DXプロジェクトにおけるリスクマネジメントの重要性
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この記事ではプロジェクトマネジメントで見落としがちな「リスクマネジメント」についてお伝えします。
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こんにちは。リンプレスの川上です。
プロジェクト活動を行ううえでプロジェクトマネジメントが必要であることはご存じだと思いますが、「リスクマネジメント」は実施されていますか。
今回はプロジェクトマネジメントで重要な、それでいて忘れがちな「リスクマネジメント」に関してご紹介していきます。
目次[非表示]
リスクマネジメントの重要性
何故、リスクマネジメントが必要なのでしょうか。
「転ばぬ先の杖」や「備えあれば憂いなし」と言えばイメージしやすいでしょう。
我々が向き合っているプロジェクトにはトラブルがつきものです。
「品質が悪い」「予算オーバー(費用超過)」「納期遅延」などよくお聞きします。
理由はどうあれプロジェクト成功とはいえない状況に陥る可能性が高いのがプロジェクトなのだと感じます。
このようなトラブルになることを未然に防ぐ手立てをマネジメントすることが「リスクマネジメント」ということです。
トラブルの例を少し挙げてみます。
例1.
「設計工程は問題なく終えることができたが、製造工程で思うような生産性が出ない。結果としてスケジュールを圧迫し納期遅延。想定外の期間を要したことで予算オーバー」
例2.
「設計工程、製造工程はなんとかスケジュール通りに推進できたが、結合テスト工程で初歩的な不具合が頻発し、品質を確保するための不具合修正で期間と費用がオーバーしてしまった。」
何故このようなことが起きたのでしょうか。
例1に関して考察してみましょう。考えられる理由はいくつかあります。
- 製造担当のスキル不足
- 使用した開発技術(開発言語など)が未経験
- 実現する機能の難易度が高かった
例2はどうでしょう。
- 単体テストが不十分だった
- プログラムレビューを実施していない
- 設計書の表記に曖昧な表現があった
- ユーザレビューが不十分だった
このような事象はよく耳にします。
プロジェクトのおかれている状況により理由は様々ですが、このような事象は防ぐことができないのでしょうか。そんなことはありません。
将来発生するであろう悪い事象をリスクと捉え、そのリスクに対して事前に手を打つことで回避できる可能性が高くなり、結果としてリスク発生を抑えることができます。
ただし、過ぎたことを振り返り原因を探るのは比較的容易ですが、まだ発生していない事象(リスク)に取り組むのは難しいです。
では、どのようにしてリスクマネジメントを行うとよいのでしょうか。
リスクマネジメントの実施手順
PMBOKガイド第6版では、リスクマネジメントの領域で以下の7つのプロセスが定義されています。
※PMBOKについてもっと詳しく知りたい方は、こちらのブログも合わせてお読みください。
- リスクマネジメントの計画
- リスクの特定
- リスクの定性的分析
- リスクの定量的分析
- リスク対応の計画
- リスク対応策の実施
- リスクの監視
「リスクマネジメントの計画」では、具体的なリスクマネジメントの手法や役割・責任、タイミングなどを計画書として作成します。
リスクマネジメントのタイミングについては、プロジェクト進行中も定期的に実施することが重要です。
リスクはプロジェクト状況や社会情勢などにより刻々と変化するものです。プロジェクト開始時のみ実施するだけでは不十分です。
それでは、残り6つのプロセスについて具体的に見ていきましょう。
リスクの特定
「リスクの特定」では、プロジェクトのおかれている状況を認識し、懸念と考えられる事柄を洗い出し、懸念事項が現実になった場合の影響などを加味してリスク項目を導出します。
リスク項目を特定する際には、ご自身もしくはプロジェクトメンバの経験則をもとにしたり、リスクチェックリストなどを用いるのも効果的です。
導出したリスク項目は「リスク管理表」に記載していきます。
リスク項目の例
人材不足のため開発時の追加要員の手配が困難
→人が見つからず、計画より少ない人員で開発を行う→納期遅延、メンバ疲弊
→十分なスキルを持ったメンバを投入できない→生産性低下、品質悪化
リスクの定性的分析・リスクの定量的分析
(以下「リスクの分析」と表記)
「リスクの分析」では、導出したリスク項目が顕在化した場合の「影響度」(インパクト)と顕在化するであろう「確度」(発生する確率)をもとに「重要度」(リスクポイント)を導き出します。
下図では、影響度および確度をそれぞれ「高中低」の3段階で評価し、交わる箇所の数値を重要度(リスクポイント)とします。
※分析手法は一例です。評価軸や表中の数値は各プロジェクトで見直してください。
リスク対応の計画
「リスク対応の計画」では、重要度(リスクポイント)をもとに対応策を検討していきます。
対応策は以下の通り、大きく5つに分類されます。
このうち、プロジェクト活動中の対応策は「リスク予防策」「リスク軽減策」「リスク監視策(監視のみ)」を選択するケースが多くみられます。
選択した対応策はリスク管理表に記載しますが、その際、いつ・誰が・何を実施するか具体的に検討することが重要です。
リスク対応策の例
人材不足のため、開発時の追加要員の手配が困難
→社内人員を投入できるように調整し、事前教育により必要スキルを習得させる
→早い段階でビジネスパートナーに相談し、予定時期に参画を依頼
→未取引のビジネスパートナーを開拓し、提案を依頼する
下図は一例です。リスクポイントによる方針は、各プロジェクトで見直してください。
リスク対応策の実施、リスクの監視
「リスク対応策の実施」「リスクの監視」では、リスク管理表やリスク対応方針(図2)をもとに対応策の実施と監視を行います。
プロジェクト活動中は定期的にリスクの監視を行い、状況に応じてリスク対応策を実施します。
終わりに
リスクが顕在化しない、もしくはそもそもリスクがないのであれば、リスクマネジメントは不要ともいえます。
しかし、私自身そのようなプロジェクトに出会ったことはありません。すべてのプロジェクトには何かしらのリスクがあります。
リスクは発生するとプロジェクト成功を阻害する要因となり、場合によっては企業への大きなダメージになることもあります。
リスクが発生しなければそれでよし、リスクを未然に防げればなおよし、という考えを持ってリスクマネジメントを実施して頂きたいと考えます。
リスクマネジメントは課題管理と同様に期日管理が必要です。
プロジェクトの管理資料としてリスク管理表のテンプレートをご用意しています。ぜひご参考になさってください。
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