
製造業のDX事例7選|中小企業・大企業での取り組みや成功のポイントを徹底解説
競争のグローバル化が進む製造業において、DXは重要な課題となっています。自社のDXを成功させるためには、他社のDX事例を参考にすることがおすすめです。
本記事では、トヨタ自動車やダイキン工業など、製造業のDX事例7選を紹介します。
DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください。
リンプレスでは、DX推進人材を育成する研修プログラムと、DXの内製化をサポートするコンサルティングを提供しています。自社のDX推進にお困りの方はぜひご相談ください。
製造業がDXに取り組む背景と必要性
製造業がDXに取り組むべき背景は、次の3点です。
人手不足
競争環境の変化
「2025年の崖」問題
まずは、製造業がDXに取り組むべき背景を確認していきましょう。
人手不足の深刻化が見込まれている
少子高齢化に伴って、製造業では人手不足が予想されています。
経済産業省が公表した「2024年版ものづくり白書」によると、2002年には384万人だった製造業の若年就業者数(34歳以下)は、2023年には259万人へと減少しています。全年齢に占める若年層の割合も、同じ期間で31.4%から25.2%へと低下しました。
全体の就業者数はほぼ横ばいですが、高齢就業者数が増加傾向にあることから、深刻な人手不足が現実味を帯びつつあるのです。
グローバルな競争が激化している
アジアをはじめとする新興国メーカーの台頭などを背景に、製造業ではグローバル競争が一段と激しくなっています。海外メーカーは価格競争力が高い傾向にあり、人件費の高い日本はコスト面で不利になりがちです。
グローバルな競争力を維持するためには、デジタル技術を活用した生産性向上や、データに基づく意思決定が欠かせません。生産工程の省人化や、需要変動に合わせた柔軟な生産計画の策定など、DXによる業務改革が今まで以上に求められています。
「2025年の崖」問題が生じている
「2025年の崖」も無視できない課題です。2025年の崖とは、2025年ごろには多くの日本企業でシステムの老朽化が進み、社会全体の生産性へ大きな影響を及ぼすという問題です。
経済産業省が公表した調査によると、日本企業の約8割がレガシーシステムを抱えており、約7割は「レガシーシステムがDX推進の足かせである」と回答しています。レガシーシステムの刷新を先送りにすると、ますますシステム維持や刷新のコストは大きくなりかねません。
DXの一環として、基幹システムの再整備を進めることが急務となっています。
製造業のDX事例7選
ここからは、製造業における以下の7社のDX事例を紹介します。
トヨタ自動車株式会社
ダイキン工業株式会社
旭鉄工株式会社
三菱電機株式会社
株式会社日立製作所
株式会社山本金属製作所
株式会社樋口製作所
各社がどのような課題をどのようなデジタル技術で克服したのか、ぜひ参考にしてみてください。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車は、「工場IoT」と呼ばれる全社共通のデジタル基盤を構築し、ボトムアップ型でデジタル変革を進めています。
同社では、3D CADデータや試作時の特性データなど、既存のデジタル情報を一元管理する「Lumada」というシステムを導入し、工場と開発部門など部署間の情報共有を強化しました。複数の工程にまたがるデータを分析し、部分最適から全体最適へとシフトしている点も特徴です。
また、社内の有志メンバーで「D-ROOM」という支援組織を結成し、現場社員からのデジタル化の相談に応じる体制も構築しました。
参考:トヨタと日立がIoTプラットフォームを活用した高効率生産モデル構築に向けて協創開始|トヨタ自動車, AIやデジタルの挑戦を生み続けるトヨタのボトムアップ組織「D-ROOM」とは?
