
DX戦略とは?策定する方法や実行の手順・事例を紹介
DXが注目される現代、企業は急速に変化する市場環境に対応するため、ビジネスモデルや業務プロセスの革新を迫られています。
本記事では、DX戦略の基本概念から策定指標、実行手順、そして成功のためのポイントまでを具体的な事例とともに解説します。経営層のコミットメントや社内体制の整備、アジャイル開発、企画力強化、DX人材の育成といった各要素を網羅し、企業が持続的成長を実現するための実践的アプローチを提示します。
DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください。
リンプレスでは、DX推進人材を育成する研修プログラムと、DXの内製化をサポートするコンサルティングを提供しています。自社のDX推進にお困りの方はぜひご相談ください。
目次[非表示]
DX戦略とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略とは、企業が最新の情報技術を活用して、従来のビジネスモデルや業務プロセスを革新し、新たな価値を創出するための全社的な取り組みです。
急速に進展するデジタル技術により、企業は変化する市場環境に柔軟に対応し、競争優位性を確保することが求められています。DX戦略の策定では、現状分析と未来へのビジョン設定、組織文化の改革や技術投資の最適化が重要なポイントとなります。企業の持続的成長を支えるために、DXは今後ますます注目される課題です。
DX戦略策定の指標
DX戦略を策定する上で役立つ指標として、以下の3つが挙げられます。
● デジタルガバナンス・コード
● DXレポート
● DX推進スキル標準
それぞれの指標について、紹介します。
デジタルガバナンス・コード
デジタルガバナンス・コードは、企業がDX戦略を実行する際に遵守すべき基本原則や運用ルールを体系化した指標です。情報セキュリティの徹底、データ管理の透明性確保、内部統制の強化などを目的とし、経営層と現場担当者が一体となる運用体制の構築を促します。
統一されたガイドラインにより、リスクの早期発見と迅速な意思決定が可能となり、外部ステークホルダーとの信頼関係も強化され、持続的な成長を支える基盤となるのが特徴です。
参考:デジタルガバナンス・コード3.0 経済産業省
デジタルガバナンス・コードについては以下の記事で詳しく紹介しています。
『デジタルガバナンス・コードとは|概要をわかりやすく解説』
DXレポート
DXレポートは、企業のDXの進捗状況や課題を明らかにし、DX推進を促すために経済産業省が発表した報告書です。
時代に合わせてアップデートが行われており、2025年2月現在では「DXレポート2.2」が最新版となっています。DXレポート内では、企業がDXによって目指す方向性は効率化ではなく収益向上であるといった具体的な指針が示されています。
参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~ 経済産業省
DXレポートの概要については、以下の記事で詳しく解説しています。
『DXレポートの要点を徹底解説!今、企業がとるべき行動とは?』
DX推進スキル標準
DX推進スキル標準は、デジタル変革を推進するために必要な知識や技術、業務遂行能力を体系的に定義した指標です。
各職種や部門ごとに求められる専門知識、デジタル技術の習熟度、データ解析やプロジェクトマネジメント能力などを明示し、教育・研修プログラムの設計や人材育成の指針として利用されます。これにより、組織全体で共通のスキルセットが醸成され、各自の役割理解と連携が深まり、DX推進の効果を最大化することが期待されます。
参考:デジタルスキル標準 ver.1.2<改定後概要版> 経済産業省
DX推進スキル標準の概要については、以下の記事で詳しく紹介しています。
『DX推進スキル標準とは?自社の人材育成に役立てるポイントを解説』
DX戦略を策定し実行する5つの手順
DX戦略の策定から実践までは、以下の5つの手順に分けられます。
- ビジョンの決定
- 取り組み領域の決定
- 社内体制の構築
- DX推進計画の策定
- 実行と評価
各ステップごとに、詳しくみていきましょう。
1.ビジョンの決定
DX戦略を推進するための第一歩は、企業の未来像を具体的に描く「ビジョンの決定」です。
経営層が市場の変化や技術革新を踏まえ、短期および長期の目標を明確に設定します。現状分析に基づき組織が抱える課題や成長機会を洗い出し、全社員が共感できるビジョンを策定することが不可欠です。
内部外部の多様な意見を取り入れることで、実現可能かつ挑戦的な未来像が形成され、組織全体の士気向上と変革の原動力となります。
2.取り組み領域の決定
DXの推進には、業務効率化、顧客体験向上、新たなビジネスモデルの構築など、複数の領域への取り組みが求められます。
企業は自社の強みや市場ニーズを踏まえて、重点的に取り組む領域を決定します。各部門の現状や将来の成長可能性を評価し、リソース配分や投資計画を策定することが重要です。また、変化する環境に柔軟に対応するため、定期的な見直しとフィードバックを組み込み、優先順位を再評価する仕組みを整える必要があります。
