
IPA「DX動向2025」とは?日本企業におけるDXの現状とポイントもわかりやすく解説
DXの推進が経営課題となる中、IPA(情報処理推進機構)が公表した「DX動向2025」に注目が集まっています。この報告書では、日本企業のDX取組割合は8割弱まで増加しているものの、成果創出には課題が残っていることが明らかになりました。
本記事では「DX動向2025」の内容や日本企業がDXの成果を出せていない原因、自社のDX推進に活かす方法をわかりやすく解説します。
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「DX動向2025」とは
「DX動向2025」とは、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が2025年6月26日に公表した、日本・米国・ドイツの3か国におけるDX推進状況の比較調査の報告書です。
これまでの「DX白書2023」「DX動向2024」の流れを引き継いだ調査であり、「戦略」「技術」「人材」という3つの視点から日本企業のDXの実態を明らかにしています。
サブタイトルには「内向き・部分最適」から「外向き・全体最適」へという方向性が掲げられており、日本企業が今後DXで成果を出すうえで意識すべきポイントが整理されているのが特徴です。
「DX動向」調査の目的と概要
「DX動向」の目的は、国内企業・海外企業のDX推進状況を継続的に調査し、企業がDX推進の参考にできる情報を発信することです。
調査対象は企業の人事部門、情報システム部門、DX推進部門などに所属する担当者です。2025年度版の調査は、2025年の2月から3月にかけて実施されました。
アンケートに回答した国内企業は合計1,535社で、DXに関連する国内最大規模の調査といえます。米国からは509社、ドイツからは537社の回答を集めました。
なお、業種は製造業から情報通信業、金融業、小売業、サービス業まで多種多様です。
IPA(情報処理推進機構)とは
IPAは「情報処理推進機構」とも呼ばれる、経済産業省所管の組織です。情報セキュリティ対策やIT人材育成、DX推進など、デジタル分野における幅広い業務を担当しています。
今回の調査も、DX推進施策の一環として行われたものです。このほかに、情報処理技術者試験の運営、情報セキュリティに関する調査なども実施しています。
日本企業のDX取組状況の現状
「DX動向2025」によると、日本企業のDX取組割合は8割弱に達しており、これは米国とほぼ同水準、ドイツよりも高い水準にあります。一方で、成果が出ていると回答した企業の割合は6割弱にとどまり、米独の8割超と比較して大きな差がみられました。
ここからは、DX動向2025の内容をもとに、日本企業におけるDXの取り組みの現状を見ていきましょう。
DXに取り組む企業の割合は増加傾向にある
調査によると、日本企業のうち何らかの形でDXに取り組んでいる企業の割合は約8割に達しました。
これは2021年調査の約1.4倍に当たる水準で、ここ数年でDXへの取り組みが一気に広がったことがわかります。特に、従業員数が1,000人以上の企業ではDXに取り組んでいる割合が96.1%にのぼりました。
ただし、2023年度以降の数値はほとんど変わっておらず、頭打ちの傾向も見られます。DXに向けた取り組みに新しく着手する企業自体は減りつつあり、今後は現在の取り組みをいかにブラッシュアップできるかが焦点になっています。
取り組みの内容は「業務効率化」が中心
「DX動向2025」では、DXの取り組みを以下の二つに分類して分析しました。
内向き(効率化・コスト削減)
外向き(成長・新たな価値創出)
その結果、日本企業のDXの取組内容は、業務効率化や生産性向上といった「内向き」の取り組みが中心であることが明らかになっています。調査の概要部分でも、日本企業のDXの特徴について、以下のような指摘がなされました。
DXの目的はコスト削減、リードタイム短縮などの業務効率化、生産性向上が中心である。その結果、DX の成果においても米独に比べて遅れをとっている。
全社的な視点ではなく、個別の業務プロセスを改善する「部分最適」に留まる傾向がある。
(IPA「DX動向2025について」 1ページ 1.1.概要より引用(一部抜粋))
これに対し、米国やドイツでは「売上高増加」「市場シェア向上」「顧客満足度の向上」など、ビジネスの成長に直結する項目で成果を実感している割合が高いです。日本とその他の国で、DXで何を目指すかという根本の方向性に違いがあることが浮き彫りになっています。
