
上流工程で要件定義が重要な理由|成功のカギは「人材育成」
システム開発において、上流工程で実施される「要件定義」は、プロジェクトの成否を大きく左右する重要な工程です。しかし実務の現場では、要件定義が曖昧なまま進行し、手戻りやコスト増大につながるケースも少なくありません。
こうした課題の背景には、上流工程を担える人材不足という問題があります。
本記事では、上流工程における要件定義の役割や重要性、失敗を防ぐためのポイントを整理し、あわせて人材育成の考え方について解説します。
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上流工程で重要なステップ「要件定義」とは?
要件定義とは、システム開発において「どのようなシステムを作るのか」「何を実現するのか」を明確にする工程です。
上流工程の中核を担うステップであり、業務課題や利用者の要望を整理し、機能や性能、制約条件などを言語化・文書化します。要件定義は、開発の方向性を定める設計図のような役割を持つため、この段階が曖昧なまま進むと、後工程で大きな手戻りが発生する原因となります。
要件定義がプロジェクト成功のカギと言われる理由
要件定義がプロジェクト成功のカギとされるのは、ここでの判断が開発全体の品質・コスト・スケジュールを左右するためです。要件が不十分だと、開発途中で仕様変更が頻発し、追加工数やトラブルにつながります。
一方、要件定義が適切に行われていれば、関係者の認識が揃い、下流工程をスムーズに進められます。多くの開発失敗事例が、要件定義の不備に起因していることからも、その重要性は明らかです。
要件定義は「何を作るか」を決める最重要工程
要件定義は、「どのように作るか」ではなく、「何を作るか」を決める工程です。業務のどこをシステム化するのか、どの機能が必要で、どこまでを対象とするのかを明確にします。この判断を誤ると、完成後に「使えない」「期待と違う」といった問題が発生しやすくなります。そのため、業務理解や課題整理、関係者との合意形成が欠かせず、単なるIT知識だけでなく、上流工程ならではのスキルが求められます。
要件定義の基本情報については、以下の記事で詳しく紹介しています。
要件定義とは?押さえるべき3つのポイントも解説【要件定義の終了判定サンプル有】
上流工程の成果物が下流工程全体へ影響する
要件定義で作成される成果物は、設計・開発・テストといった下流工程すべての基準となります。要件が明確であれば、下流工程は迷うことなく作業を進められ、品質の高いシステムを効率的に構築できます。反対に、要件が曖昧な場合は、下流工程で解釈の違いが生まれ、修正や手戻りが増加します。
つまり、上流工程の要件定義の質が、そのままプロジェクト全体の成果に直結するといえます。
上流工程の定義についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
上流工程とは?下流工程との違いやITプロジェクト全体の流れを紹介
要件定義とは何をする工程なのか?
要件定義は、システム開発において「何を実現するシステムなのか」を決めていく工程です。具体的には、以下のような流れで進行します。
業務要件の整理
機能要件の整理
非機能要件の整理
関係者の合意形成
それぞれの段階について、詳しく紹介していきます。
業務要件の整理
業務要件の整理では、まず現状の業務フローや課題を把握し、「なぜシステムを導入するのか」という目的を明確にします。
現場の困りごとや非効率な作業を洗い出し、どの業務をどのように改善したいのかを言語化することが重要です。業務要件が曖昧なままでは、システム化の方向性が定まらず、不要な機能追加や目的外の開発につながる恐れがあります。要件定義の土台となる重要な作業です。
機能要件の整理
機能要件の整理では、業務要件をもとに「システムとして何ができる必要があるか」を具体化します。
画面表示、入力項目、処理内容、他システムとの連携など、必要な機能を一つずつ洗い出します。この際、すべての要望を盛り込むのではなく、優先順位を付けることが重要です。機能要件を明確にすることで、設計や開発が進めやすくなり、後工程での仕様変更リスクを抑えることができます。
非機能要件の整理
