
DX推進に役立つ公式資料3選を解説|企業IT動向調査・IT人材白書・通信利用動向調査の読み方と活用法とは
DX推進を行う際には、経済産業省やIPAなどが公開している公式資料が役立ちます。しかし、公式資料の内容は膨大なため、何をどう読めばよいかわからず困っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、DX推進担当者が押さえておきたい公式資料として、JUAS「企業IT動向調査2025」、IPA「IT人材白書」(現「DX動向」)、総務省「通信利用動向調査」の3つを取り上げます。内容やDX推進への活かし方をわかりやすく解説するので、ぜひ最後までお読みください。
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DX推進に公式資料を活用すべき理由
DXの推進担当者が公式資料を活用すべき理由は、以下の2つです。
施策の方向性を立てることができる
社内説明に役立てられる
信頼できるデータを土台にすることで、自社のDXを成功させやすくなります。それぞれの詳細について、詳しくみていきましょう。
施策の方向性を立てることができる
公式資料を活用する一つめのメリットは、自社のDX施策の方向性を立てやすくなることです。
経済産業省、IPA、総務省、JUASといった公的機関などが発行する資料は、作成にあたり数百〜数千社規模の調査を実施しています。業界全体の動向や他社の状況を把握するうえでは、こうした大規模な調査データが欠かせません。
たとえば同業他社のDX取組状況と比較して自社の遅れている部分を特定したり、自社のDX予算と業界平均を照らし合わせて次年度以降の判断材料にしたりすることができます。データに基づいて施策を立てられるようになるため、成果にもつながりやすいです。
社内説明に役立てられる
公式資料を活用するもう一つのメリットは、社内説明に役立てられることです。
DX推進では、経営層への提案や他部署との調整といった場面で、社内のさまざまな関係者に対して施策の必要性を説明する必要があります。その際、公的機関や業界団体が発表しているデータを根拠として示すと、説得力が高まり施策がスムーズに進みます。
たとえば「紙の業務が多く時間がかかっている」と伝えるよりも、「業界全体ではクラウド利用が8割を超えている」と伝えた方が説得力があるでしょう。社内全体でDXに向けた意識を醸成する上でも、公的な調査が有効なのです。
資料①「企業IT動向調査報告書2025」(JUAS)とは
まずは、一つ目の資料である「企業IT動向調査報告書2025」について解説します。これは、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が発行した、日本のIT動向に関する調査報告書です。
企業のIT部門を対象に、IT投資、IT利用の現状と経年変化が細かく分析されています。1994年度から継続されている調査で、国の監修も受けているため信頼性も高いです。
DX推進担当者にとっては、自社のDX施策を考える上で見逃せない資料の一つといえるでしょう。
調査の目的と概要
「企業IT動向調査」の主な目的は、日本企業におけるDXの現状を明らかにすることです。
同調査では企業のIT部門を対象に、毎年アンケート調査とインタビュー調査を行っています。年度ごとに重点テーマを設定し、トレンドに合わせた分析を実施している点も特徴です。
2025年版の調査期間は2024年9月6日から10月28日で、東証上場企業など4,500社を対象に依頼が送付され、Webアンケートで981社から回答を得ています。
調査項目は、IT予算・投資マネジメント、DX、データ活用、情報セキュリティなど多岐に渡り、企業のIT全般を網羅した内容です。
2025年版で明らかになった主なトピック
「企業IT動向調査2025」で明らかになった主なトピックは、次の3点です。
IT予算が増加傾向である
DX推進の進展状況は二極化している
生成AI活用が急速に進んでいる
IT予算については、2024年度に「増加した」と回答した企業が全体の50.9%を占めました。円安や人件費高騰による物価上昇が主な原因ではありますが、業務のデジタル化対応や基幹システムの刷新に取り組む企業が増えていることも一因だと指摘されています。
また、DXは一部の企業において取り組みが進展している一方、成果を実感できる領域を見出せずに取り組み意欲が削がれるという企業も増えており、進展状況は二極化していることが明らかになりました。
生成AIは、社内に蓄積されたテキストデータ等を「今後活用予定」と回答した企業が全体の51.5%に上るなど、多くの企業で積極的に活用する動きが進んでいます。
DX推進担当者が注目すべきポイント
