
DXフレームワークとは?自社のDX推進に活用するためのポイントを紹介
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進したいと思っても、「何から始めればよいかわからない」「現状の課題が整理できていない」と悩む企業は少なくありません。
そこで有効なのが、経済産業省が提唱する「DXフレームワーク」です。
本記事では、DXフレームワークの概要や3つの進化段階、5つの評価領域を解説し、具体的な活用方法やその他の有用なフレームワークまで紹介します。
DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください。
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DXフレームワークとは?
DXフレームワークとは、企業がデジタル変革(DX)を成功させるためにとるべきアクションを段階ごとに整理したものです。経済産業省が2020年に公表した「DXレポート2」において提唱され、DXの進め方がわからない企業でも具体的なDXアクションを実施できるように設計されています。
DXフレームワークは主に「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」という3段階でDXアクションを提案しています。
DXフレームワークの目的と役割
DXフレームワークの目的は、企業がDXを単なるデジタル化ではなく、経営変革の一環として捉え、計画的に推進することを支援する点にあります。
特に「DXレポート2」では、DX推進のための重要な視点を明示し、経営層のコミットメントや組織体制、IT資産の刷新、人材育成といった多面的な評価項目が設定されています。これにより、企業は自社のDXの進捗状況や課題を客観的に可視化し、取り組むべき優先事項を明確化できます。
DXフレームワーク|3つの段階
先述の通り、DXフレームワークは以下の3つの段階でDXを構造化しています。
デジタイゼーション
デジタライゼーション
デジタルトランスフォーメーション
それぞれの段階について、詳しく見ていきましょう。
1.デジタイゼーション
デジタイゼーションとは、紙やアナログで管理されていた情報をデジタルデータに置き換えるプロセスです。
たとえば、手書きの帳票をExcelにする、紙の契約書をPDFにする、といった業務の「デジタル化」が該当します。
この段階はDXの第一歩であり、業務効率の向上やデータ活用の土台を築くことが目的です。ただし、ここで止まってしまうと単なる省力化にとどまり、DXとは言えません。次のステップに進むための基盤整備と捉えることが重要です。
2.デジタライゼーション
デジタライゼーションは、デジタイゼーションで得たデータを活用して業務プロセスそのものを見直し、改善する段階です。
たとえば、紙で行っていた受発注管理をクラウドシステムに移行し、自動化やリアルタイム処理を実現することなどが挙げられます。
業務効率や顧客対応力の向上が主な目的で、部門単位での改善が中心となります。この段階では、ITを単なるツールではなく、業務の変革手段として活用する視点が求められます。
3.デジタルトランスフォーメーション
デジタルトランスフォーメーションは、ビジネスモデルや企業文化そのものを見直し、デジタル技術を軸に再構築する段階です。
単なる業務改善ではなく、新たな価値創出や収益構造の変革を目指します。たとえば、製造業がIoTを活用してサービスビジネスに転換するなど、大胆な経営革新が該当します。
この段階では経営層の強いリーダーシップと、組織全体での変革への覚悟が不可欠です。真のDXはこの段階の実現にあります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)については、以下の記事で詳しく紹介しています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や事例・成功のポイントを紹介
DXフレームワーク|5つの領域
画像出典元:経済産業省|DXレポート2
DXフレームワークでは、以下の5つの領域も重要な要素となります。
ビジネスモデルのデジタル化
製品/サービスのデジタル化
業務のデジタル化
プラットフォームのデジタル化
DXを進める体制の準備
これらの5つの領域が、「未着手」「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」のうちどこまで進んでいるかという方法でDXの進度を測ることができます。
これらは相互に関連しており、いずれかが欠けてもDXはうまく進みません。たとえば、戦略があっても古いITシステムが足かせとなれば変革は困難です。
自社の強みと弱みをこの5領域に沿って可視化し、バランスよく整備していくことで、着実かつ継続的なDXの実現が可能になります。
