
DX推進計画を策定する手順とポイントを徹底解説
DXは、企業の競争力強化や業務効率化に不可欠な取り組みです。しかし、場当たり的なIT導入ではなく、計画的なDX推進が求められます。
本記事では、DX推進計画の策定手順や重要なポイントを解説し、特に人材育成の必要性について詳しく紹介します。DX成功の鍵は、適切な戦略と組織全体での取り組みです。自社のDXを確実に進めるために、効果的な計画策定の手順を確認していきましょう。
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DX推進計画の定義と目的
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進計画とは、企業や自治体がデジタル技術を活用し、業務の効率化や新たな価値創出を目指すための具体的な指針を定めるものです。デジタル技術の進展に伴い、単なるIT導入ではなく、組織の構造や業務プロセスそのものを変革することが求められています。
DX推進計画を策定することで、目指すべき方向性が明確になり、戦略的に取り組むことが可能になります。また、企業の場合は競争力の強化、自治体の場合は住民サービスの向上を目的とし、持続可能な成長を支える要素として重要視されています。
DX推進計画が必要な理由
DX推進計画が求められる背景には、技術の進化と市場環境の変化があります。
データ活用やAI、クラウド技術の普及により、従来の業務プロセスやビジネスモデルが大きく変わりつつあります。そのため、単なるデジタルツールの導入ではなく、戦略的なDX推進が不可欠となっているのです。
また、労働人口の減少やリモートワークの普及により、業務の自動化や業務フローの最適化が求められています。DX推進計画を策定することで、組織全体の方向性を統一し、効率的に変革を進めることが可能になります。計画がないまま場当たり的に進めると、システムの乱立や現場の混乱を招くリスクがあるため、計画的な取り組みが重要です。
特に自治体でのDX推進計画が急務に
自治体におけるDX推進計画の策定は、住民サービスの向上や業務の効率化を実現するために急務となっています。
近年、行政手続きのデジタル化やAIを活用した行政サービスの提供が進められていますが、自治体ごとに取り組みの進捗に差があるのが現状です。特に、高齢化が進む地域では、行政の効率化が求められる一方で、デジタルデバイド(情報格差)への対応も急がれています。
DX推進計画を策定することで、住民がスムーズに行政サービスを受けられる環境を整え、自治体の業務負担を軽減できます。また、国のDX推進政策に即した取り組みを進めることで、補助金や助成金の活用も可能になり、より効果的なDX推進が実現できます。
計画の指標となる「DX推進ガイドライン」
企業がDX推進を効果的に進めるためには、指針となるガイドラインを活用することが効果的です。
経済産業省が策定した「DX推進ガイドライン」では、企業がDXを推進する際の基本的な考え方や実施プロセスが示されています。このガイドラインは、DXの目的を明確にし、戦略的に計画を策定するための指標となるもので、経営者や担当者が適切に意思決定を行う際の指針となります。
ガイドラインでは、企業のDX推進状況を評価するためのフレームワークが提示され、特に「経営戦略の一環としてのDXの位置づけ」「組織体制の整備」「デジタル技術の活用」「データ利活用」などが重視されています。
特に、自治体や中小企業ではDXの進め方が不透明なケースが多いため、ガイドラインを活用することで計画の方向性を明確にし、適切なKPI(重要業績指標)の設定が可能となるでしょう。
なお、DX推進ガイドラインは、令和4年9月に「デジタルガバナンス・コード」と統合されました。そのため、詳細は経済産業省が公開している「デジタルガバナンス・コード」をご確認ください。
デジタルガバナンス・コードについては以下の記事で詳しく紹介しています。
『デジタルガバナンス・コードとは|概要をわかりやすく解説』
DX推進計画を策定するための5つのポイント
DX推進計画を策定する際には、計画が形骸化せず、確実に実行できる体制を整えることが重要です。そのためには、人材選定、組織全体での取り組み、進捗管理の仕組みなど、具体的な要素を計画に組み込む必要があります。
以下の5つのポイントを押さえることで、DXの成功率を高めることができます。
● 「DX推進スキル標準」に基づく人材選定
● スキルマップの作成
● 全社的にDXに取り組む
● DX人材・DXリーダーの育成を計画に含める
● KPIに基づいた進捗管理を行う体制を作る
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
「DX推進スキル標準」に基づく人材選定
DX推進計画を立てるにあたって、まずは適切な人材を確保し、戦略的に配置することが重要です。経済産業省が策定した「DX推進スキル標準」は、DXに必要なスキルや役割を明確に示しており、人材の選定や育成の指針となります。この基準を活用することで、企業はDXを推進するための最適な人材を確保し、組織全体のデジタル変革を効果的に進めることができます。
