が進むほど、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクが高まるため、セキュリティ対策の強化はDXの成否を左右する要素となります。
4.成果指標の設定・DX戦略の見直し
DXの進捗を測るためには、適切な成果指標(KPI)を設定し、定期的に見直すことが重要です。
DXの効果を可視化するための数値目標の具体例は以下の通りです。
● デジタル化による業務効率の向上率
● 新規顧客の獲得数
● データ活用による売上増加率
また、DXは一度策定した戦略をそのまま実行するのではなく、環境の変化や技術の進化に応じて柔軟に見直す必要があるという点もデジタルガバナンス・コード内で言及されています。市場の動向、顧客ニーズ、競争環境の変化に対応しながらDX戦略を継続的に改善するには、定期的な社内レビューや外部専門家の意見を取り入れることも有効です。
5.ステークホルダーとの対話
DXを成功させるためには、企業内部だけでなく、外部のステークホルダーとの対話も重要な要素です。投資家、取引先、顧客、政府機関など、さまざまな関係者とのコミュニケーションを通じて、DXの方向性を明確にし、理解を得なくてはなりません。
特に投資家に対しては、DXが企業の成長戦略にどのように貢献するのかを説明することで、適切な資金調達につなげることができます。また、取引先とのデータ連携や共通プラットフォームの活用により、サプライチェーン全体の効率化を図ることも可能です。さらに、顧客との対話を通じて、DXによる新たな価値創出のヒントを得ることができるため、定期的なフィードバックを取り入れることが重要です。
ステークホルダーとの継続的な対話を行うことで、DXの取り組みをより実効性のあるものにし、企業価値の向上につなげることができます。
デジタルガバナンス・コードにおけるDXの推進方法
デジタルガバナンス・コードに基づくDXの推進は、単なるデジタル技術の導入にとどまらず、企業のビジネスモデルや経営戦略の根本的な変革を目的としています。DXの推進には明確な定義の理解、成功のためのポイントの整理、そして適切な人材の確保が欠かせません。ここでは、それぞれの要素について詳しく解説します。
DXの定義
DXとは、デジタル技術を活用して、企業のビジネスモデルや業務プロセスを革新し、競争力を高める取り組みを指します。経済産業省の定義によれば、「企業がデータとデジタル技術を活用し、製品・サービス・ビジネスモデルを変革するとともに、業務や組織、企業文化を変革することで競争上の優位性を確立すること」とされています。
つまり、DXは単なるIT化とは異なり、企業の経営戦略の根幹に関わるものです。例えば、クラウドサービスの活用による業務効率化、AIやIoTを活用した新たなサービス提供、データドリブン経営の導入などが挙げられます。企業がDXを推進するためには、自社の現状を分析し、目指すべき「To Be」の姿を明確にしたうえで、戦略的にデジタル技術を導入することが重要です。
DXを成功させる6つのポイント
DXを推進するにあたり、成功へと導くための重要なポイントが6つあります。
-
経営層のコミットメント
DXは全社的な取り組みであり、経営層の強いリーダーシップが必要です。経営戦略にDXを組み込み、全社的に推進する姿勢を示しましょう。
-
明確なビジョンとロードマップの策定
DXの目的や目指す方向性を明確にし、短期・中期・長期のロードマップを作成することで、計画的に変革を進めることができます。
-
データドリブン経営の推進
データを活用した意思決定がDX成功のカギとなります。社内外のデータを有効に活用し、リアルタイムでの経営判断ができる環境を整えることが求められます。
-
組織文化の変革
DXを定着させるためには、社内の意識改革が不可欠です。従業員がデジタル技術を活用することに対して前向きになれるよう、教育や制度改革を行うことが重要です。
-
適切なITインフラとセキュリティの強化
クラウド、AI、IoTなどの技術導入とともに、サイバーセキュリティ対策の強化が不可欠です。デジタル化が進むほど、情報漏えいリスクも高まるため、強固なセキュリティ体制を整える必要があります。
