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DX推進スキル標準とは?自社の人材育成に役立てるポイントを解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)が企業の成長に不可欠となる中、「DX推進スキル標準(DSS-P)」は、DX人材育成の指針として注目されています。

このスキル標準は、DXを推進するために必要なスキルや役割を体系的に整理したもので、経済産業省が策定しました。2024年7月の改訂では、生成AIやデータドリブン経営など最新のトレンドを反映し、より実践的な内容へと進化しています。

この記事では、DSS-Pの概要や活用方法、職種ごとの役割、さらには人材育成への具体的な活用事例について詳しく解説します。


DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください

リンプレスでは、DX推進人材を育成する研修プログラムと、DXの内製化をサポートするコンサルティングを提供しています。自社のDX推進にお困りの方はぜひご相談ください。

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目次[非表示]

  1. DX推進スキル標準(DSS-P)とは
    1. DSS-Pの目的と対象者
    2. 2024年7月改訂のポイント
  2. 職種別に見るDX推進スキル
    1. ビジネスアーキテクト
      1. DXにおける役割
    2. デザイナー
      1. DXにおける役割
    3. データサイエンティスト
      1. DXにおける役割
    4. ソフトウェアエンジニア
      1. DXにおける役割
    5. サイバーセキュリティ
      1. DXにおける役割
    6. DX推進スキル標準の「共通スキルリスト」とは
  3. DX推進スキル標準を人材育成に活用する方法
    1. スキルマップへの反映
    2. スキルの可視化
    3. 基礎・実践の実施
    4. スキルマップに基づいた評価
  4. DX人材の育成にはリンプレス
  5. リンプレスのDX研修を実際に導入した事例
    1. 株式会社キタムラ
    2. 東洋船舶株式会社
  6. まとめ

DX推進スキル標準(DSS-P)とは

DX推進スキル標準(DSS-P)とは、経済産業省が策定したDXを推進するための人材育成指針です。企業がDXを進める上で求められるスキルや役割を明確にし、組織全体でDX人材を育成するための指標となります。

従来のITスキル標準(ITSS)とは異なり、DXを実現するための戦略的思考やマネジメント能力も重視されており、企業のDX推進を効率的に進めるための枠組みとして活用されます。DSS-Pを導入することで、組織のDX推進に必要なスキルを可視化し、人材の育成計画を立てやすくなります。DXを成功させるには、適切な人材を確保し、育成することが不可欠であり、DSS-Pはそのための有効なツールといえます。


DSS-Pの目的と対象者

DSS-Pの目的は、企業がDXを推進するために必要なスキルを整理し、人材育成の指針を提供することです。DXの進展により、従来のIT人材だけでなく、デジタル技術を活用してビジネス変革を推進できる人材の重要性が高まっています。

DSS-Pは、企業が求めるDX人材の要件を明確にし、各従業員が自分に必要なスキルを把握できるようにすることを目的としています。対象者は、DXをリードする経営層やマネジメント層、DX推進を担うプロジェクトリーダー、さらにはデータ活用やシステム開発に携わる技術者など幅広い職種が含まれます。特に、DX戦略の立案や推進を担当する人材にとって、DSS-Pの理解と活用は不可欠といえるでしょう。


2024年7月改訂のポイント

2024年7月に改訂されたDX推進スキル標準(DSS-P)は、急速に進展する生成AIの技術に合わせて項目が追加されました。

生成AIを含む新技術への向き合い方・行動の起こし方を前提に、DX推進人材における生成AIに対するアクションについて補記が追加され、共通スキル項目も変更されました。

詳しくは以下のリンク先をご覧ください。

経済産業省 デジタルスキル標準 ver.1.2<改定後概要版>


職種別に見るDX推進スキル


DX推進スキル標準では、DX人材を以下の5つの類型に分類しています。

●  ビジネスアーキテクト
●  デザイナー
●  データサイエンティスト
●  ソフトウェアエンジニア
●  サイバーセキュリティ

それぞれの役職ごとに、DXにおける役割を紹介します。


ビジネスアーキテクト

ビジネスアーキテクトは、DX推進において企業のビジネスモデルの設計や業務プロセスの最適化を担う重要な役割を果たします。

この職種は、DX戦略をビジネスの現場に適用し、具体的な成果を生み出すことを目的としています。ビジネスの現状を分析し、改善が必要な課題を特定する能力、さらにテクノロジーを活用した解決策を提案・実行するスキルが求められます。