DX推進スキル標準では、DX戦略を立案する「DX戦略人材」、データ活用やシステム構築を担う「DX推進人材」、現場でDXの実装を進める「DX実践人材」など、役割ごとのスキル要件が定義されています。これに基づいて、自社の現状を分析し、どの人材が不足しているのかを明確にすることで、計画的な人材配置が可能になります。特に、DX推進には経営層のリーダーシップが不可欠であり、経営層がDX推進スキル標準を理解し、組織全体の方向性を定めることが求められます。
DX推進スキル標準の概要については、以下の記事で詳しく紹介しています。
『DX推進スキル標準とは?自社の人材育成に役立てるポイントを解説』
スキルマップの作成
DX推進計画には、多様なスキルを持つ人材が関わります。そのため、組織内のスキルを可視化する「スキルマップ」を作成し、現在のスキルレベルと不足している分野を明確にすることが重要です。
スキルマップを活用することで、必要な人材の育成計画を立てやすくなり、効率的にDX人材を育成できます。また、従業員のスキル向上を支援する研修プログラムの計画や、必要な外部リソースの活用についても検討しやすくなります。
スキルマップの作成方法やスキル策定の基準は、以下の記事で詳しく紹介しています。
『DX人材の育成に役立つ「スキルマップ」とは?各領域ごとの具体例を紹介』
全社的にDXに取り組む
DX推進計画は一部の部署や特定の人材だけで進めるものではなく、全社的な取り組みが必要です。
経営層のコミットメントを得ることはもちろん、現場の従業員にもDXの重要性を理解してもらい、積極的に関与してもらうようにしましょう。そのためには、DX推進の目的やビジョンを社内で共有し、各部門がどのようにDXに貢献できるかを明確にすることが求められます。社内向けのDX勉強会やワークショップを実施することで、従業員の意識を高め、スムーズなDX推進を実現できます。
DX人材・DXリーダーの育成を計画に含める
DXの推進には、DXを主導する人材の育成が不可欠です。そのため、DXリーダーを育成し、組織内でデジタル変革を牽引できる体制を整えることが求められます。
DXリーダーには、デジタル技術の知識だけでなく、業務改革の視点や経営戦略の理解も必要です。企業や自治体では、DXリーダー候補となる人材に対して、研修や外部プログラムへの参加を支援することで、長期的にDXを推進できる体制を構築できます。
DXリーダーを育成する研修は、プロによるサポートを受けることでより高い成果が見込めます。
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KPIに基づいた進捗管理を行う体制を作る
DX推進計画を策定した後は、進捗状況を適切に管理し、計画が着実に実行されているかを確認しなくてはなりません。そのため、具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的に進捗をモニタリングする仕組みを構築する必要があります。
例えば、「業務効率化によるコスト削減率」「デジタルツールの導入状況」「DXプロジェクトの成功率」など、数値で評価できる指標を設定し、データを基に改善を行うことが求められます。また、KPIの評価結果をもとに、計画の見直しや追加施策の検討を行い、DXの推進を加速させることが重要です。
DX推進計画を策定する手順
DX推進計画を適切に策定するには、明確なプロセスを設定し、戦略的に取り組むことが重要です。場当たり的なDX導入では、システムの乱立や効果の薄い施策に陥るリスクがあります。そのため、以下の6つの手順に沿って計画を策定し、継続的な評価と改善を行うことが求められます。
1.現状分析
DXを推進するには、まず自社や自治体の現状を正しく把握することが必要です。
業務プロセスやITインフラの現状、デジタル技術の活用度、組織のDXに対する意識などを調査し、現時点でのデジタル成熟度を分析します。また、競合他社や他の自治体と比較し、デジタル活用の遅れがどこにあるのかを把握することも重要です。現状分析を通じて、DXの必要性を客観的に評価し、推進の方向性を定めることができます。
2.課題の明確化
現状分析をもとに、DXを推進する上での課題を明確にします。
業務の効率化、データの利活用、顧客体験の向上、コスト削減など、DXによって解決すべき課題を整理し、優先順位をつけることが重要です。
特に、ITシステムの老朽化や業務プロセスの属人化などは、多くの企業・自治体で共通する課題です。課題が不明確なままDXを進めると、導入したデジタル技術が現場で活用されず、期待する効果が得られない可能性があるため、慎重に検討する必要があります。
3.目標設定
DXの目的が明確になったら、それを実現するための具体的な目標を設定します。目標は定性的なものだけでなく、定量的なKPIも設定することが大切です。定性・定量の違いは以下の例も参考にしてください。
- 定性的な目標の例:業務のデジタル化による生産性向上
-
定量的な目標の例:業務効率を30%向上・DX関連の研修受講者を年間100人以上にする
また、目標は短期・中期・長期に分けて設定し、各フェーズでの達成基準を明確にすることで、計画的な進行が可能になります。
