
デザイン思考のフレームワーク5選|実践力が身に付く研修方法とは?
近年、企業が競争優位性を確立するために「デザイン思考」が注目されています。デザイン思考は、ユーザー視点で課題を捉え、創造的なアイデアを生み出す手法で、多くの企業が革新を実現するために導入しています。
本記事では、デザイン思考の基本プロセスや実践に役立つフレームワークを解説し、実際に取り入れた事例を紹介します。さらに、効果的にデザイン思考を学べる研修サービスについても取り上げ、ビジネスに活かす方法を探ります。
DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください。
リンプレスでは、DX推進人材を育成する研修プログラムと、DXの内製化をサポートするコンサルティングを提供しています。自社のDX推進にお困りの方はぜひご相談ください。
目次[非表示]
- 1.デザイン思考とは?
- 2.デザイン思考の5つのプロセス
- 3.デザイン思考で活用できるフレームワーク5選
- 3.1.共感マップ
- 3.2.カスタマージャーニーマップ
- 3.3.SWOT分析
- 3.4.ビジネスモデルキャンバス
- 3.5.How Might We
- 4.デザイン思考を取り入れた企業・自治体の事例
- 5.デザイン思考を実践するメリット
- 6.デザイン思考を実践するデメリット
- 7.デザイン思考のフレームワークを学べるリンプレスの研修
- 8.リンプレスの「デザイン思考研修」
- 9.まとめ
デザイン思考とは?
デザイン思考とは、「デザイナーの思考や作業要領をプロセスとして一般化したもの」で、ユーザー中心の視点によって問題解決を図るアプローチです。
単なるデザインの手法ではなく、観察や共感を通じて課題を発見し、創造的なアイデアを生み出すプロセスを重視します。
近年、複雑化する社会課題や急速な市場変化に対応するため、デザイン思考が重要視されており、DX研修のカリキュラムに取り入れる企業も増加しています。
デザイン思考については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
『業務改善にも役立つ「デザイン思考」とは? デザイン思考を組織に定着させるおすすめの方法も解説』
デザイン思考が注目されている背景
デザイン思考が注目されている背景には、ビジネス環境の変化やユーザーの多様化が挙げられます。
従来のプロセスでは、論理的なアプローチに偏りがちでしたが、競争の激化や不確実性の増大により、柔軟な発想が求められています。特に、デジタル化の進展により、ユーザーのニーズが細分化し、単なる機能提供では差別化が難しくなっています。
そのため、ユーザーの行動や感情を深く理解し、共感をベースにした問題解決が必要となり、企業や行政が率先してデザイン思考の導入を進めています。
デザイン思考は、イノベーションを創出しやすいフレームワークとして多くの業界で取り入れられています。
国内企業における「デザイン思考」の活用状況とは?