「企業IT動向調査2025」で注目すべきポイントは、IT予算と組織体制の2点です。
前述した通り、IT予算は多くの業界において増加しています。特に基盤整備や増強、期間システムの刷新に投資を加速する企業が多く、DXに向けた全社的な取り組みが拡大傾向です。資料では業界ごとにIT予算割合の平均値も報告されているので、これらも参考になるでしょう。
組織体制に関しては、IT部門を以下の4つのタイプで分類しています。
「企画・マネジメント型」
「ユーザー部門支援型」
「開発・技術特化型」
「包括型」
2025年の調査では、DXに成果を感じている企業ほど、企画・マネジメント型や包括型のIT部門を設置している割合が多いことが明らかになりました。これらをもとに今一度自社の体制を見直し、実効性の高い組織となっているか点検してみましょう。
資料②「DX動向2025」(IPA)とは
「DX動向2025」は、過去にIPA(情報処理推進機構)が発行していたIT人材の動向「IT人材白書」をまとめた調査報告書です。「IT人材白書」は2009年から毎年公表されてきましたが、2021年に「DX白書」と統合され、現在はその後継として「DX動向2025」が発行されています。
調査を行っているIPAは、経済産業省所管の独立行政法人です。IT人材育成、情報セキュリティ、DX推進など幅広い分野で活動しており、本調査もDX推進の一環として行われています。
ここでは最新版である「DX動向2025」を中心に、その調査内容を紹介します。
調査の目的と概要
「DX動向2025」の目的は、企業のDXを推進する人材の確保状況、育成状況、企業文化・風土などを把握することです。国内だけでなく、米国とドイツの企業も対象に調査を行っている点が最大の特徴で、国際的な視点から日本企業の課題を明らかにしています。
2025年版の調査期間は2025年2月10日から3月28日で、調査件数は日本1,535社、米国509社、ドイツ537社となっています。調査対象は主に人事部門や情報システム部門の担当者で、業界は製造業からサービス業、小売業までさまざまです。
日本のDXにおける課題
「DX動向2025」では、DXに取り組む日本企業が約8割と増えてきている一方で、成果を実感している企業は6割弱と、米独より低い水準になっていることが明らかになりました。
その原因として指摘されているのは、下記の3点です。
業務改善のような「内向き」のDXが多い
DX戦略の評価項目が曖昧である
DX人材が不足している
調査によると、日本企業のDXは業務改善やコスト削減といった「内向き」の取り組みが多く、新規事業創出といった「外向き」の価値創出は十分に行われていません。その結果、米独と比べてDXの成果を感じる企業の割合が低くなっているのです。
また、人材については日本企業の85.1%が「やや不足している」または「大幅に不足している」と回答しました。これは前回の調査とほとんど同じ水準で、DX人材の不足解消が進んでいない現状がうかがえます。
DX推進担当者が注目すべきポイント
DX推進担当者はDX動向2025の結果をもとに、自社のDX人材戦略を見直すことができます。
たとえば、自社のDX推進人材が十分に確保されているか、DX推進リーダーなど業務とITをつなぐ人材が十分に確保できているか確認しましょう。役員や管理職にDXの知識を持った人材を配置することも有効です。
さらに、日本企業が遅れがちな「DX施策の評価指標の策定」「DX人材のスキルマップの策定」などが十分かどうかも確認する必要があります。資料で指摘されている内容で自社に当てはまるものがないかどうか、自社の人材戦略をチェックすると効果的です。
「DX動向2025」の内容については、以下の記事でさらに詳しく紹介しています。
IPA「DX動向2025」とは?日本企業におけるDXの現状とポイントもわかりやすく解説
資料③「通信利用動向調査」(総務省)とは
「通信利用動向調査」は、総務省が世帯・企業を対象に、情報通信サービスの利用動向を調査している統計資料です。
企業におけるクラウドサービスやIoT・AIの導入状況、テレワークの実施状況、セキュリティ対策の現状などが調査されており、企業のDX関連の施策の検討に役立ちます。自社のデジタル活用度合いを評価するうえで、ぜひ押さえておきたい資料の一つです。
調査の目的と概要
「通信利用動向調査」の目的は、世帯と企業の双方におけるIT活用の実態を把握することです。行政の施策策定に役立てられていますが、調査結果は一般にも公表されているため、企業でも効果的に活用できます。
調査は毎年8月末に行われ、内容は企業編と世帯編の2つに分かれています。企業編の対象は、常用雇用者が100人以上の企業です。直近の「令和6年通信利用動向調査」は2025年5月30日に公表されており、結果はe-Statや情報通信統計データベースで誰でも閲覧することができます。