DXフレームワークの活用例
DXフレームワークは、多くの業界で活用されています。ここでは例として、製造業でのDXフレームワークの活用例を紹介します。
某社では、「装置を占有する作業時間を減らして1ロットの生産にかかる時間を短縮したい」という課題がありました。この場合は、5つの領域のうち「業務のデジタル化」が当てはまります。さらに、DXに向けたアクションを3つの段階で以下のように細分化します。
①デジタイゼーションのアクション
・製造装置を電子化する
②デジタライゼーションのアクション
・製造プロセスをソフトウェア化する
③デジタルトランスフォーメーションのアクション
・製造を遠隔化する
③の「製造を遠隔化する」が実現すれば、遠隔地にある製造装置に対して直接出力するという新たなビジネスモデルへと変革でき、DX成功となります。
このように、段階的にアクションを決めることで計画的なDX推進の道筋を作るのが、DXフレームワークです。
DXに使えるその他のフレームワーク
DXを推進する際は、経産省のDXフレームワークだけでなく、以下のような他のビジネスフレームワークも併用することでより実践的な戦略立案が可能になります。
SWOT分析
ビジネスモデルキャンバス
デザイン思考
こうしたフレームワークを組み合わせることで、自社の強みを活かした差別化戦略や、ユーザー視点に立ったサービス設計がしやすくなり、実行可能性の高いDX施策へとつながります。
一つずつ、詳しく見ていきましょう。
SWOT分析
SWOT分析は、自社の強み(Strengths)・弱み(Weaknesses)、外部環境の機会(Opportunities)・脅威(Threats)を整理するフレームワークです。
DX推進においては、既存の業務や資源の中でどこにデジタル技術を活用できる余地があるかを明確にするのに役立ちます。たとえば「古い業務フローが弱み」「リモートワークニーズが機会」など、現状と市場環境を俯瞰することで、最適なDX戦略の方向性が見えてきます。限られたリソースを有効活用するためにも、初期段階での分析は重要です。
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスの構成要素を「顧客」「提供価値」「チャネル」など9つに分けて可視化するツールです。
DXを検討する際、既存のビジネスモデルのどこを変革すべきかを把握するのに効果的です。
例として、「提供価値」を見直すことでデジタルを活用した新たなサービスを設計できたり、「チャネル」をオンライン化することで販路拡大が可能になります。
関係者間で共通認識を持ちやすく、アイデアを迅速に具体化する際にも有用なフレームワークです。
デザイン思考
デザイン思考は、ユーザー視点を重視しながら課題発見から解決策の創出までを行うアプローチです。DXにおいては、単なる業務効率化ではなく「顧客体験価値の向上」を目指す際に不可欠な手法といえます。
ユーザーの本質的なニーズを観察し、共感しながら解決策を構築していくため、新サービスやプロダクトの開発にも適しています。また、試作と検証を繰り返すことで失敗を恐れずスピーディに改善できる点も、変化の激しいデジタル領域では大きな強みです。
デザイン思考の基本情報については、以下の記事で詳しく紹介しています。
デザイン思考とは?業務改善に役立つ思考法を組織に定着させる方法を解説
リンプレスでは、DX人材育成に特化した「デザイン思考研修」のプログラムを提供しています。
観察・共感から始まり、問題の定義、アイデア創出、プロトタイピング、検証という一連のプロセスを、ワークショップ形式で体系的に学べるのが特長です。個人ワークだけでなくチームによるディスカッションも多く、現場での課題発見・アイデア提案の実践力を高めたい企業に最適な研修です。
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DX戦略にフレームワークを活用するメリット
DXを進めるうえで、フレームワークを活用することには多くの利点があります。フレームワークに沿ってDX戦略を策定することで以下のようなメリットが期待できます。
抜け・漏れのない体系的な推進が可能
経営層と現場が共通言語で会話できるようになる
自社に合ったDX計画の立案がしやすくなる
抜け・漏れのない体系的な推進が可能
DXは単なるツールの導入ではなく、経営や業務の抜本的な変革を意味します。
フレームワークを用いれば、戦略・人材・IT・組織文化など、重要な視点を体系的に整理することができます。これにより、重要な要素を見落とすリスクが減り、全体最適を見据えたDX推進が可能になります。
また、評価軸が明確になることで、社内の進捗管理や課題抽出も行いやすくなり、PDCAを回しながらの継続的改善にも有効です。
経営層と現場が共通言語で会話できるようになる