DX推進の体制整備は差が大きい
DXを推進するための体制整備についても、日本企業と米独企業の間には差が見られました。
業務プロセス最適化への取組方針を尋ねた設問では、日本企業は「個別の業務プロセスの最適化」に取り組む割合が高く、米独企業は「業務プロセスの全社最適化」に取り組む割合が高いという結果が出ています。
国名 | 業務プロセスの全体最適化が完了している・取り組んでいる | 個別の業務プロセスの最適化が完了している・取り組んでいる | その他 |
日本 | 34.8% | 46.0% | 19.3% |
米国 | 70.7% | 22.4% | 6.9% |
ドイツ | 59.9% | 32.2% | 7.8% |
IPA「DX動向2025(データ集)」 36ページの調査結果をもとに集計
上記の表からも分かるとおり、日本企業のDXは部門単位の「部分最適」にとどまっているケースが多く、企業全体を俯瞰した「全体最適」への転換が課題となっているのです。
また、経営とIT部門・業務部門の間をつなぐ、いわゆる「橋渡し人材」の不足も指摘されており、組織横断でDXを進める基盤がまだ十分に整っていない企業が多いという現状がうかがえます。
DXで「成果が出ている」企業は6割に留まる
DXの取組で「成果が出ている」と回答した日本企業は6割弱にとどまっており、米独の8割超と比べて大きな開きがあります。
加えて、「わからない」と回答した企業の割合は、米独が5〜6%程度であるのに対し、日本は26.2%と高い水準でした。調査書でも指摘されている通り、これは「DXに取り組んでいるものの、その成果を測定する仕組みがまだ整っていない企業が多い」ということを意味しています。
このほかにも、DXの成果を把握するための指標を設定しているかどうかを尋ねた設問でも、日本と米独の間に大きな差が見られました。
国名 | 設定している | 設定していない | わからない |
日本 | 27.4% | 63.5% | 9.1% |
米国 | 89.8% | 6.4% | 3.8% |
ドイツ | 82.7% | 12.6% | 4.6% |
IPA「DX動向2025(データ集)」 18ページの調査結果をもとに集計
成果指標が設定されていなければ、DXの効果を客観的に評価することは難しく、改善のサイクルも回りにくくなります。日本企業がDXの成果創出に苦戦しているのは、こうした点に原因があるといえるでしょう。
DXの効果とは何を指すのか?詳しくは以下の記事で紹介しています。
DXによって得られる効果とは?3つのフェーズごとに詳しく解説
成果を出している企業と出せていない企業の違い
「DX動向2025」を分析すると、DXで成果を出している企業と出せていない企業の間にいくつかの違いがあることが見えてきます。
成果を出している企業に共通する最大の特徴は、DXを「経営戦略の一部」として位置づけ、全社で取り組んでいる点です。経営層がDXを主導し、IT部門と業務部門が連携しながら、顧客や市場に対する新しい価値の創出を目指しています。
一方、成果を出せていない企業では、DXが部門単位の業務改善にとどまり、全社戦略との結びつきが弱い傾向があります。また、成果指標が設定されておらず、何ができたら成功なのかが曖昧なまま取り組みが進んでいるケースも少なくありません。
日本企業がDXの成果を出せない主な原因
日本企業がDXの成果を出せていない原因は、以下の4つが挙げられます。
人材・スキルの不足
経営層のコミットメントが不十分
戦略や目標が曖昧なまま進めてしまっている
デジタル文化・組織風土が醸成されていない
それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。
人材・スキルの不足
DXを推進する人材の不足は、日本企業がDXの成果を出せない最大の要因の一つです。
DX動向2025では、日本企業の85%超でDXを推進する人材が「不足している」と回答しました。これは、米独と比べても極めて高い割合です。
不足している人材の中でも特に課題とされているのが、ビジネスとデジタルの橋渡しを担う人材です。経営戦略とデジタル技術の双方に精通した社員が不足しているため、DXが目先の業務改善にとどまりやすくなっています。
日本国内におけるDX人材不足については、以下の記事で詳しく紹介しています。
DX人材不足の現状と課題|DX成功のための人材育成方法とは?