3.社内体制の構築
DX戦略の実現には、組織全体での連携と迅速な意思決定が不可欠です。各部門間の役割分担を明確にし、専門知識を有する人材の育成や外部の専門家との連携を強化します。
さらに、情報共有を促進するためのコミュニケーションツールの導入や、横断的なプロジェクトチームの編成が求められます。これにより、現場の声を経営戦略に反映し、柔軟かつ迅速に対応できる体制が整備され、DX推進の効果を最大化する基盤が構築されます。
4.DX推進計画の策定
具体的な行動計画の策定は、DX戦略を実現するための重要なステップです。各取り組み領域に対して、達成すべき目標、実施スケジュール、必要な投資や技術導入の詳細を明文化します。計画策定時には、各部門との連携を深め、現実的なリソース配分とリスク管理の方法を盛り込みます。また、進捗状況のモニタリングや、定期的な評価・見直しの仕組みを取り入れることで、計画の実行性と柔軟性を確保し、組織全体での目標達成を目指します。
5.実行と評価
策定した計画を着実に実行し、その成果を正確に評価することが、DX戦略を成功させるポイントです。
実行段階では、各プロジェクトの進捗管理と定量的な指標を設定し、リアルタイムでの状況把握を行います。定期的な評価により、成功事例と改善点を分析し、必要に応じて戦略や計画の修正を迅速に実施します。これにより、組織は持続的な成長を実現し、DXの効果を最大限に引き出せる文化が醸成できます。
DX戦略を実行した企業の事例
ここからは、DX戦略を実際に策定し、実行した企業の事例を紹介します。
味の素株式会社
味の素株式会社は、DX推進の先駆者として、マーケティングや製造プロセス、物流、品質管理にデジタル技術を積極導入しています。
生産工場をDX化する「スマートファクトリー」の取り組みでは、IoTセンサーやビッグデータ解析で生産現場をリアルタイム監視し、工程自動化や異常検知による迅速対応を実現しました。また、オンラインプラットフォームを活用し、顧客データに基づくマーケティング戦略を展開することで、新たな製品開発やサービス向上にも成功しています。
これにより、企業全体の競争力が大幅に向上し、持続的成長の基盤が強化されています。今後も革新的技術の導入と組織全体のデジタル化を推進し、市場環境の変化に柔軟に対応していく姿勢が評価されています。
参考:DXで味の素社はどう変わる? 〜社会変革をリードする食品メーカーを目指して〜
株式会社資生堂
株式会社資生堂は、伝統あるブランドと先進技術の融合により、DXを活用した新たな美容体験の創出に取り組んでいます。
中でも、マシンとアプリを使用してスキンケアのパーソナライゼーションを実現する「Optune(オプチューン)」は、化粧品会社のDX戦略として注目を浴びました。オプチューンは、80,000通りの抽出パターンが可能な専用マシンで、ユーザー一人ひとりの日々変わる肌と肌環境に合わせた最適なケアができるIoTパーソナライズスキンケアです。
これまでに蓄積してきた化粧品の開発研究の知見を結集し、どのスキンケアパターンも心地よく使えるアルゴリズムと薬剤の開発を実現しています。
参考:資生堂のIoTスキンケアサービスブランド「Optune」7月1日(月)より本格展開
DX戦略を成功させるためのポイント
DX戦略を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
● 経営層のコミットメント
● 社員への理解浸透
● アジャイル開発の導入
● 企画力の強化
● DX人材の育成
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
経営層のコミットメント
DX戦略の成功には、経営層自らが変革への強い意志を示すことが不可欠です。
トップマネジメントが率先してビジョンを打ち出し、必要な投資やリソース配分を決定することで、全社的な取り組みが推進されます。また、定期的な経営会議や報告の場を設け、成功事例や課題を共有することで、経営層のリーダーシップが組織全体に浸透し、変革の基盤が確実に形成されることが期待されます。
社員への理解浸透
DX戦略の浸透には、全社員に対する十分な説明と理解の促進が欠かせません。新たな技術や業務プロセスの変更がもたらすメリットや目的を、具体的な事例やデータを交えて伝えることが重要です。
ワークショップ、セミナー、社内報などを活用し、疑問や不安を解消するとともに、各自が積極的に意見交換できる環境を整備することで、全社一丸となった取り組みが実現されます。
アジャイル開発の導入
市場環境の急速な変化に対応するため、アジャイル開発手法の導入がDX戦略では重要な役割を果たします。アジャイル開発とは、短期間でのプロトタイプ作成とユーザーからのフィードバックを繰り返す開発フローです。開発プロセスにおけるリスクが軽減され、製品やサービスの質の向上が見込めるため、DXにおいて重要視されています。