DX推進には、経営判断と現場の実行力の両方が求められます。フレームワークを活用することで、全社的な取り組みにおける共通の「物差し」が生まれ、部門間・階層間の認識のずれを防げます。
たとえば、「IT刷新」といっても、経営層と現場では解釈が異なることがありますが、フレームワークに基づくと定義が明確になるため、スムーズな意思疎通が可能になります。これにより、DX推進のスピードと納得感の両立が図れます。
自社に合ったDX計画の立案がしやすくなる
フレームワークは、業種や企業規模を問わず、汎用的に使える構造を持っていますが、そのうえで各企業の実情に合わせて柔軟に活用できるのが特徴です。
軸となるフレームワークがあれば、自社の強みや課題、成長ステージを客観的に整理しながら、取り組むべき施策を優先順位をつけて計画に落とし込むことができます。定型のチェックリストに当てはめるだけでなく、自社に最適なDXの進め方を見つけるヒントとしても活用できるのが、フレームワークの大きな価値です。
DX推進計画の策定については、以下の記事で詳しく紹介しています。
DX推進計画を策定する手順とポイントを徹底解説
DXフレームワークに沿った推進のポイント
フレームワークさえあればDXが必ず成功するというわけではなく、フレームワークはあくまで方向性を定め、状況を整理するためのツールです。フレームワークを活用しながらDXを推進するには、以下のようなポイントを押さえることが重要です。
自社の現状分析と「あるべき姿」のギャップ可視化
各観点に沿った施策の優先順位整理
専門的知見を持つ外部支援との連携
それぞれ、詳しく紹介します。
自社の現状分析と「あるべき姿」のギャップ可視化
まず重要なのは、自社の現在地を客観的に把握することです。DXフレームワークでは各領域ごとにDXがどれだけ進んでいるかの評価が可能であり、これにより「あるべき姿」とのギャップを明確化できます。
現状と理想の差が可視化されることで、何に取り組むべきかが明確になり、戦略的にリソースを配分する根拠にもなります。曖昧なDX施策ではなく、実効性ある計画立案の第一歩として不可欠なプロセスです。
各観点に沿った施策の優先順位整理
ギャップが明らかになったら、次に必要なのは施策の優先順位づけです。すべての課題に同時に取り組むのは非現実的であるため、DXフレームワークの各観点ごとに緊急度・重要度を見極め、段階的に対応していくことがポイントとなります。
全体像を把握したうえで、着実に成果につながる道筋を描くことが、DX推進の成否を分けます。
専門的知見を持つ外部支援との連携
DXは経営・技術・人材など多面的な取り組みが必要なため、すべてを自社だけで進めるのは困難です。そこで有効なのが、フレームワークを理解した外部パートナーとの連携です。
専門的な視点から現状分析や課題整理をサポートしてもらえるほか、他社の成功事例や業界の最新トレンドを踏まえた提案も期待できます。自社内の議論が行き詰まったときの突破口としても有効で、より実効性のあるDX戦略につながります。
DXの内製化支援・人材育成ならリンプレス
DXを推進するうえで、継続的に成果を上げるには「内製化」が欠かせません。外部に依存するのではなく、自社で課題を捉え、デジタル技術を活用できる体制を整えることが、真の競争力につながります。
リンプレスでは、DXフレームワークを踏まえた現状分析から、計画立案、現場実行のサポートまで一貫して対応します。さらに、現場に根づく形でのDX人材育成や、チームビルディングまでサポート可能です。
「社内でDXを進めたいが進め方がわからない」という方は、ぜひリンプレスにご相談ください。
リンプレスの強み
リンプレスの強みは、経営戦略と現場実務の両面を理解した実践的な支援にあります。経済産業省の「DX推進指標」を活用した現状分析に加え、課題に応じたロードマップ策定、DX人材の育成までを一貫してサポートします。
業種や組織規模を問わず、現実的かつ成果につながるDX推進を支援した実績も多く、豊富なノウハウが強みです。「まずは現状を整理したい」という段階からの相談も可能です。
DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください。
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まとめ
DXを成功させるためには、経営戦略に基づいた計画的な推進が求められます。その土台となるのが、経産省のDXフレームワークです。自社の現状を可視化し、課題と向き合いながら優先順位を整理していくことで、着実な成果につながります。また、SWOT分析やビジネスモデルキャンバスなど他のフレームワークを併用することで、より深い戦略設計も可能です。内製化を目指す企業にとっては、フレームワークの活用と適切な外部支援が大きな鍵となります。DXを推進し、持続可能な成長を実現していくために、今こそ本格的な取り組みを始めましょう。
<文/文園 香織>