PMBOK第7版では何が変わったのか?プロジェクトマネジメントのポイント
PMBOK第7版の主な変更点
プロジェクト管理技法として代表的な「PMBOK®」(Project Management Body of Knowledge)は、プロジェクト管理に関する知見を体系的にまとめたガイドブックであり、プロジェクトマネジメントの世界標準となっています。
PMBOKの歴史は古く、最初、1987年にPMI(Project Management Institute:米国PM協会)によって発表され、現在はPMBOKガイド第7版(2021年)が出版されています。この第7版では、第6版までのプロセスベースの考え方や構成が大きく変更されたため話題となりました。
第6版までのPMBOKは、プロジェクトマネジメントの知識体系として「10個の知識エリア」と「5つのプロセス」がまとめられていました。※詳細はこちらの記事をご覧ください
これが最新の第7版のPMBOKでは、「12の原理・原則」と「8つのプロジェクトパフォーマンス領域」に変更されました。
第6版までの多数のプロセス(手順、処理)を実施することで目的を実現する「プロセス重視」の概念から、第7版では「原理・原則の重視」へ変更されたことで、より現実的な考え方となりました。
プロジェクトマネジメントの「12の原理・原則」
PMBOK第7版では、以下の「12の原理・原則」を掲げています。
これらはプロジェクトマネジメントにおける成功のための、基本的な考え方や行動指針を示しています。
1. |
スチュワードシップ |
勤勉で、敬意を払い、面倒見の良いスチュワードであること |
---|---|---|
2. |
チーム |
協同的なプロジェクト・チーム環境を構築すること |
3. |
ステークホルダー |
ステークホルダーと効果的に関わること |
4. |
価値 |
価値に焦点を当てること |
5. |
システム思考 |
システムの相互作用を認識し、評価し、対応すること |
6. |
リーダーシップ |
リーダーシップを示すこと |
7. |
テーラリング |
状況に基づいてテーラリングをすること |
8. |
品質 |
プロセスと成果物に品質を組み込むこと |
9. |
複雑さ |
複雑さに対処すること |
10. |
リスク |
リスク対応を最適化すること |
11. |
適応力と回復力 |
適応力と回復力を持つこと |
12. |
変革 |
想定した将来の状態を達成するために変革できるようにすること |
これらの項目はプロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーのみならず、プロジェクトに関わる人々すべてに対して振る舞いの指針を提供しています。つまり、「プロジェクトの独自性に関わらず変化しないもの」と言えます。
必ずしもこれら全てを遵守することが求められているわけではありませんが、プロジェクトに向き合うための心構えと考え方の原則として理解しておくことが重要です。
プロジェクトマネジメントの「8つのプロジェクトパフォーマンス領域」
第7版では「10個の知識エリア」という概念がなくなり、「8つのプロジェクトパフォーマンス領域」という概念が登場しています。
前述の「12の原理・原則」を意識しながら、チームの観点、ステークホルダーの観点というような8つの活動領域を定め、それぞれの観点でどのようなことを考慮しなければならないかを定義しています。
「8つのプロジェクトパフォーマンス領域」は下記の通りです。
1. |
ステークホルダー |
2. |
チーム |
3. |
開発アプローチとライフサイクル |
4. |
計画 |
5. |
プロジェクトワーク |
6. |
デリバリー |
7. |
測定 |
8. |
不確実性 |
これらは独立したものではなく、相互に関連し、望ましい成果を達成するために一体となって機能していきます。
具体的にどういった活動を行うかは、組織やプロジェクト、チームやステークホルダーなど状況によって異なります。
実際に目の前のプロジェクトを成功させるためには、これらのアプローチやプロセスは「12の原理・原則」に則って、最適な型をテーラリング(=プロジェクトに適合するようにカスタマイズすること)していくことが重要です。
つまり、「プロジェクト自体の複雑化や開発手法の多様化、社会の状況等の影響を受け順次適応させていくもの」と言えます。
まとめ
変化の激しい時代の中では、これまでの常識や当たり前が通用せず、常に変革や変化への対応をしなければなりません。
多様化する環境の中で、ITプロジェクトの現場では伝統的なウォーターフォール型から、アジャイル型の開発手法が生まれました。PMBOK第7版の改訂には、急激な技術革新と市場や組織の変化に迅速に適応していく必要性が高まったことが背景にあると考えられます。
また、第6版までのPMBOKでは、プロジェクトを推進する「人」に関してあまり触れられていなかったですが、第7版ではチームワークを円滑にする・ステークホルダーと友好な関係を構築するなど「人間関係の重要性」についても言及されています。
プロジェクトの質的変化により、求められるプロジェクトマネジメントも変化している現代において、管理技法としてPMBOKを学ぶだけではなく、プロジェクトを推進するためにはどのような心構えや振る舞いをしていく必要があるのかを理解していくことも重要です。