非機能要件は、システムの使い勝手や品質を左右する重要な要素です。処理速度や同時接続数といった性能面、セキュリティ対策、運用・保守のしやすさなどが含まれます。
機能要件に比べて見落とされがちですが、非機能要件が不十分だと、稼働後にトラブルが発生しやすくなります。要件定義の段階でこれらを整理しておくことで、安定したシステム運用につながります。
関係者の合意形成
要件定義では、整理した内容について関係者の合意を得ることが欠かせません。
現場部門、IT部門、経営層など、立場の異なる関係者が同じ認識を持つことで、プロジェクトを円滑に進められます。合意形成が不十分なまま進むと、後から意見の食い違いが表面化し、大きな手戻りにつながる可能性があります。要件定義は、単なる文書作成ではなく、関係者を巻き込む調整工程でもあるのです。
要件定義が曖昧な場合に発生するリスク
要件定義が曖昧なまま進行すると、システム開発全体にさまざまなリスクが生じます。
代表的なのが、開発途中や完成後に「想定していた内容と違う」という認識のズレが発覚するケースです。その結果、仕様変更や追加開発が頻発し、コスト増加やスケジュール遅延につながります。また、下流工程の手戻りが増えることで、品質低下や担当者の負担増も招きやすくなります。
要件定義を曖昧にさせないためには「要件定義書」というドキュメントのクオリティを高めることが重要です。
リンプレスでは、要件定義書の作成に役立つ「要件定義工程の終了判定のサンプル」を提供しています。以下からダウンロードしてご利用ください。
上流工程では「要求定義」も大切
上流工程では、要件定義だけでなく、その前段階にあたる「要求定義」も非常に重要です。
要求定義では、利用者や関係者が抱える課題や要望を整理し、「本来何を実現したいのか」を明確にします。要求が十分に整理されていない状態で要件定義に進むと、表面的な機能だけが決まり、本質的な課題解決につながらないシステムになりがちです。要件定義の質を高めるためにも、要求定義は欠かせない工程といえます。
要件定義と要求定義の違い
要求定義と要件定義は混同されやすいものの、役割は異なります。
要求定義は「なぜシステムが必要なのか」「どのような課題を解決したいのか」といった背景や目的を整理する工程です。一方、要件定義は、その要求をもとに「どのような機能や仕様を持つシステムを作るか」を具体化します。
要求定義が方向性を示し、要件定義が実装に落とし込む役割を担うため、両者を段階的に整理することが重要です。
要求定義と要件定義の違いについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。
IT化の上流工程における「要求定義と要件定義の違い」とは? | 株式会社リンプレス
上流工程での要件定義を成功させるポイント
上流工程における要件定義を成功させるためには、属人的な進め方を避け、再現性のある体制と進め方を整えることが重要です。特に重要となるのが、要件定義を担う「人材」、見落とされがちな「非機能要件」、作業を支える「フレームワーク」の3点です。
これらが揃っていないと、要件が曖昧になり、下流工程での手戻りや品質低下を招きやすくなります。
以下では、要件定義を安定して成功させるための具体的なポイントを解説します。
「上流工程人材」を確保する
要件定義の成否は、担当する人材のスキルに大きく左右されます。上流工程では、単にIT知識があるだけでなく、業務理解や関係者との調整力が求められます。そのため、上流工程に適した人材を確保・育成できていない場合、要件定義が形式的になり、現場の実態を反映できなくなる恐れがあります。
要件定義を安定して行うには、上流工程を専門的に担える人材を計画的に育成・配置することが欠かせません。
上流工程人材に求められるスキル
上流工程人材には、複数のスキルをバランスよく備えていることが求められます。
具体的には、現場の課題を引き出すヒアリング力、要望を整理し言語化する力、関係者間の認識を揃える調整力などが重要です。また、業務とITの両面を理解し、抽象的な要求を具体的な要件へ落とし込む「企画力」も欠かせません。
これらのスキルは実務経験だけで身につくものではなく、体系的な研修や育成を通じて強化する必要があります。
