DXを"自分事"として捉えるためのアプローチ
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なかなか進まないDXの「X」
2023年3月、情報処理推進機構(IPA)は『DX白書2023』を公開しました。
本書によると、DXに取り組んでいる企業の割合は年々増えていることが明らかになっています。(2021年度 55.8%→2023年度 69.3%)
一方で、本書のサブタイトルに“進み始めた「デジタル」、進まない「トランスフォーメーション」”とあるように、DXの成果が出ている企業においても、アナログ・物理データのデジタル化(デジタイゼーション)や、業務の効率化による生産性の向上(デジタライゼーション)は進んでいるものの、組織横断/全体の業務プロセスのデジタル化やビジネスモデルの根本的な変革(デジタルトランスフォーメーション)には至っていないと報告されています。
つまり、「DX」のD=デジタル化は危機意識とともにその推進が進んでいる一方で、X=トランスフォーメーションは残念ながらなかなか成果に繋がっていない現状にあるということです。
この理由の一つとして、「経営層や現場の一人ひとりがDXを“自分事”として捉えられていない」ことに要因があるのではないかと考えています。
トランスフォーメーション、即ちビジネスや業務の在り方自体を「変革」していくためには、経営者をはじめ、現場で働く社員一人ひとりの積極的な協力が不可欠となります。
本記事では、DXの取り組みにおいて如何に現場を巻き込み、全社でDX推進の機運を高めていくのか、そのアプローチについて紹介していきます。
「DXは自分に関係ない」という意識を変える
とあるDX推進における取り組み調査によると、約4人に1人は「自分はDXと関係ない」と感じているとされています。
特に事業部門など現場はいまの業務で手一杯であったり、現状に問題はないから今のままでよいという声も多く、DXの取り組みも表面的なデジタル化に留まってしまっているケースもよくあるようです。
DXの手段として、AI、データサイエンス、IoT、クラウド、アジャイル、デザイン思考などのデジタル技術や新たなアプローチを取り入れていくことは重要です。
しかし、DXの目的はこれらを活用して業務やビジネスを変革することにあります。
つまり、DXの推進は一部の専門性の高い人材(DX推進人材)だけではなく、現場の業務やビジネスに精通した人材が協働していくことでスムーズに進みます。
そのため、自社に関わる全ての人が「IT部門やDX部門に丸投げ」「DXは自分には関係ない」といった意識を捨て、"DXを自分ごと化"していく必要があるのです。
まだ本格的にDXに取り組めていない企業・組織やビジネスパーソンも、将来的なDXの取り組みに備えて、DXの重要性を理解し、DXで活用されるデータや技術に関する基礎知識を身につけ、DX推進に向けたマインドセットを持つことが重要です。
DXリテラシーを身につけることには以下のような利点があります。
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組織全体の戦略的理解と共有:
経営層を含む全社員がDXリテラシーを身につけることで、組織内でのDXに対する理解と共有が深まります。経営層は戦略的な決定を下す際に、デジタル技術の可能性や影響を正しく評価できるようになります。
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迅速な意思決定と柔軟な対応:
DXリテラシーを持った社員は、デジタル技術やデータを活用して迅速かつ正確な意思決定を行うことができます。これにより、市場の変化や競合の動向に迅速に対応し、柔軟性のある組織運営が可能となります。
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イノベーションの促進:
全社員がDXリテラシーを身につけることで、組織内でのイノベーションの促進が期待できます。従業員がデジタル技術やツールに慣れることで、新しいアイデアやプロセスの導入が容易になり、組織全体の競争力を高めることができます。
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顧客満足度の向上:
DXリテラシーを持った社員は、顧客との接点をデジタル化し、より良い顧客体験を提供することができます。顧客ニーズや行動の分析を通じて、個別に適したサービスや製品を提供することが可能となります。
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組織文化の変革:
DXリテラシーが組織全体に浸透することで、組織文化も変革されます。デジタル技術を活用したコラボレーションやコミュニケーションが促進され、情報の共有や学習の文化が根付きます。
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競争力の維持と成長:
デジタル技術の進化はますます速くなっており、組織全体がDXリテラシーを身につけることが競争力を維持し、成長するための必須条件となっています。経営層を含む全社員がDXリテラシーを高めることで、組織が将来のデジタルトランスフォーメーションに対応できるようになります。
総じて、全社員がDXリテラシーを身につけることは組織の持続的な成功と成長に不可欠です。経営層から従業員までがデジタル技術に精通し、その力を最大限に活用することで、組織は市場での競争力を維持し、革新的な成果を生み出すことができます。
ただ、このようなDXに関する基礎知識の習得や、マインドセットの醸成はなかなか一筋縄ではいきません。
経営層やDX推進担当者、人事担当者などが粘り強く現場の社員に対して意識付けや教育を行っていくことが重要です。
そのための指針として、経済産業省では上記の全ビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準として「DXリテラシー標準」を公表しています。
この後の章では「DXリテラシー標準」の概要と、それをどう習得していくか解説いたします。
全ビジネスパーソンに共通して求められる「DXリテラシー」とは?
前述のDXリテラシーに関する指針として、経済産業省は「デジタルスキル標準」を策定しています。
デジタルスキル標準は以下の2つの標準で構成されています
- DXリテラシー標準
対象:全てのビジネスパーソン
概要:DXに関するリテラシーとして全てのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルを定義
- DX推進スキル標準
対象:DXを推進する人材
概要:DX推進に必要な人材類型(ビジネスアーキテクト/デザイナー/データサイエンティスト/ソフトウェアエンジニア/サイバーセキュリティ)について類型ごとに、ロール及び必要なスキルを定義
このデジタルスキル標準を活用していくことで、自社のDXを推進していくためにどのようなスキルを持った人材が必要か、全社的な底上げや人材育成施策を検討する上で必要な仕組みや施策の実行を後押しできるとされています。
今回は、このうち全ビジネスパーソンに共通して必要なリテラシーを定義した「DXリテラシー標準」について詳しく見ていきます。
DXリテラシー標準の全体像
DXリテラシー標準は大きく以下の4つで構成されています。
- 「Why」DXの背景
- 「What」DXで活用されるデータ・技術
- 「How」データ・技術の利活用
- 「マインド・スタンス」社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要な意識・姿勢・行動
「DXリテラシー標準」の狙いには“ビジネスパーソン一人ひとりがDXに関するリテラシーを身につけることで、DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになる”とあります。
DXがなぜ重要か、DXで何が変わるのか、どのようなデジタル技術があるのかを知る(アンテナを広げる)ことで、現場自ら変革に向けて行動できるようになり、さらにそういった人材が増えることでDXを加速することができるのではないでしょうか。
経営層から一方的に「DXを推進せよ」といったメッセージだけ出しても、現場に意欲がなければ動きません。
また、現場に意欲があっても、経営層の理解がなければ動くことができません。
DXの取り組みを進めていく上では、トップと現場が協力し合い、各現場同士も協力し合うことが必要です。
そのためにも、経営層をはじめとした全社員が「DXを自分事」として捉え、DXリテラシーへの理解を深めていくことが重要であると我々は考えております。
DXリテラシーについて詳しく知りたい方のために
ここまでDXリテラシーについて解説してきましたが、「Why」「What」「How」「マインド・スタンス」の4つの分類の詳しい内容や、これらを具体的にどのように身につけていくかは、こちらのウェビナーで詳しくご紹介しています。
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