冒頭にて、DX人材の育成に向けて「デザイン思考」を取り入れる企業が増加していることを紹介しましたが、高い認知度に対して活用度は未だ低く、大きなギャップが見られます。
株式会社コンセントが行った調査によると、 DX推進の役割を担うビジネスパーソンの約5割が「デザイン思考」を認知している一方、実際にビジネスの現場で活用できている割合は約1割にとどまっているということがわかりました。
一方、DXにすでに取り組んでおり、DXの成果を実感している企業の約4割はデザイン思考を習得した人材を活用できていると回答しています。このことから、デザイン思考を習得した人材を育成することがDXの成果に直結すると考えられます。
デザイン思考の5つのプロセス
デザイン思考は、問題を解決し革新を生むための体系的なアプローチであり、「共感」「問題定義」「アイデア創出」「プロトタイプ」「テスト」の5つのプロセスで構成されています。
この5つのプロセスを順番に進めることで、ユーザーの視点を中心に据えた解決策を導き出します。以下に各プロセスの詳細を解説します。
①共感
デザイン思考の第一歩は「共感」です。
ユーザーの視点に立ち、ユーザー自身が直面している課題やニーズを深く理解するため、観察やインタビュー、体験を通じて、ユーザーの行動や思考を探ります。このプロセスでは、表面的な要望ではなく、隠れた本質的なニーズに気づく(インサイトを得る)ことが重要です。
共感を得ることで、解決策の方向性が明確になり、ユーザー中心のアプローチを徹底できます。
②問題定義
共感を通じて得た洞察を基に、次に行うのが「問題定義」です。
ユーザーが抱える課題を具体的かつ明確にし、解決すべき本質的な問題を特定します。この段階では、適切な問題設定を行うことが、成功の鍵を握ります。
「本当に解決すべき課題は何か?」を問い直し、ユーザーのニーズを正確に反映した課題を導き出すことが求められます。
③アイデア創出
問題が明確になったら、「アイデア創出」のフェーズに移ります。
この段階では、ブレインストーミングやマインドマップなどの手法を活用し、できるだけ多くの解決策を生み出します。特に、
- 質よりも量を重視する
- アイデアに制限を設けない
- 他者が出したアイデアを批判しない
という3つのポイントを押さえることで、革新的かつ独創的な解決策を見つけることができます。
④プロトタイプ
アイデアが出揃ったら、「プロトタイプ」として具現化します。
ここでは、アイデアを具体的な形にし、簡単な試作品を作成することで、実際の使用感や機能を検証します。手軽なモックアップやシミュレーションを活用し、低コスト・短期間で試すことが大切です。
プロトタイプを通じて、アイデアの実現可能性を判断し、改善点を発見します。
⑤テスト
最後のプロセスは「テスト」です。作成したプロトタイプをユーザーに試してもらい、フィードバックを得ることで、課題解決の精度を高めます。
この段階では、ユーザーの反応や意見をもとに、必要に応じてプロトタイプを修正し、改善を重ねます。テストの結果を踏まえ、プロセスを繰り返すことで、最適な解決策へと近づけていくことができます。
デザイン思考を体系的に身につける研修は、プロによるサポートを受けることでより高い成果が見込めます。
累計4,000社以上の人材育成のご支援実績を持つ「リンプレス」によるデザイン思考研修の詳細は、以下のリンクからご覧いただけます。御社の課題に合わせて、最適なカリキュラムをご提案いたします。
リンプレスのデザイン思考研修
デザイン思考で活用できるフレームワーク5選
デザイン思考を実践する際、効果的に課題を整理し、解決策を導き出すためには、適切なフレームワークの活用が欠かせません。
ここでは、デザイン思考の各プロセスに役立つ5つのフレームワークを紹介します。
- 共感マップ
- カスタマージャーニーマップ
- SWOT分析
- ビジネスモデルキャンバス
- How Might We
これらのフレームワークを用いることで、ユーザーの課題をより深く理解し、アイデア創出から実行までをスムーズに進めることができます。
共感マップ
共感マップは、ユーザーの視点を深く理解するためのフレームワークです。ユーザーが「考えていること」「感じていること」「言っていること」「していること」を整理し、行動や感情のギャップを可視化します。
これにより、潜在的なニーズや課題を明確にし、よりユーザー中心のアイデアを生み出す手助けとなります。マップを作成し、視覚的にチームで共有することで認識のズレを防ぎ、共通理解を深めるのに役立ちます。
カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップは、ユーザーがサービスや製品とどのように関わるのかを時系列で可視化するフレームワークです。