経営層のコミットメントが不十分
DXは企業全体の変革を伴う取り組みであるため、経営層のコミットメントが欠かせません。しかしDX動向2025では、日本企業の経営者はデジタルに関する知見が米独企業に比べて不足しているという課題が指摘されています。
経営層がデジタル分野への理解を深めなければ、成長や新しいコスト創出といった「外向き」の施策は実行できません。また、欧米では経営とデジタル技術をつなぐCDO(最高デジタル責任者)などを置く企業が多いですが、日本ではまだまだ浸透していません。
戦略や目標が曖昧なまま進めてしまっている
戦略や目標が曖昧なまま進めてしまうケースが多いことも、DXの成果が出せない原因の一つです。
前述のとおり、DXの成果を測る指標を設定している日本企業は3割以下にとどまっています。多くの企業で、「何をもってDXが成功したと言えるのか」という基準を持たないまま施策が進められているのです。
成果指標が曖昧だと、DX施策の効果を検証できず、改善に向けたPDCAサイクルも回りません。現場では「やっているけれど成果が見えない」という状況が生まれるため、DXに対するモチベーションも低下しやすくなります。
デジタル文化・組織風土が醸成されていない
AIやITは、常に進化しています。DXを継続的に推進するためには、社員が常に新しい技術や働き方を受け入れる組織風土が欠かせません。
一方でDX動向2025では、日本企業の企業文化・風土の形成は米独に比べて遅れていることが指摘されています。
特に、以下のような項目で日本と米独の差が目立ちました。
「リスクを取り、チャレンジすることが尊重される」
「高いスキルを持っていることが報酬に反映される」
「意思決定のスピードが速い」
「学習を支援する制度やプログラムが充実している」
年功序列型の給与体系などは徐々に見直されつつありますが、まだまだ日本の企業文化は能力主義とは言えません。デジタルスキルの高い人材が、外部のIT企業や外資系企業へ流出するケースも目立っています。
「DX動向2025」を自社のDX推進に活かす方法
ただ調査結果を眺めているだけでは、自社にとって有効なDX施策を見出すことはできません。調査を自社の施策につなげるためには、以下の2つの観点が有効です。
自社のDX成熟度を客観的に把握する
成果を出している企業の共通点を参考にする
ここからは、DX動向2025を自社のDX推進に活かすための視点を2つ紹介します。
自社のDX成熟度を客観的に把握する
「DX動向2025」を自社に活かす第一歩は、自社のDX成熟度を客観的に把握することです。
レポートで示されている調査項目を自社に当てはめて、客観的に評価してみましょう。特に、以下のような項目を中心に比較することをおすすめします。
「DXの取組状況」(6ページ)
「成果指標の設定状況」(18ページ)
「IT分野に見識のある役員の割合」(26ページ)
「業務プロセス最適化の取組」(36ページ)
IPA「DX動向2025(データ集)」
自社の強みと弱みを把握できれば、優先的に取り組むべき課題が明確になり、DX推進に向けた具体的な施策を立てやすくなるでしょう。
成果を出している企業の共通点を参考にする
「DX動向2025」では、DXで成果を出している企業の特徴として以下が挙げられています。
経営層がDX推進にコミットしている
全社戦略に基づいて全体最適を志向している
DX人材の育成に注力している
企業文化として挑戦や学習を奨励している
自社のDX推進においても、これらの共通点を参考にしてみてください。具体的な施策の例は、この後詳しく解説します。
なお、すでにDXに向けた施策を進めている場合は、それが上記の観点に沿ったものとなっているか確認してみてください。
DX推進の課題を解決する方法3選