リンプレスのIT企画研修では、課題設定からアウトプット作成まで体系的に学べるため、上流工程に強い人材を短期間で育成できます。
非機能要件を軽視しない
要件定義では、機能要件に目が向きがちですが、非機能要件を軽視すると大きな問題につながります。
非機能要件には、性能、セキュリティ、可用性、運用・保守性などが含まれ、システムの品質や使いやすさを左右します。これらが曖昧なまま開発が進むと、リリース後にトラブルが発生しやすくなります。上流工程では、非機能要件も初期段階から整理し、明確に定義することが重要です。
フレームワークを使い標準化する
要件定義を担当者任せにすると、品質にばらつきが生じやすくなります。
そのため、フレームワークを活用して進め方を標準化することが有効です。たとえば、要求整理や要件分類の観点を統一することで、抜け漏れを防ぎやすくなります。また、共通のフレームワークを使うことで、関係者間の認識も揃いやすくなります。要件定義の属人化を防ぐためにも、標準化された手法の導入が重要です。
上流工程人材を育成する方法
上流工程人材を育成するには、実務経験に任せきりにせず、体系的な学習と実践の機会を組み合わせることが重要です。OJTだけでは、担当する案件や上司のスキルに左右されやすく、知識や進め方が属人化しがちです。そのため、上流工程の考え方やフレームワークを整理して学び、実務に落とし込む仕組みが求められます。
社内研修と外部研修を組み合わせることで、再現性のある育成が可能になります。
上流工程人材を育成するための研修方法については、以下の記事で紹介しています。
上流工程を担う人材にはどのような研修をすべき?実施のメリットも詳しく解説
上流工程人材の育成にはリンプレス
上流工程人材の育成を効率よく進めたい場合、外部研修サービスの活用が効果的です。
リンプレスでは、要件定義や企画といった上流工程に必要なスキルを、実務視点で体系的に学べる研修を提供しています。現場で直面しやすい課題を題材にしているため、学んだ内容をそのまま業務に活かしやすい点が特長です。属人化を防ぎ、組織として上流工程力を高めたい企業に適しています。
リンプレスの研修プログラム
上流工程人材の育成に役立つリンプレスの研修プログラムを紹介します。
・IT・システム企画研修
IT・システム企画研修では、デジタル技術を活用したビジネス設計力を養えます。
ビジネスプロデューサーに求められるのは、技術に詳しいことだけではなく「技術をどう使って価値を創出するか」を描く力です。本研修では、システム要件の整理方法や業務改善のアプローチの基本などを学ぶことで、DX時代に対応したビジネスプロデュース力が身につきます。
・デザイン思考研修
デザイン思考研修は、ユーザー中心の視点で課題解決を行う思考法を学ぶプログラムです。顧客の潜在ニーズを引き出し、共感・発想・試作・検証のプロセスを通じて新しい価値を創出する力を育みます。既存の枠にとらわれない柔軟な発想力は、ビジネスプロデューサーに欠かせません。チームでのワークショップ形式によって、実践的に思考法を習得できる点も魅力です。
・プロジェクトリーダー研修
プロジェクトリーダー研修では、複数の関係者をまとめて目標達成に導くためのマネジメント力を強化します。進行管理やリスク対応、チームビルディング、意思決定の技法など、ビジネスプロデューサーとして不可欠な要素が網羅されています。組織横断的な調整やプレゼンテーションの実践も含まれることが多く、実務に直結するスキルが身につく内容です。
DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください。
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まとめ
要件定義は、上流工程の中でも特に重要なステップであり、「何を作るか」「なぜ作るか」を明確にする役割を担います。この工程が不十分だと、下流工程での手戻りや品質低下を招き、プロジェクト全体に大きな影響を与えます。そのため、要件定義を成功させるには、業務理解・整理力・合意形成力を備えた上流工程人材の存在が不可欠です。属人的な進め方に頼らず、体系的な育成を行うことで、安定したプロジェクト推進が可能になります。
<文/文園 香織>