顧客が製品やサービスを認知し、購入、使用に至るまでのプロセスを「タッチポイント」として整理し、各フェーズにおける体験や感情を把握します。これにより、改善すべきポイントを特定し、ユーザー体験の向上につなげることができます。
SWOT分析
SWOT分析は、組織やプロジェクトの「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」を整理し、戦略を立案するためのフレームワークです。
デザイン思考の問題定義やアイデア創出のフェーズで活用されることが多く、現状の課題を明確にするのに役立ちます。特に、新しいアイデアの実現可能性や市場の動向を把握するのに適しています。
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスの全体像を以下の9つの要素に分けて視覚的に整理するフレームワークです。
- 顧客セグメント(Customer Segments)
- 価値提案(Value Propositions)
- チャネル(Channels)
- 顧客との関係(Customer Relationships)
- 収益の流れ(Revenue Streams)
- リソース(Key Resources)
- 主要活動(Key Activities)
- パートナー(Key Partners)
- コスト構造(Cost Structure)
デザイン思考のプロトタイプやテストのフェーズで活用されることが多く、アイデアを具体的なビジネスモデルへと落とし込む際に役立ちます。これにより、ビジネスの課題や機会を一目で把握し、戦略的な判断を下すことができます。
How Might We
How Might We(HMW)は、問題をポジティブな問いに変換し、創造的なアイデアを生み出すフレームワークです。
「どうすれば〇〇できるか?」といった形で問題を再定義し、解決策を考える際の出発点として機能します。この手法はブレインストーミングに適しており、チームでのアイデア創出を促進し、創造的な解決策を導くのに役立ちます。
デザイン思考を取り入れた企業・自治体の事例
ここからは、DXの現場においてデザイン思考をと入れた企業・自治体の事例を紹介します。
-
神奈川県横浜市
- ロート製薬株式会社
神奈川県横浜市
神奈川県トップの人口を誇る横浜市では、「デジタルの恩恵をすべての市民、地域に行きわたらせ、魅力あふれる都市をつくる」ことを基本目的とした「横浜DX戦略」を策定、推進しています。
この実践に向けて、2022年度からデジタル統括本部の人数を約4倍の100人超に増員し、新たに「デジタル・デザイン室」を設置するなど、さまざまな取り組みが本格的に始動しています。
横浜DX戦略は、「デザイン思考」を基本姿勢とし、「UX」「オープンイノベーション」「アジャイル」「データドリブン」の4つの視点で構成されています。また、横浜市ではデジタル人材を「利用者目線で課題やニーズを捉え、現場とデジタル技術をつなぎ、行政サービスや業務を、自らデザインできる人材」と定義し、その育成にも積極的に取り組んでいます。
横浜市が実践している、デジタルで解決すべき問題の本質を現場から見出し、アイデアを出し合い、試行し、ユーザーと共に進化させるプロセスはまさしくデザイン思考です。これによって全体最適を考えながら「市民や地域中心」のサービスの開発・実装を設計する、というDX実現施策が進められています。
ロート製薬株式会社
創業120年超の歴史をもつロート製薬株式会社では、2020年末からユーザーと直結することでウェルビーイングを叶える「D2C(Direct to Consumer)プロジェクト」を本格始動させています。2021年7月にはその第一歩として、自社オンラインショップの大幅なリニューアルを実施しました。
リニューアルにあたって、ロート製薬株式会社は従来のやり方から発想を切り替え、お客様自身の課題を軸にした「デザイン思考」を新たに取り入れています。
具体的には、商品を軸にするのではなく「そもそも、ユーザーにどんな健康の悩みがあるのか」「生活の中でどんな困り事があって、本当はどうしたいのか」といったより潜在的なニーズの掘り起こしを実施しました。結果的に「目のお悩み解決&自分に合った商品と出会える場所」というコンセプトのもと、サイトの一部とコンテンツだけではなくお届け箱や袋のデザインまでアップデートを行いました。
参考:ロート製薬株式会社_主体をブランドからお客さまへ。90以上のブランド数を抱えるメーカーが目指すD2Cとは?