-
外部パートナーとの連携
自社内だけでDXを完結させるのではなく、外部のIT企業やスタートアップ、研修サービス会社などと連携し、最新技術の活用やノウハウの共有を進めることで、DXを加速できます。
これらのポイントを意識しながら取り組むことで、DXの成功率を高めることができます。
DX実現のための人材確保
DXを推進するためには、専門知識や技術を持ったデジタル人材の確保が不可欠です。自社内での研修やスキルアップ、外部からの採用、パートナー企業との協業など、さまざまな手法を組み合わせ、幅広い人材を育成・採用することが求められます。さらに、全従業員のデジタルリテラシー向上を図る取り組みを進め、変革に柔軟に対応できる組織風土の醸成を目指すことが、DX実現の鍵となります。
外部サービスを活用したDX戦略にはリンプレス
デジタルガバナンス・コードなどの指針に基づいたDX人材育成をお考えなら、リンプレスにご相談ください。
リンプレスでは、企業のDX推進を支援する専門的な研修プログラムを提供しています。
リンプレスの研修は、業界や企業の特性に応じたカスタマイズが可能で、基礎的なDX・ITリテラシーの向上から、専門的なスキルの習得まで幅広く対応しています。
特に、アイデアを創出する上流工程において、論理的な思考に基づいて企画を立案する力を身につける研修に強みがあります。基礎的なDXリテラシーだけではなく、「DXを推進するリーダー人材を育成したい」「社内のシステム開発における企画立案力を伸ばしたい」といったニーズにもお応えいたします。
リンプレスのDX研修を実際に導入した事例
ここからは、リンプレスのDX研修を実際に導入した2社の事例を紹介します。
株式会社キタムラ
株式会社キタムラは、全国に1,000店舗以上を展開する写真映像事業の大手企業です。
同社はDX推進に向けた人材育成に課題を抱えており、特に「デジタルを活用した顧客サービスの向上」と「IT戦略の社内浸透」が大きな課題でした。従来の社内研修では、現場での実践的なスキルが不足し、「攻めのIT」を目指すDX推進のスピードに追いつけない状況にありました。
そこで、リンプレスの「顧客分析研修」「プロジェクトリーダー実践研修」「IT・システム企画実践研修」を導入します。対面形式かつカスタマイズ性が高い研修を通じて、実践スキルが身についただけではなく、他社のSEとの交流を通して学ぶことができたと大変ご満足いただけました。
こちらの事例について詳しくは、以下のリンクからご覧いただけます。
株式会社キタムラ様の事例 実践型研修を通じて「カメラのキタムラ」のDX推進人材育成を支援
東洋船舶株式会社
東洋船舶株式会社は、船舶関連ビジネスのソリューションプロバイダーとして、国内トップクラスの用船仲介サービスなど多面的な事業を展開しています。同社は、会社規模や事業拡大に伴い、情報システム部門の負担増加と迅速な対応の難しさという課題に直面していました。
この課題を解決するため、2024年3月にリンプレスの「企画研修」および「プロジェクトマネジメント研修」を導入します。リンプレスの研修により、現場部門の社員が自ら業務プロセスを理解し、課題を抽出・解決するスキルを習得できました。結果として、社員の意識改革が進み、業務改革の推進力が向上しました。
こちらの事例について詳しくは、以下のリンクからご覧いただけます。
東洋船舶株式会社様の事例 「全社員IT武装化」実現に向けた取り組みに迫る
まとめ
デジタルガバナンス・コードは、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、競争力を強化するための指針です。DXを成功させるには、経営ビジョンとDX戦略の連携、現状と理想のギャップ把握、組織体制の整備、成果指標の設定、ステークホルダーとの対話が重要です。また、DX推進にはデジタル人材の確保・育成が不可欠であり、組織全体のデジタルリテラシー向上が求められます。企業は継続的に戦略を見直しながら、最新のデジタル技術を活用し、持続的な成長を目指すことが重要です。
経営指針に沿ったDXの推進にお悩みなら、ぜひリンプレスにご相談ください。
<文/文園 香織>