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DXビジョンとは?策定の重要性や事例・進め方のポイントを解説

「DXを進めたいが、何から始めるべきか分からない」とお悩みではありませんか?

ツール導入だけに終始し、効果が出ないまま頓挫してしまう原因の多くは、明確なDXビジョンがないことにあります。DXビジョンは、企業としてどんな未来を目指すのか、なぜ変革が必要なのかを示す道しるべです。

本記事では、DXビジョンの意味や経営戦略との違い、策定のステップ、よくある失敗例、さらに日本企業の具体的なビジョン事例までを詳しく紹介します。

DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください。

リンプレスでは、DX推進人材を育成する研修プログラムと、DXの内製化をサポートするコンサルティングを提供しています。自社のDX推進にお困りの方はぜひご相談ください。

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DXビジョンとは?

DXビジョンとは、企業がデジタル技術を活用してどのような未来を実現したいのかを示す中長期的な方向性のことです。単なるシステム導入や業務効率化にとどまらず、経営戦略と連動し、企業全体がどのように変革していくのかを明確にする役割を持ちます。

明確なDXビジョンがあれば、現場と経営層の認識が一致し、施策の優先順位やリソース配分の判断もしやすくなります。

DXビジョンは4つの要素で構成される

DXビジョンは、企業がDXを進める上での全体像を示すもので、主に

  1. 策定の背景
  2. 実現すべき姿
  3. DX推進の体制
  4. 具体的な施策

の4要素から成り立ちます。これらを明文化することで、関係者の認識が揃い、DX施策の方向性がぶれにくくなります。単なるスローガンではなく、実行可能な設計図として機能することが重要です。

経営ビジョンや中長期戦略との違い

経営ビジョンは企業全体の未来像を示し、中長期戦略はその実現のための計画です。

対してDXビジョンは、それらを実現するためにどのようにデジタルを活用するかに特化したビジョンです。つまり、経営戦略を支える“デジタル活用の道筋”を明示するものといえます。目的や対象が異なるため、混同せず役割を明確にすることが大切です。

DXビジョンがあることで得られる効果

DXビジョンが明確になることで、社内の方向性が揃い、関係者が共通の目的に向かって動けるようになります。現場への浸透も進みやすくなり、経営層と現場の温度差も縮まります。

また、プロジェクトごとの評価軸が統一されるため、意思決定の迅速化や施策の定着にもつながるでしょう。DXビジョンは、DX推進の羅針盤として機能します。

なぜDXビジョンが重要なのか

DXの取り組みを成功させるためには、単にITツールを導入するだけでは不十分です。企業として「なぜDXに取り組むのか」「どこを目指すのか」を明確にしたDXビジョンがあることで、現場の行動が目的と一致し、部門間の連携も円滑になります。

DXビジョンの策定によって期待できる効果として、以下の3つを紹介します。

  • DXの目的を明確にするため
  • 単なるシステム導入に終わらないため
  • 全社的なDX推進の軸にするため

DXの目的を明確にするため

DXは「手段」であって「目的」ではありません。ビジョンを明確にすることで、自社が何のためにDXを進めるのか、どんな価値を提供したいのかが可視化され、現場の理解と納得が得られやすくなります。

目的があいまいなまま進めてしまうと、導入したシステムが現場に合わなかったり、施策が形骸化したりといった事態を招きがちです。ビジョンによって、DXの取り組みに一貫性と説得力が生まれます。

単なるシステム導入に終わらないため

「DX=IT化」と誤解されることは多く、ツールを導入しただけで終わってしまうケースも珍しくありません。

DXビジョンを策定しておけば、技術導入の目的や背景が明確になり、業務プロセスの改善や組織の意識改革など、本質的な変革へとつなげやすくなります。単なるシステム更新ではなく、業務や顧客体験の質をどう高めるかをビジョンで示すことが、DXの成果を左右します。

DXとデジタル化がどのように違うのかは、以下の記事で詳しく紹介しています。
DXとデジタル化の違いとは? 3つの視点でわかりやすく解説

全社的なDX推進の軸にするため

DXは一部の部署や担当者だけで進めるものではなく、全社横断的な取り組みが求められます。その際、共通のDXビジョンがあることで、各部門が同じ方向を向きやすくなり、施策の整合性や連携も図れます。