アジャイル開発で定期的な進捗確認と改善サイクルを取り入れることで、柔軟かつ効率的なイノベーションが促進され、顧客満足度の高い成果を創出できるでしょう。
企画力の強化
DX戦略を成功に導くためには、時代の変化を先取りする企画力の強化が求められます。
市場動向や最新技術のトレンドを的確に捉え、従来の枠にとらわれない新たなビジネスモデルを構築する発想力が必要です。多角的な視点や創造的なアイデアを具体的な計画に落とし込み、顧客価値の最大化を図ることで、競争優位性を確保し、持続可能な成長を実現する基盤が築かれます。
リンプレスの「IT・システム企画研修」について詳しくはこちら
DX人材の育成
DXを実現するためには、専門的な知識や技術を持つ人材の育成が不可欠です。最新のデジタル技術、データ解析、プロジェクトマネジメントなど、業務に直結するスキルを体系的に習得させるには、社内研修や外部研修サービスの活用などが効果的です。
継続的な教育プログラムを通じて、各自の能力向上を図ることで、組織全体でDXを加速させ、持続的な競争力の確立につながります。
DX人材の定義や育成方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
DX人材を育成する研修は、プロによるサポートを受けることでより高い成果が見込めます。
累計4,000社以上の支援実績を持つ「リンプレス」によるDX推進人材育成プログラム一覧は、以下のリンクからご覧いただけます。御社の課題に合わせて、最適なカリキュラムをご提案いたします。
リンプレス DX推進人材育成プログラム
DXにおいて人材育成が重要な理由
DXにおいて人材育成が重要とされるのは、技術革新に伴う業務変革に追いつくため、最新のデジタル技術を理解し、現場で柔軟に対応できる人材の確保が不可欠であることが理由です。単なる技術導入ではなく、実践的なスキルや課題解決力を持つ人材が組織全体の競争力向上とイノベーション創出を支えます。
また、知識共有や部門横断的な連携を促進し、変化に迅速に適応できる組織文化を醸成するため、DX戦略の根幹を成す重要な要素と言えます。
DX人材の育成にはリンプレス
リンプレスは、企業のDX推進を支援する専門的な研修プログラムを提供しています。
リンプレスの研修は、業界や企業の特性に応じたカスタマイズが可能で、基礎的なDX・ITリテラシーの向上から、専門的なスキルの習得まで幅広く対応しています。
特に、アイデアを創出する上流工程において、論理的な思考に基づいて企画を立案する力を身につける研修に強みがあります。基礎的なDXリテラシーだけではなく、「DXを推進するリーダー人材を育成したい」「社内のシステム開発における企画立案力を伸ばしたい」といったニーズにもお応えいたします。
リンプレスのDX研修を実際に導入した事例
ここからは、リンプレスのDX研修を実際に導入した2社の事例を紹介します。
株式会社八十二銀行
株式会社八十二銀行では、自社内にシステム開発部門があり、新しいシステムを作る際は事業部門と開発部門がともに開発を行っています。しかし近年、どちらの部門も多忙となり、意思疎通がうまくいかず手戻りが発生するという課題が発生していました。この原因の一つに、元々の目的の設定と、経営的な視点で論理立てて工程を組み立てることができていない上流工程に問題があるのではないかと考えます。そこで、論理的に課題を整理しながら、企画を進めるフレームワークに沿って学べるリンプレスのIT企画研修を導入いただきました。
結果として、受講者の8割が研修の内容に満足し、9割以上の受講者が実際の業務に役立つと回答していただいたという、大変満足度の高い研修が実施できました。
こちらの事例について詳しくは、以下のリンクからご覧いただけます。
株式会社八十二銀行様の事例 事業部門自らデジタル・IT化を企画し、スピード感のあるDXの実現へ
東洋船舶株式会社
東洋船舶株式会社は、船舶関連ビジネスのソリューションプロバイダーとして、国内トップクラスの用船仲介サービスなど多面的な事業を展開しています。同社は、会社規模や事業拡大に伴い、情報システム部門の負担増加と迅速な対応の難しさという課題に直面していました。
この課題を解決するため、2024年3月にリンプレスの「企画研修」および「プロジェクトマネジメント研修」を導入します。リンプレスの研修により、現場部門の社員が自ら業務プロセスを理解し、課題を抽出・解決するスキルを習得できました。結果として、社員の意識改革が進み、業務改革の推進力が向上しました。
こちらの事例について詳しくは、以下のリンクからご覧いただけます。
東洋船舶株式会社様の事例 「全社員IT武装化」実現に向けた取り組みに迫る
まとめ
DX戦略の基本概念から策定指標、実行手順、成功のためのポイントまでを紹介しました。デジタル技術を活用し、ビジネスモデルや業務プロセスを革新することで、企業は変化に迅速に対応し、持続的成長を実現します。DX戦略は、経営層のリーダーシップ、社内体制の整備、アジャイル開発、企画力強化、そしてDX人材の育成が成功の鍵です。
DX人材の育成に課題をお持ちなら、ぜひリンプレスにご相談ください。
<文/文園 香織>