企業・個人におけるデジタル活用の実態
令和6年通信利用動向調査の結果によると、企業・個人におけるデジタル活用は着実に拡大しています。
調査で明らかになった主な結果は、次の通りです。
クラウドサービスを利用している企業の割合は8割を超え、増加傾向が継続
クラウド利用企業のうち、利用効果が「非常にあった」「ある程度あった」と回答した企業は88.2%
クラウド利用用途では「給与、財務会計、人事」「スケジュール共有」が前年から増加し、5割を超える
また、テレワークを導入している企業の割合は47.3%で、前年から低下傾向にあるなど、数年前のトレンドからの回帰傾向もみられました。
DX推進担当者が注目すべきポイント
DX推進担当者はこの調査をもとに、自社のデジタル活用度合いを他社と比較し、足りない部分を見つけることができます。
たとえば、自社のクラウド利用率が業界平均の8割を下回っているなら、業務システムのクラウド化を検討するべきでしょう。テレワークの導入率や利用形態を比較すれば、自社の働き方が他社と比較してどの立ち位置にあるのか把握できます。
また、産業別・資本金別・従業者数別などの様々な切り口でデータが整理されているため、自社と同じ業種・規模の企業に絞って比較することも可能です。
3つの資料を横断して読むと見えてくること
3つの資料を横断して読むと、日本企業のDX推進では次の傾向が見えてきます。
取り組みは拡大しているが成果創出に課題がある
人材不足とスキルギャップが共通の障壁になっている
第一に、日本企業のDX関連の取り組みは確実に広がっているものの、成果創出には課題が残っていることがわかります。
JUASの調査ではIT予算が高水準で増加しており、DXに取り組む企業の割合も上昇していることがわかりました。総務省の調査でもクラウド利用が8割を超え、IoT・AIの導入も増加傾向にあるとされています。一方、IPAの調査では「DXの成果が出ている」と回答した日本企業は6割弱にとどまり、これは米独の8割超と比較して大きな差です。
また、DX人材の量的・質的な不足がギャップになっていることもわかります。
IPAとJUASの調査では、ともにIT人材の不足が継続的な課題として取り上げられていました。中でも足りていないのが、経営とITをつなぐ「橋渡し人材」です。
IPAの調査報告書でも指摘されているように、経営層にDXの知見を持った人材を配置するなどの対策が求められています。
公式資料を読むだけではDXは進まない
公式資料は貴重な情報源ですが、資料を読むだけでDXが進むわけではありません。
資料はあくまでも全体的な傾向をまとめたものであり、自社の固有の状況や課題に対処するためには、資料の内容を施策へと落とし込む作業が必要です。
たとえばIPAの資料を読んで「DX人材の育成が重要だ」と理解できても、自社にどのような研修を導入すべきか、どの順番で人材を育てるべきかといった具体策を考えるのは難しいでしょう。企業や業界によって、最適な打ち手も異なります。
施策を立案するためには、DX推進の経験やノウハウが必要です。社内にこうしたノウハウが蓄積されていない場合、資料を読み込んでも具体的な行動につなげられず、DXが停滞してしまうケースも少なくありません。
DXを確実に前進させるには専門家のサポートが不可欠
DXを確実に遂行したい場合には、プロのサポートを取り入れてみましょう。
DX推進には、戦略立案から人材育成、システム設計に至るまで、幅広い知見が求められます。DX推進をサポートしている会社を活用すれば、これらの様々な要素を踏まえた上で、自社にとって最適な施策を立案してくれるでしょう。外部の専門家を巻き込むことで、社内では気づきにくい論点や、他社の事例を踏まえた施策を取り入れやすくなるというメリットもあります。
「何から手をつければよいかわからない」といった状態であっても、まずはプロに相談してみることがおすすめです。
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まとめ
本記事では、DX推進担当者が押さえておきたい3つの公式資料として、JUAS「企業IT動向調査2025」、IPA「IT人材白書」、総務省「通信利用動向調査」を紹介しました。
これらの資料を読むと、日本企業のDX推進は確実に広がっている一方、成果創出や人材確保には課題が残っているという現状が浮かび上がってきます。ぜひ資料の内容を読み解いて、自社のDXの参考にしてください。
ただし資料を読むことが、必ずしも自社に最適な施策の立案につながるとは限りません。DX施策を進める際には、専門家のサポートを取り入れることも検討してみてください。
<文/文園 香織>