また、経営層から現場の社員まで、役割や目的を共有できるため、組織全体での推進力が高まります。ビジョンはDXの共通言語となり、持続的な改革を支える土台となります。

DXビジョンがない場合の失敗例

ビジョンを策定せずにDXを推進してしまうと、以下のような失敗を招く可能性があります。

  • IT導入は進んだが、現場で活用されなかった

  • 各部門でバラバラな方向に進み、成果が出なかった

  • 担当者任せで、経営層や従業員が納得していなかった

効果的なDXビジョン策定のため、このような失敗ケースも理解しておきましょう。

IT導入は進んだが、現場で活用されなかった

DXビジョンが不在のままITツールの導入を進めた結果、現場では「なぜこのツールを使うのか」が理解されず、活用されなかったというケースが多く見られます。

目的や効果が明確に共有されていないまま新しい仕組みを押し付けると、従来のやり方に戻ってしまうこともあるでしょう。導入したシステムが無用の長物と化し、期待した効率化やデータ活用には至らない結果になります。

各部門でバラバラな方向に進み、成果が出なかった

全社としてのDXビジョンがないと、各部門がそれぞれ独自の判断で取り組みを進め、結果的に方向性がバラバラになってしまうことがあります。

たとえば営業部門はCRM導入、製造部門はIoT、総務部門はペーパーレス化といったように、バラバラな投資が連携せず、全体最適からかけ離れてしまうのです。これではDXの本来の効果を得ることは難しくなります。

担当者任せで、経営層や従業員が納得していなかった

DXを現場任せにしてしまうと、経営層の関与が乏しく、従業員の納得感も得られないまま推進されることになります。このような状態では、組織内でDXが自分ごととして捉えられず、結果として施策が浸透せずに終わる可能性が高まります。

DXは経営戦略と密接に結びつくテーマであるからこそ、ビジョンによる全社の共通理解とコミットメントが不可欠です。

DXビジョンの策定ステップ

DXを組織的に成功させるには、明確なビジョンの策定が欠かせません。ただし、理想を掲げるだけでは意味がなく、現実的かつ社内外の関係者に共有されるプロセスを踏むことが重要です。ここでは、DXビジョンを構築するための5つの基本ステップをご紹介します。

  1. 現状の課題と業務構造を可視化する
  2. 経営層と現場の意見をすり合わせる
  3. 目指す姿(あるべき未来)を定義する
  4. 社員・ステークホルダーに共感される言葉で策定する
  5. フィードバックを基に改善する

1.現状の課題と業務構造を可視化する

最初のステップは、現在の業務フローや組織構造、課題を洗い出すことです。

現場でどのような非効率や属人化が起きているのか、ボトルネックを正しく把握することで、DXによる変革の優先度が見えてきます。業務の棚卸しやデータ分析、ヒアリングなどを通じて、数値と感覚の両面から「変えるべきこと」を明確にしていくことが重要です。

2.経営層と現場の意見をすり合わせる

ビジョン策定は経営層だけで決めるものではなく、現場の実情を理解した上で構築する必要があります。

経営と現場がそれぞれの立場から意見を出し合い、「理想」と「実行可能性」のバランスが取れた内容に落とし込むことが、納得感と現実性を両立させるコツです。相互理解を深めるプロセス自体が、DXの社内浸透にもつながります。

3.目指す姿(あるべき未来)を定義する

DXによって実現したい将来像を具体的に描くことが、このステップの目的です。「顧客体験をどう変えたいのか」「働き方はどう進化するべきか」などを考え、変革のゴールを全社で共有できる形に言語化します。

抽象的な表現にとどめず、組織の規模や業種に合った自社らしい未来像を描くことが求められます。

4.社員・ステークホルダーに共感される言葉で策定する

内容が良くても、伝わらなければ意味がありません。DXビジョンを誰もが理解・共感しやすい言葉で表現することも大切なステップです。専門用語や横文字に頼らず、現場社員や顧客、取引先にも伝わるような親しみある表現を選びましょう。

「自分ごと化」できるビジョンは、実行フェーズでの推進力を大きく高めます。

5.フィードバックを基に改善する

策定したビジョンは固定化されたものではなく、環境変化や社内からの意見を踏まえて見直すべきものです。定期的にフィードバックを収集し、柔軟にブラッシュアップしていく体制を整えることが、継続的なDXの原動力になります。

実行と評価を繰り返しながら、進化するビジョンを企業全体で共有していくことが理想です。

日本企業におけるDXビジョンの例

DXビジョンの策定は、すでに多くの大手企業で実践されています。ここでは、代表的な3社のビジョンとその特徴を紹介します。

業界ごとにDXの焦点や取り組み方は異なりますが、共通しているのは「顧客視点」と「全社変革」への意識です。以下の例を元に、自社のビジョン策定に活かせるヒントを探してみましょう。