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デザイン思考を実践するメリット
デザイン思考を導入することで、企業やチームに多くのメリットをもたらします。以下に、代表的な利点を紹介します。
● ユーザー中心の課題解決が可能
デザイン思考は、ユーザーの視点に立ち、共感を重視するため、より本質的な課題の発見と解決が可能になります。これにより、ユーザー満足度の向上や、より実用的な製品・サービスの提供が期待できます。
● イノベーションの促進
従来の発想にとらわれず、多様な視点からアイデアを創出するプロセスを重視するため、新しい発想や独自のソリューションが生まれやすくなります。これにより、ニーズの変化が激しい市場にも柔軟に対応できます。
● プロトタイピングによる早期検証
アイデアを素早く形にし、試作品を通じて実用性や課題を早期に発見できるため、リスクの低減と開発期間の短縮につながります。市場投入前に必要な調整を行うことで、無駄なコストを抑えることができます。
●柔軟で適応性のあるアプローチ
繰り返しのプロセス(イテレーション)を通じて、変化する市場や顧客のニーズに迅速に対応できます。これにより、製品やサービスの質を継続的に改善し続けることが可能です。
デザイン思考を実践するデメリット
一方で、デザイン思考の導入にはいくつかの課題やデメリットも存在します。
デザイン思考を実践するには、ユーザー調査やプロトタイピング、テストなどを繰り返すため、従来の手法に比べて多くの時間とコストが必要となります。特に、リソースが限られている企業にとっては、このデメリットによって導入のハードルが高くなる可能性があります。
また、デザイン思考は定量的かつ明確なゴール設定が難しく、プロジェクトが長期化したり、方向性が曖昧になるリスクも考慮しなくてはなりません。
デザイン思考の導入にあたっては、これらのデメリットを理解し、適切な方法で実践することが重要です。時間やコストの管理、スキルの習得など、組織全体での取り組みを継続的に行うには、デザイン思考を体系的に学べる研修サービスの導入がおすすめです。
デザイン思考のフレームワークを学べるリンプレスの研修
リンプレスは、企業のDX推進を支援する専門的な研修プログラムを提供しています。
自社でDXを推進するにあたって、フレームワークに沿ったデザイン思考を身につけさせたいとお考えなら、ぜひリンプレスの「デザイン思考研修」をご利用ください。
リンプレスは、これまで4,000社に対して支援を行ってきた実績のある研修サービスです。特に、デザイン思考やIT企画力といった上流工程向けのサポートに強みを持っています。
リンプレスの「デザイン思考研修」
リンプレスが提供する「デザイン思考研修」は、1日完結型のプログラムで、講義とグループワークを通じてデザイン思考の概要を理解し、ビジネスへの活用方法を学ぶことができます。
リンプレスの「デザイン思考研修」の特徴は以下の通りです。
● デザイン思考のプロセスを学ぶ
講義とグループワークを組み合わせ、デザイン思考の各プロセスを体感的に学習します。
● 実例を通じた基礎学習
デザイン思考の手法を用いて革新的なアイデアやサービスを生み出した事例をもとに、アイデア発想法を学びます。
● 多様な業種の参加者との交流
グループインタビューやディスカッションを通じて、他業種の視点や考え方から新たな刺激を受けることができます。
この研修は、新規事業や新商品・新サービスの開発に携わる方、DX推進に向けて斬新なアイデアや企画を生み出すスキルを求められている方におすすめです。
詳細やお申し込みについては、以下のリンクをご参照ください。
リンプレスの「デザイン思考研修」について詳しくはこちら
まとめ
デザイン思考は、ユーザー中心の視点で課題を解決し、革新的なアイデアを生み出すアプローチです。共感・問題定義・アイデア創出・プロトタイプ・テストの5つのプロセスを通じて、ビジネスや教育分野で活用されています。
しかし、導入には時間やコストがかかることも課題です。リンプレスの「デザイン思考研修」では、基礎から実践まで体系的に学べる機会を提供し、多様な業界の参加者と共にアイデア創出力を高めることができます。
自社の社員にデザイン思考力を身につけさせたいとお考えなら、ぜひリンプレスにご相談ください。
<文/文園 香織>