ビジネスアーキテクトという役職については、以下の記事で詳しく紹介しています。
『ビジネスアーキテクトとは?企業における役割や育成のポイントを紹介』


DXにおける役割

DXにおけるビジネスアーキテクトの役割は、デジタル技術を用いて新しい価値を創出することです。

具体的には、経営層や各部門との連携を通じて、DX戦略を現場レベルで実現可能なプランに落とし込む役割を担います。ビジネスアーキテクトはデータやテクノロジーを活用して業務プロセスを最適化し、効率化やコスト削減を目指します。また、顧客視点を重視した新たなサービスや製品の企画も重要な役割です。

ビジネスアーキテクトは、技術とビジネスをつなぐ架け橋として、組織のDX推進を加速させるポジションです。


デザイナー

デザイナーは、DX推進において顧客体験の向上やデジタルプロダクトのデザインを通じて重要な役割を果たします。単に見た目を整えるだけでなく、ユーザーの利便性や満足度を高めるデザインを生み出し、企業のDX戦略を具体的な成果に結びつけるのがデザイナーの使命です。

デザイン思考やUX/UIデザインのスキルを活かし、デジタル技術を活用した製品やサービスが、顧客にとって使いやすく価値のあるものとなるようサポートします。デザイナーは、DXのプロジェクトにおいて、顧客視点の重要性を確保する役割を担っています。


DXにおける役割

DXにおいてデザイナーは、顧客体験(CX: Customer Experience)の向上を実現するためのデジタルプロダクトやサービスの設計に携わります。

具体的には、ユーザー調査を基にペルソナを作成し、ニーズや課題を的確に把握した上で、プロトタイプやワイヤーフレームを作成します。UI/UXデザインの最適化を通じて、デジタルツールの操作性を向上させることも重要な役割です。


データサイエンティスト

データサイエンティストは、DX推進において膨大なデータを分析し、意思決定に役立つ洞察を提供する中心的な役割を担います。AIや機械学習、統計分析といった技術を活用し、業務改善や新たなビジネス機会の創出を支援します。

また、データの収集・処理・可視化を行い、経営層や現場スタッフが活用できる形にするのも重要な役割です。データサイエンティストのスキルは、DXの成功に不可欠であり、特にデータドリブンな意思決定を目指す企業にとって重要です。


DXにおける役割

DXにおけるデータサイエンティストの役割は、データを活用して企業の価値を最大化することです。具体的には、データからビジネス課題を解決するためのインサイトを抽出し、それを基に経営戦略や業務プロセスの改善を提案します。また、AIや機械学習モデルを構築し、自動化や効率化を実現する役割も担います。

データサイエンティストは、企業の競争力を高めるための「データ活用のスペシャリスト」として、DX推進のキーパーソンといえます。


ソフトウェアエンジニア

ソフトウェアエンジニアは、DX推進の技術基盤を支える役割を担う重要な存在です。

システムやアプリケーションの設計・開発・運用を通じて、DX戦略を具体的な形にするのが主な仕事です。クラウドコンピューティング、AI、IoTといった先端技術を活用し、効率的でスケーラブルなシステムを構築します。

ソフトウェアエンジニアのスキルは、DXプロジェクトの成否を左右すると言っても過言ではありません。


DXにおける役割

DXにおけるソフトウェアエンジニアの役割は、企業のビジネス変革を支えるシステムの構築や、デジタルプロセスの自動化を実現することです。

具体的には、業務効率化のためのアプリケーション開発、顧客体験を向上させるWebサービスの構築、さらにはデータ活用を支援する分析基盤の開発などが含まれます。また、アジャイルやDevOpsといった手法を活用し、柔軟かつ迅速にプロジェクトを進めることが求められます。エンジニアは、単なる技術者ではなく、DXの成果を形にする「実行者」として、組織全体の変革を支える役割を担います


サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティは、DX推進において組織やシステムを脅威から守る重要な要素です。DXが進むことでデジタル化が進展し、クラウドやIoT、AIなどの新技術が活用される一方、サイバー攻撃やデータ漏洩といったリスクも増大しています。これに対応するため、サイバーセキュリティの専門家は、組織全体の安全性を確保する役割を担っています。

脅威の予防、検知、対応、復旧を迅速かつ確実に行うスキルが求められ、DXの進展に伴い、セキュリティ対策の重要性はさらに高まっています。


DXにおける役割

DXにおけるサイバーセキュリティの役割は、企業がデジタル化を進める中で、安全かつ信頼性のある環境を提供することです。

具体的には、データやシステムへの不正アクセスを防ぐためのセキュリティポリシーの策定、脆弱性診断やペネトレーションテストの実施、リアルタイムでの脅威監視などが挙げられます。

