ワークマンの事例で学ぶ「データドリブンな組織のつくり方」
データ利活用促進に向けて乗り越えるべき課題
昨今、DXの流れでデータ利活用のニーズが高まっていますが、しっかりと実行できている企業はごく一部というのが現状です。
当社でもデータ活用やAI開発等、様々な支援を行っていますが、お客様が直面する共通の課題があります。
本記事では、データ活用における課題とその解決策について紹介いたします。
データ利活用のニーズがある一方で、よくある課題として下記のようなものが挙げられます。
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スキルとリソースの不足
データ分析やデータサイエンスのスキルを持った人材が不足。新たに人材を確保するのは容易ではなく、人材育成にも時間と労力が必要となり、実務を通して知識を身に着けることも難しい。
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組織間の連携不足
組織・システム・業務プロセスのサイロ化により、データ利活用が進まない。
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ビジネスへの展開や活用ができない
データから得られた洞察をビジネスに活かす方法や、データに基づいた意思決定を促進する仕組みが不足しているため、スピード感をもった施策が実行できない。
このようにデータ利活用を推進する際には、単なるスキル・リソースの問題だけではなく、全社的な推進体制の課題も挙げられます。
「データの民主化」を成功に導くには
近年では、データ活用に関する高度な知識を持った専門人材だけではなく、全社員が自由にデータを利活用できることを意味する「データの民主化」が注目されています。
しかし、誰もが自由自在にデータを活用できる組織へと変革することは一筋縄ではいきません。
自社が現状どのフェーズにいるのかを見極め、それに応じた適切な推進体制の整備と対策を講じることが必要です。
【データ活用推進フェーズと各施策案】
- そもそもデータ利活用の意識が組織に根付いていない
比較的難易度の低い業務テーマを対象に、利用可能なデータを徹底活用して成功実績を積み上げ、データ利活用に対する社員一人ひとりの認知度や意識を上げていくことが重要です。 - ある程度データ利活用が進んでいるものの、部署ごとで取り組みがバラバラ
目標や優先順位の不一致、またコストやリソースなどの問題により、他部門とデータを連携・共有することへの抵抗が生まれる場合があります。そのため、組織全体の方向性や戦略を明確にし、コラボレーションやコミュニケーションを強化することが重要です。 - データ利活用が全社的に進んでいるものの、一部の専門人材に任せきり
組織全体でデータに対する意識を高め、全てのメンバーがデータ活用の重要性を理解し、実践していくマインドや文化を醸成していくことが重要です。また、専門人材だけでなく、異なる部署・メンバーによる混合チームなどを形成し、データ活用に関する知識やスキルを共有し、協力してプロジェクトを進めていくことが有効です。
データ利活用を自走できる組織を作るには?データ活用人材育成の支援事例(ワークマン様)
本章では実際に当社が支援させていただいたデータ活用人材育成事例をご紹介いたします。
作業服や安全靴など作業関連用品の国内最大手である株式会社ワークマン(以下、ワークマン)様は、全社を挙げた「データドリブン経営」の成功企業として多くの注目を集めています。
11期連続で最高益更新という好業績を支える背景には、現場の社員が勘や経験ではなく「データ」に基づいた意思決定をするという組織風土への変革があったと言います。
そのワークマンがデータ活用のさらなる推進、AI実装の内製化に向けた取り組みの一環として、当社の「Pythonハンズオントレーニング」や、当社データサイエンティストによる「機械学習を用いたデータ利活用のOJT」や「データ利活用アドバイザリ」を実施しました。
ワークマン様はもともと「Excel経営」の本を出版するほど、全社員がExcelを駆使し、現場で起きていることを数字とデータで可視化・分析するなど、データ利活用の意識が組織に根付いた状態でした。
ただ、最近は店舗数の急速な拡大などに伴い、分析したい内容の高度化が進み、Excelによるデータ分析に限界を感じるようになったと言います。
そこで、次のステップとしてPythonによるデータ分析を実施するなど、「データの民主化」に備えて現場自らデータ活用できる体制づくりを推進しています。
従来のデータ分析といえばデータアナリストなどの専門家が主に行う業務でしたが、様々なテクノロジーが活用できるようになった今、データ利活用は決して専門家だけのものではなくなりつつあると思います。
いわゆる「データの民主化」というものが今後進んでいくため、社員には今のうちにデータの扱いやプログラミングに慣れさせることを心掛けているんです。
これまでの「Excel経営」の経験からも、現場の社員自らが手を動かして分析・検証を行い、事実と要因をきちんと把握できるようになることが社員の成長に繋がると当社は考えています。
今後はAIの実装を実現したいと考えていますが、これも社員自らが内製できるような体制づくりを進めています。
株式会社ワークマン
データ戦略部 部長代理
長谷川 誠 様
本事例の詳細は下記ページをご覧ください。
https://www.linpress.co.jp/case/04
また、これまで解説した通り、データ利活用を自走できる組織(データの民主化)の実現は一足飛びではいきません。
こういった組織へと変革するために必要なポイントをご紹介いたします。
- ビジョンと戦略の策定:データ利活用の重要性を理解し、組織全体でのビジョンと戦略を策定します。組織がどのようにデータを活用し、ビジネス目標を達成するかを明確に定義しましょう。
- リーダーシップと文化の構築:推進リーダーがデータ利活用を推進し、その重要性を強調することが不可欠です。データ活用に対する意識・マインドを醸成し、組織全体での関与を促進します。
- データガバナンスの確立:データの適切な管理や利活用を確保するために、データガバナンスの仕組みを確立します。データの品質やセキュリティを保護し、信頼性の高いデータを提供することが重要です。
- スキルと教育の提供:組織内の全てのメンバーに対して、データ利活用に関するスキルと知識を提供します。定期的なトレーニングやワークショップを通じて、データ分析やデータ活用のスキルを普及させましょう。
- インフラとツールの整備:データ利活用を支援するためのインフラとツールを整備します。使いやすいデータ分析ツールやデータ可視化ツールを導入し、全てのメンバーがデータにアクセスし、分析を行うことができる環境を整えます。
- 成果の可視化と共有:データ活用によって得られた成果や成功事例を積極的に可視化し、全てのメンバーと共有します。成果を共有することで、他のメンバーも積極的にデータ活用に参加し、成果を上げる意欲が高まります。
これらの手順を追うことで、組織全体がデータ利活用を自走する能力を持つようになると考えています。組織内でのデータ活用の意識を高め、持続的な成果を実現するためには継続的な取り組みとリーダーシップが不可欠です。
こちらのセミナーでは、データドリブンな組織を作るためのアプローチ方法についてより詳しくご紹介いたします。
当社データサイエンティストが事例をもとに解説します。この機会にぜひご参加ください。