ダイキン工業株式会社
ダイキン工業は、社内大学「ダイキン情報技術大学(DICT)」を設立し、デジタル人材の育成を起点としたDXを推進しています。
同社は2017年にDICTを立ち上げ、大阪大学とも連携しながら新入社員約100名を毎年2年間学習に専念させる育成体制を構築しました。情報系の技術者が全社員の1%ほどしかいなかった状況から、AI・IoT人材の社内育成に大きく舵を切った取り組みです。
DICTは新入社員だけでなく経営幹部を含む全社員を対象に拡張されており、2025年度末には社内のデジタル人材を2,000人に増やす計画が打ち出されています。
旭鉄工株式会社
旭鉄工は、自動車部品メーカーでありながら、自社開発したIoTシステムで生産性を大幅に向上させています。
同社は2015年から2018年にかけてIoTを活用した改善活動を展開し、合計100に及ぶ製造ラインで平均43%、最大で280%の生産性向上を実現しました。これは、生産個数や停止時間、サイクルタイムを自動収集する仕組みを構築し、データに基づく改善活動を加速させた成果です。
また、同社では「人には付加価値の高い仕事を」という合言葉のもと、機械やシステムに任せられる業務を徹底的に自動化し、人は創造的な改善業務に集中することに成功しました。
三菱電機株式会社
三菱電機は、2003年から展開しているFA-IT統合ソリューション「e-F@ctory」によって、製造業のデジタル変革を支援しています。
e-F@ctoryは、生産現場とITシステム、それらをつなぐエッジコンピューティングの3階層で構成されています。開発・生産・保守の全般にわたるトータルコストを削減し、生産性向上や品質向上を実現できる点が特徴です。
同社の名古屋製作所・福山製作所では実際にe-F@ctoryのモデル工場として同製品を導入し、コスト削減と付加価値の向上に成功しました。
株式会社日立製作所
日立製作所では、「情報の集約」から「高度な情報の活用」へのシフトをキーワードに掲げ、全社的なDXに取り組んでいます。
具体的な柱は、次の4点です。
データ利活用と意思決定支援
業務プロセスの効率化
生成AIの活用
DX加速に向けた取り組み
このうちデータ利活用では、営業や製造、調達まで全部門で一貫したデータ基盤を整備し、情報の戦略的な共有を進めています。生成AIでは、AIアシスタントである「Effibot(えふぃぼ)」をグループ展開し、社員が安心してAIを活用できる体制を整えました。
株式会社山本金属製作所
山本金属製作所は、大阪府に本社を置く機械加工企業です。IoTを活用した工作機械の知能化に取り組み、ベテランの持つノウハウの継承に成功しています。
具体的には、切削工具やツールピンの先端付近にセンサを内蔵することで、工具刃先の温度や振動を測定する仕組みを開発しました。加工に必要な動作を数値化することで、これまで経験と勘に頼っていた切削加工を、データに基づいて自律的に制御できる技術を確立しています。
デジタル技術によって、ノウハウの属人化からの脱却に成功した事例です。
株式会社樋口製作所
樋口製作所は、岐阜県各務原市に拠点を置く金属プレス加工メーカーで、経済産業省の「DXセレクション」優良事例に東海エリアから唯一選定された中小企業です。
同社は2018年からIoTの取り組みを開始し、2019年にはDXの取り組みを本格化させました。2020年には社内各部署で扱うデータを社内プラットフォームに集約し、集計・分析されたデータを全社で共有できるダッシュボードを開発しています。
社内のDX推進だけでなく、他の製造業の困りごとを解決するサービス展開に取り組んでいる点も高く評価されています。
事例からわかる製造業におけるDXのポイント
製造業のDXを成功させるためのポイントは、次の3点です。
目的とゴールを経営レベルで明確にする
スモールスタートで成功体験を積み上げる
データ活用の仕組みを全社横断で整備する
ここでは、事例から学べる3つのDX推進のポイントを解説します。自社のDX戦略を考えるうえで、ぜひ参考にしてください。
目的とゴールを経営レベルで明確にする
製造業のDXを成功させるためには、経営レベルでDXの目的とゴールを明確に定めることが重要です。
成功している企業の多くは、経営層が自らDXの方針を打ち出し、企業全体の方向性として位置付けています。例えばダイキン工業は経営計画で、デジタル変革を重要テーマに据えました。トヨタ自動車でも、経営層と現場が一体となってDXを進める仕組みが確立されています。
DXは業務効率化やコスト削減といった短期的な視点だけでなく、ビジネスモデルや企業文化の変革といった長期的な視点で行うべき取り組みです。そのためには、経営層が目的を明文化し、積極的に旗振り役となる必要があります。
スモールスタートで成功体験を積み上げる
DXは大規模な投資から始める必要はなく、小さな成功体験を積み上げて全社に広げる方法が有効です。
旭鉄工の事例では、まず一部の生産ラインでIoTによる稼働モニタリングを導入し、一定の成果を出してから他のラインへ横展開していきました。最初から全社規模で取り組む必要はなく、小さな取り組みから実験的にはじめた上で、ノウハウを蓄積しながら横展開していくことがDXを成功させる近道です。
データ活用の仕組みを全社横断で整備する
DXを成功させるためには、データ活用の仕組みを全社横断で整備することも必要です。
樋口製作所の事例では、各部署で扱うデータを社内プラットフォームに集約し、必要な情報を全社で共有することに成功しました。トヨタ自動車でも、システム上で加工データや実験データを共有するなど、データ共有基盤を整えることに注力しています。
各部門が同じデータを見ながら判断できる環境を整えることで、組織全体の足並みが揃い、デジタル化がスムーズに進むのです。
製造業のDX推進にありがちな失敗例
製造業のDXは多くの企業が取り組んでいるものの、思うように成果が出ないケースも少なくありません。DXが失敗する際にはいくつかのパターンがあるため、これらを事前に把握しておくことが重要です。
製造業のDXでよくある4つの失敗例について解説します。
IT人材・DX人材が社内に不足している
最もありがちなのが、ITやデジタルの知見を持つ人材が社内に不足しているという課題です。
特に中小企業では、専任のIT部門を持たない企業も多いです。こうした企業では、ツールを導入しても運用できない、あるいはデータを分析する人材がいないために成果につながらないといったケースが見られます。
社内人材の育成には時間がかかるため、計画的なリスキリングや外部人材の活用が必要です。
日本国内におけるDX人材不足については、以下の記事で詳しく紹介しています。
DX人材不足の現状と課題|DX成功のための人材育成方法とは?