また、DXに関わる全従業員へのセキュリティ教育を通じて、リスクを最小限に抑えることも重要な役割です。セキュリティと利便性のバランスを考慮した設計を行い、DX推進を安全にサポートすることが求められます。
サイバーセキュリティは、DXの成功を支える不可欠な基盤です。


DX人材の育成には、プロによる研修サービスの導入がおすすめです。
累計4,000社以上の支援実績を持つ「リンプレス」によるDX推進人材育成プログラムの詳細は、以下のリンクからご覧いただけます。御社の課題に合わせて、最適なカリキュラムをご提案いたします。
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DX推進スキル標準の「共通スキルリスト」とは

DX推進スキル標準には、職種ごとに求められる専門スキルとともに、すべてのDX人材が共通して身につけるべきスキルをまとめた「共通スキルリスト」が含まれています。

このリストは、DXを推進する上で必要な基本スキルを体系化し、企業が人材育成を進める際の指標として活用できるものです。特定の職種に限定されず、DXに関わる全ての従業員が持つべきスキルが整理されているため、DXの推進を全社的に進める上で非常に重要な要素となります。


共通スキルリストには、DXを支える「デジタルリテラシー」「データ活用能力」「プロジェクトマネジメント」「コミュニケーション能力」「アジャイル思考」「サイバーセキュリティ意識」などが含まれます。これらのスキルは、技術系の職種だけでなく、経営層や事業部門の担当者にとっても不可欠です。企業がDXを成功させるためには、特定のエンジニアやデータサイエンティストだけでなく、全従業員がDXに関する基礎的なスキルを備えることが求められます。

共通スキルリストを活用することで、企業はDXに必要なスキルセットを明確にし、効果的な人材育成を実施できるようになります。


DX推進スキル標準を人材育成に活用する方法


DX推進スキル標準は、企業がDX人材を効果的に育成するための指針となります。これを活用することで、組織内のDXに関するスキルを明確にし、適切な研修や評価制度を設計できます。
DX人材育成の成功には、必要なスキルを特定し、計画的に教育・評価する仕組みが欠かせません。

ここからは、DX推進スキル標準を人材育成に取り入れる具体的な方法について解説します。


スキルマップへの反映

DX推進スキル標準を基に、自社のDX推進に必要なスキルを整理し、「スキルマップ」として体系化します。スキルマップは、職種ごとに必要なスキルと習得レベルを一覧化し、人材のスキルギャップを明確にするツールです。

例えば、データサイエンティストであれば「統計分析」「機械学習」「データ可視化」などのスキルを定義し、求められるレベルを設定します。スキルマップを作成することで、各職種の育成方針が明確になり、適切な研修プログラムの設計が可能になります。

DX推進スキル標準に基づいたスキルマップの作成方法について詳しくは以下の記事をご覧ください。

『DX人材を育成するスキルマップとは?各領域ごとの具体例を紹介』


スキルの可視化

DX人材の育成を進めるためには、各従業員のスキルレベルを可視化し、現在の状況を把握することが重要です。DX推進スキル標準を基にスキルチェックリストやアセスメントシートを作成し、定期的な自己評価や上司による評価を行うことで、各人の強みや課題が明確になります。スキルの可視化により、従業員自身が成長の方向性を理解しやすくなり、企業側も適切な研修や配置転換を検討しやすくなります。


基礎・実践の実施

DXスキルを身につけるためには、座学での基礎学習だけでなく、実践的な取り組みが不可欠です。DX推進スキル標準を活用し、まずは基礎知識を学ぶ研修を実施した後、実際の業務やプロジェクトを通じてスキルを磨く機会を設けます。

例えば、データ活用を学んだ社員に対して、実際の業務データを使った分析課題を与えたり、エンジニア向けにはアジャイル開発のプロジェクトを経験させるといった方法が考えられます。理論と実践の両輪を回すことで、スキルの定着を促進できます。

スキルマップに基づいた評価

人材育成の効果を高めるためには、スキルマップに基づいた評価制度を整えることが重要です。DX推進スキル標準で定義されたスキルを評価基準として設定し、個人の成長度合いを測定します。例えば、各スキルに対して「初心者」「実務経験レベル」「エキスパート」といった段階を設定し、自己評価・上司評価・第三者評価を組み合わせることで、客観的な評価が可能になります。スキル評価を昇進や報酬制度に反映させることで、従業員のモチベーション向上にもつながります。