日本企業がDX推進を加速させるためには、以下の3つに取り組むことが大切です。
経営層と現場が一体となった推進体制をつくる
デジタルスキルの底上げに投資する
外部の専門知見・サポートを積極的に活用する
それぞれの内容について、詳しく解説します。
経営層と現場が一体となった推進体制をつくる
DX推進の課題を解決する一つめの方法は、経営層と現場が一体となった推進体制をつくることです。「DX動向2025」で指摘されているとおり、日本企業のDXは部分最適にとどまる傾向があります。その最大の原因は、経営と現場の連携不足です。
経営層のビジョンを現場に落とし込むためには、両者をつなぐ役割を担う人材や組織が必要です。前述した「CDO(最高デジタル責任者)」の設置はもちろん、DX推進部門の整備や部門横断プロジェクトの実施などが有効な手段となります。
デジタルスキルの底上げに投資する
二つ目の方法は、社員のデジタルスキルの底上げに投資することです。
日本企業の85%超でDX人材が不足している現状を踏まえると、外部からの採用だけに頼るのは現実的ではありません。既存社員のリスキリングを実施して、社内全体のデジタルリテラシーを高めていく必要があります。
全社員向けのDXリテラシー研修、高度人材向けのデータ分析やAI活用研修、リーダー層向けのDX推進プログラムなど、階層別の育成施策を組み合わせると効果的です。
外部の専門知見・サポートを積極的に活用する
三つ目の方法は、外部のサポートを積極的に活用することです。
DX推進には戦略立案や人材育成、組織変革などの多岐にわたる知見が求められますが、これらをすべて社内で賄うのは難しいケースも少なくありません。ITトレンドは絶えず変化するため、これを常にキャッチアップするのにはコストもかかります。
外部の専門コンサルタントやDX人材育成サービスを活用することで、DX推進を効率的に進められます。特にDX人材育成の領域では、他社の成功事例や最新のカリキュラムを取り込めるため、社内だけで研修を設計するよりも質の高い育成が実現できるでしょう。
DX人材育成の外部サポートなら「リンプレス」
DX人材の育成や評価制度の構築には専門的な知見が必要ですが、社内のリソースだけで体系的な育成体制を整えるのは簡単ではありません。
そのような企業にとっておすすめなのが、DX人材育成の専門企業の支援を受けることです。DX推進コンサルティングや人材育成支援を手がける「リンプレス」では、企業のDX課題に合わせた育成プログラムを用意しています。
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リンプレスのDX人材育成プログラムは、業界や企業の特性に合わせてカスタマイズできる点が大きな特徴です。基礎的なDX・ITリテラシーの向上から、DX推進リーダーの育成まで、幅広いニーズに対応しています。
また、DXの知識は座学で学ぶだけではなかなか身につきません。リンプレスのカリキュラムは実践重視の内容となっているため、実務に直接役立てやすい点が特徴です。ワークショップや演習を積極的に活用して、本当に成果の出るDX施策を実現します。
まとめ
IPAの公表した「DX動向2025」は、日本企業のDXの現状を米国・ドイツと比較した調査報告書です。日本企業のDX取組割合は8割弱に達し、米独と同水準まで広がってきた一方で、成果が出ている企業は6割弱にとどまるなど、新しい課題も見えてきました。
これらを解決するためには、経営層と現場の接続を強化したり、デジタルスキルの底上げを図ったりすることが欠かせません。自社のDX推進に課題を感じている場合は、外部のプロを頼ることが成功への近道となるでしょう。
ぜひこの記事の内容を参考に、成果創出につながるDXを実現してください。
<文/文園 香織>