三井不動産

三井不動産は「DX VISION 2030」というビジョンを発表しています。

このビジョンは、以下の3つの要素によって構成されています。

  • &Customer 〜リアル×デジタルビジネス変革〜

  • &Crew 〜AI/デジタル人材変革〜

  • &Platform 〜デジタル基盤変革〜

三井不動産グループが、DXを通じて不動産業の枠を超えた価値創出を目指していることが伝わるビジョンです。

参考:三井不動産|新グループDX方針「DX VISION 2030」を策定

富士フイルム

富士フイルムは、自社のDXビジョンとして以下を掲げています。

わたしたちは、デジタルを活用することで、一人一人が飛躍的に生産性を高め、そこから生み出される優れた製品・サービスを通じて、イノベーティブなお客さま体験の創出と社会課題の解決に貢献し続けます。

同社の、DXを通して事業変革と社会貢献を両立するという目的が明確に伝わるビジョンです。

参考:富士フイルム|DXビジョン

LIXIL

LIXILは、DXの目的(ビジョン)として以下を掲げています。

デジタル化を通じてエンドユーザーに寄り添い、従業員の主体性を高め、これまでの常識の枠を超えたメーカーへと変革

同社のビジョンは、BtoC領域でのUX向上と、BPR(業務改革)の両面にバランスよく取り組んでいる点が特徴です。

参考:LIXIL|デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組み

DX推進のお悩みはリンプレスにご相談を

DXの必要性を感じていても、「何から手をつけていいか分からない」「人材がいない」「現場がついてこない」と悩む企業は多く存在します。リンプレスでは、ビジョン策定から人材育成、業務改善まで一貫して支援し、それぞれの企業に合ったDXのかたちを共に実現していきます。まずはお気軽にご相談ください。

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リンプレスのDX人材育成プログラム

リンプレスの「DX推進人材育成プログラム」では、企業のニーズに合わせて多彩な研修カリキュラムを提供しています。

IT企画の立案力が身につく「IT企画研修」や「デザイン思考研修」などを導入いただけば、自社のDXを推進する人材の育成が可能です。また、全社的にDXスキルと意識を向上させたいというご要望には、「DXリテラシー研修」をご用意しています。

リンプレスには数多くの研修およびコンサルティングを手掛けた経験豊富な講師陣が在籍しており、デジタル・IT​​​​​に関わる全ての人と組織力の強化をサポートします。

「DX推進人材育成プログラム」について詳しくはこちら

リンプレスの研修を導入した企業の事例

株式会社ワークマンは、勘や経験ではなくデータに基づいた意思決定をする「データドリブン」な経営によって、11期連続で最高益更新という好業績を挙げています。

もともと同社では、Excel上で膨大なデータを管理していましたが、店舗の拡大にデータ管理が追いつけないという課題に直面します。そこで同社は、「Pythonで効率化できるのではないか」と考えます。一部の社員は独学でPythonの外部資格を取得しましたが、データ活用のさらなる推進とAI実装の内製化を目指し、2022年11月にリンプレスの「Pythonハンズオントレーニング(インハウス研修)」を導入いただきました。

参加者の多くがPythonを使ったことがない初心者の方という状況でしたが、レベルに合わせてカスタマイズしたテキストとカリキュラムを提供させていただき、全ての参加者がPythonの基礎を理解していただけた結果となりました。

こちらの事例について詳しくは、以下のリンクからご覧いただけます。

株式会社ワークマン様の事例|“Excel経営”の経験をもとに「現場主導のDX推進」へ

DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください。

リンプレスでは、DX推進人材を育成する研修プログラムと、DXの内製化をサポートするコンサルティングを提供しています。自社のDX推進にお困りの方はぜひご相談ください。

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まとめ

DXの本質は、技術導入だけでなく「企業文化や働き方、価値提供の在り方」を根本から見直すことにあります。そのためには、全社で共有できる明確なDXビジョンの策定が第一歩です。リンプレスでは、企業ごとの課題やステージに応じた支援を通じて、変革の一歩を力強く後押しします。DXの第一歩に迷ったら、ぜひご相談ください。

ご相談・お問い合わせ

<文/文園 香織>

株式会社リンプレス
株式会社リンプレス
2017年に株式会社リンクレアのコンサルティング事業、教育事業を分社化して誕生。企業向けDX人材育成研修やITコンサルティング、内製化支援などを手掛ける。DX推進に必要なIT・システム企画力、プロジェクトマネジメント・リーダーシップ、デザイン思考、データ分析など、様々なラインナップを提供する。講義だけではなく、ワークショップやハンズオン演習を取り入れた実践型研修に強みを持つ。これまでの累計支援企業数は4,000社以上、累計受講者数は15,000名以上に及ぶ。

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