DX推進スキル標準を活用した人材育成は、企業のDX推進を加速させるだけでなく、社員一人ひとりの成長にも寄与します。組織全体で計画的に育成を進めることで、DXを成功に導くための強固な基盤を築くことができます。


DX人材の育成にはリンプレス

リンプレスは、企業のDX推進を支援する専門的な研修プログラムを提供しています。

企業のDXを推進する上で、企画やマネジメントを担う人材の育成は極めて重要です。DXを成功させるためには、テクノロジーの理解だけでなく、ビジネスの戦略立案やプロジェクトの推進力を兼ね備えた人材が不可欠です。そこで、リンプレスの研修サービスは、DX人材の育成において有効なソリューションとなります。

リンプレスは、デジタル化に必要なスキルを総合的に学べる研修サービスを提供しており、特に「企画・マネジメント領域」に特化したプログラムが豊富です。企業のDX推進をリードする人材を育成するための 実践的な学習プログラム や、即戦力を育てるカリキュラムが用意されています。

ご相談・お問い合わせ


リンプレスのDX研修を実際に導入した事例

ここからは、リンプレスのDX研修を実際に導入した2社の事例を紹介します。

株式会社キタムラ

株式会社キタムラは、全国に1,000店舗以上を展開する写真映像事業の大手企業です。

同社はDX推進に向けた人材育成に課題を抱えており、特に「デジタルを活用した顧客サービスの向上」と「IT戦略の社内浸透」が大きな課題でした。従来の社内研修では、現場での実践的なスキルが不足し、「攻めのIT」を目指すDX推進のスピードに追いつけない状況にありました。

そこで、リンプレスの「顧客分析研修」「プロジェクトリーダー実践研修」「IT・システム企画実践研修」を導入します。対面形式かつカスタマイズ性が高い研修を通じて、実践スキルが身についただけではなく、他社のSEとの交流を通して学ぶことができたと大変ご満足いただけました。


こちらの事例について詳しくは、以下のリンクからご覧いただけます。
株式会社キタムラ様の事例 実践型研修を通じて「カメラのキタムラ」のDX推進人材育成を支援




東洋船舶株式会社

東洋船舶株式会社は、船舶関連ビジネスのソリューションプロバイダーとして、国内トップクラスの用船仲介サービスなど多面的な事業を展開しています。同社は、会社規模や事業拡大に伴い、情報システム部門の負担増加と迅速な対応の難しさという課題に直面していました。

この課題を解決するため、2024年3月にリンプレスの「企画研修」および「プロジェクトマネジメント研修」を導入します。リンプレスの研修により、現場部門の社員が自ら業務プロセスを理解し、課題を抽出・解決するスキルを習得できました。結果として、社員の意識改革が進み、業務改革の推進力が向上しました。


こちらの事例について詳しくは、以下のリンクからご覧いただけます。
東洋船舶株式会社様の事例 「全社員IT武装化」実現に向けた取り組みに迫る


まとめ

DX推進スキル標準(DSS-P)は、企業がDXを成功させるための人材育成の指針として、職種ごとに求められるスキルや共通スキルを体系的に整理しています。2024年7月の改訂では、最新技術や全社的な視点を取り入れ、より実践的な内容へと進化しました。これを活用することで、スキルマップの作成やスキルの可視化が可能となり、基礎研修と実践を組み合わせた効率的な人材育成が実現します。さらに、スキルマップを評価制度に組み込むことで、従業員の成長を支援し、組織全体のDX推進を加速させることができます。DSS-Pは、企業と人材が共に成長し、競争力を高めるための重要なツールです。

体系的なDX人材育成を実施するなら、ぜひリンプレスにご相談ください。

<文/文園 香織>

株式会社リンプレス
株式会社リンプレス
2017年に株式会社リンクレアのコンサルティング事業、教育事業を分社化して誕生。企業向けDX人材育成研修やITコンサルティング、内製化支援などを手掛ける。DX推進に必要なIT・システム企画力、プロジェクトマネジメント・リーダーシップ、デザイン思考、データ分析など、様々なラインナップを提供する。講義だけではなく、ワークショップやハンズオン演習を取り入れた実践型研修に強みを持つ。これまでの累計支援企業数は4,000社以上、累計受講者数は15,000名以上に及ぶ。

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