レガシーシステムが刷新できず足かせになる
前述した通り、基幹システムがDXの足かせになるケースも多く見られます。
長年使い続けているシステムは、老朽化やブラックボックス化が進んでいます。新しいデジタル技術を導入しようとしても、既存システムとの整合性が取れず、思うように活用できないといった状況に陥りがちです。
レガシーシステムの刷新はつい後回しにしがちですが、放置するほど刷新の難易度は高まります。「2025年の崖」を克服するためにも、積極的に基幹システムの見直しを進めましょう。
目的が曖昧なままツール導入が先行する
DXに取り組む企業の中には、目的が明確でないままツール導入を進めてしまうケースも見られます。
「他社が導入しているから」「流行っているから」といった理由でツールを選ぶと、自社の課題解決につながらず、思ったような効果が得られないといった結果になりがちです。AIやIoTといった技術はあくまで手段であるため、まずは「何を解決したいのか」という目的を明確にする必要があります。
DXを始める前に、自社の課題を整理し、それを解決するために必要な仕組みを定義することが重要です。目的が定まれば、ツール選定の判断基準も明確になり、導入もスムーズに進みやすくなります。
現場の巻き込みが不十分で定着しない
経営層がDXの方針を打ち出しても、現場の巻き込みが不十分だと定着せずに終わってしまいます。「せっかく導入したシステムが、形骸化してしまってほとんど使われていない」というのはよくある失敗パターンです。
現場が納得感を持ってDXに取り組むには、経営層が変革の意義を丁寧に伝え、現場の声を反映した仕組みづくりを行うことが欠かせません。トヨタ自動車のように、トップダウンとボトムアップの双方向の取り組みを促すことも有効です。
製造業DXを成功させるには外部の専門家の支援が有効
ここまで紹介したような失敗例を防ぎ、製造業のDXを着実に成果につなげるためには、外部の専門家による支援が有効です。
社内だけでDXを推進しようとすると、人材不足やノウハウの蓄積不足といった壁に直面することも少なくありません。DX人材の育成支援やコンサルティングを行う専門企業のサポートを受けることで、自社に合ったDX戦略の策定から実行までを確実に進めることができるのです。
製造業DXの伴走支援なら「リンプレス」
製造業のDX推進に課題を感じている企業は、リンプレスにご相談ください。
リンプレスは、累計4,000社以上の支援実績を持つDX人材育成・コンサルティング企業として、製造業を含む幅広い業界のDX推進をサポートしています。単なるテンプレート型の研修の実施だけではなく、企業の課題に応じた戦略策定から人材育成、業務改革までを一貫して支援している点が特徴です。
製造業特有の課題である属人化やノウハウの継承、生産性向上などのテーマに対しても、現場の状況に合わせてカスタマイズ可能なプログラムをご用意しています。「何から始めればよいかわからない」「DX人材が社内にいない」という企業でも、伴走型のサポートを通じて、DX推進の体制を整えることが可能です。
DX推進でお悩みの場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
リンプレスのDX人材育成プログラムの特徴
リンプレスのDX人材育成プログラムは、ITリテラシーからDX推進リーダー育成までを幅広くカバーしている点が特徴です。
代表的なプログラムとして、全社員のDXリテラシーを底上げする「DXリテラシー研修」、DX推進の中核を担うリーダーを育成する「DX推進リーダー育成プログラム(LDP)」などがあります。業界や企業の特性に応じて研修内容をカスタマイズできるため、製造業の現場で求められるスキルを効果的に習得することが可能です。
まとめ
製造業のDXは、人手不足やグローバル競争の激化といった課題に対応するために欠かせない取り組みです。
本記事では、トヨタ自動車やダイキン工業、旭鉄工をはじめとする計7社のDX事例を紹介しました。各社の取り組みを分析すると、経営層と現場の連携やスモールスタート、データ活用の仕組みづくりなど、製造業のDXにおけるポイントが見えてきます。
自社のDXを着実に成果につなげるには、外部の専門家による伴走支援を活用することも有効な選択肢の一つです。リンプレスでは、製造業のDX推進と人材育成を一貫してサポートしていますので、お困りの方はお気軽にご相談ください。
<文/文園 香織>