4.戦略立案
目標を達成するために、具体的な戦略を立案します。戦略の例は以下の通りです。
- データ活用を強化するためにBIツールを導入する
- 業務効率化のためにRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用する
- 組織のDXリテラシー向上のために研修を実施する
戦略を立案する際には、最新のデジタル技術や業界の動向を踏まえ、導入する技術やツールの選定を慎重に行うことが求められます。また、予算やリソース配分も考慮し、実現可能な計画を立てることが重要です。
5.ロードマップ作成
戦略が決まったら、それを具体的な行動計画に落とし込みます。いつ、どの施策を実行するのか、どの部署が責任を持つのかを明確にし、スケジュールを設定します。
ロードマップには、短期(1年以内)、中期(1〜3年)、長期(3年以上)のフェーズを設け、それぞれの段階で達成すべき目標やマイルストーンを設定するとよいでしょう。また、導入するシステムの選定や、社内研修の実施スケジュールなども具体的に定めることで、計画が形骸化せず、実行しやすくなります。
6.実行と評価
計画が策定されたら、実際にDXの施策を実行します。しかし、DXは一度導入すれば終わりではなく、定期的に進捗を評価し、改善を繰り返すことが重要です。そのため、事前に設定したKPIをもとに、効果測定を行い、必要に応じて計画を修正していく体制を整えます。
また、現場のフィードバックを収集し、技術の導入がスムーズに進んでいるかを確認することも重要です。定期的な見直しを行うことで、DX推進の成功確率を高めることができます。
企業のDX推進はまず人材育成から
DX推進の成功には、最新のデジタル技術を活用するだけでなく、それを使いこなす人材の確保と育成が不可欠です。技術の導入だけでは、業務の効率化や新たな価値創出にはつながりにくく、最終的には現場のDX人材が技術をどのように活用するかが重要な要素となります。そのため、企業はまずDXを担う人材の確保と育成に注力し、社内全体でデジタル変革を推進できる体制を構築することが求められます。
DX人材とは
DX人材とは、デジタル技術を活用しながら業務改革を進め、企業の競争力を高めることができる人材を指します。
DX推進計画を進める人材には、単なるITスキルだけでなく、ビジネス課題を理解し、データを活用して課題解決できるDXスキルが求められます。具体的には、データサイエンティストやAIエンジニアなどの専門職だけでなく、業務改革を主導するDX推進担当者や、ITを活用できる一般社員(シチズンデータサイエンティスト等)も含まれます。
経済産業省の「DXスキル標準」でも、戦略立案を担う「DX戦略人材」、デジタル技術を活用する「DX推進人材」、業務の変革をリードする「DX実践人材」といった分類が示されており、企業は自社の状況に応じて適切な人材育成を進める必要があります。
DX人材を確保する方法について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
『DX人材とは?定義・必要なスキル・育成方法を徹底解説』
DX人材の育成方法
DX人材を育成するには、以下のような方法が挙げられます。
● 社内研修の実施
DXの基礎知識を習得するための研修を定期的に実施し、全社員のデジタルリテラシーを向上させます。特に、業務に直結するデータ活用やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用方法などを学ぶことで、即戦力となるDX人材を育成できます。
● 実践的なプロジェクトへの参加
研修で得た知識を実際の業務に活かす機会を設けることも重要です。小規模なDXプロジェクトを社内で実施し、実践的な経験を積ませることで、社員のスキル定着を促します。たとえば、データ分析を活用した業務改善や、業務の自動化を目的としたRPA導入プロジェクトなどが考えられます。
● 外部研修サービスの活用
最新のデジタル技術やデータ分析スキルを学ぶために、外部の研修プログラムやオンライン講座を活用するのも有効です。外部のプロフェッショナルによる講習を提供し、社員のスキルアップを支援することで、より専門性の高いDX人材を育成できます。
これらの施策を組み合わせることで、DXを支える人材を継続的に育成し、企業全体のデジタル変革を促進することができます。
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まとめ
DX推進計画の策定には、現状分析から課題の明確化、目標設定、戦略立案、ロードマップ作成、実行と評価のプロセスが必要です。成功には「DXスキル標準」に基づく人材選定やスキルマップの活用が重要であり、全社的な取り組みとKPIに基づく進捗管理が求められます。また、DX推進の鍵は人材育成にあり、社内研修や実践プロジェクト、外部研修の活用でDXリーダーを育成することが不可欠です。計画的な取り組みにより、持続的なDX推進が可能になります。
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<文/文園 香織>