
IT人材を育成する方法|人材不足解消へ導く実践的なアプローチとは?
IT人材の不足が深刻化する中、多くの企業が自社での育成に力を入れ始めています。DX推進や業務効率化のためにITスキルを持つ人材は不可欠ですが、市場では即戦力となる人材の確保が難しく、自社で育成する重要性が増しています。
しかし、効果的な育成には適切な手順と施策が必要です。本記事では、IT人材育成の現状や企業が抱える課題を整理し、自社で育成するメリットや具体的な施策を解説します。
DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください。
リンプレスでは、DX推進人材を育成する研修プログラムと、DXの内製化をサポートするコンサルティングを提供しています。自社のDX推進にお困りの方はぜひご相談ください。
IT人材育成の現状

IT人材育成は、企業や社会全体が直面する重要課題の一つです。近年、デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、ITスキルを持つ人材の需要は増加しています。しかし、それに対する供給が追いついておらず、人材不足が深刻な状況となっています。
この課題を解決するため、企業では研修プログラムの導入やOJTが行われていますが、即戦力となる人材の育成には時間がかかることが課題です。また、教育機関でもプログラミング教育やデジタルスキル向上に向けたカリキュラムの強化が進んでいますが、産業界の需要に合った人材を輩出するまでのギャップが指摘されています。
深刻なIT人材不足
現在、日本をはじめとした多くの国で、IT人材の不足が深刻化しています。デジタル化やDXの進展に伴い、ITスキルを持つ人材の需要は急増していますが、供給が追いついていない状況です。経済産業省の調査によると、2030年までに日本のIT人材は約79万人不足すると予測されています。
この背景には、IT分野の専門教育の遅れや、急速に変化する技術トレンドへの対応が難しい点が挙げられます。特に、中小企業では優秀なIT人材を確保するのが困難で、事業のデジタル化が進まない一因となっています。このような人材不足を放置すると、競争力の低下や経済成長の停滞につながる可能性があります。企業や教育機関が連携し、実践的なスキルを持つ人材を育成するための取り組みが、今後ますます重要になるでしょう。
IT人材を自社で育成するメリットとは?
IT人材は採用で確保することもできますが、自社で育成することによって、長期的に見て多くのメリットをもたらします。IT人材を自社で育成するメリットを以下から詳しく紹介します。
高い定着率が見込める
自社でIT人材を育成することで、社員の定着率が向上する傾向があります。
外部採用者と異なり、既存社員は企業文化やチームメンバーへの理解度が高く、育成プロセスを通じてさらに帰属意識が深まります。特に、自社独自のスキルアップ支援やキャリアパスを提示することで、社員のモチベーションが向上し、長期的な雇用関係が築きやすくなります。これにより、離職率が低下し、安定した人材基盤を構築することが可能です。
自社に最適なDX・システム構築をできる人材が育つ
外部から採用した人材が持つスキルは汎用的なものが多い一方で、自社の業務プロセスや目指すDX戦略に完全には適合しないこともあります。しかし、自社で育成した人材であれば、自社のビジネスモデルや課題に特化したスキルを習得させることができます。
その結果、自社に最適化されたDX推進やシステム構築が可能となり、プロジェクトの成功率が高まります。さらに、育成を通じて新たな提案が生まれることもあり、革新的な解決策の創出にもつながります。
企業が抱えるIT人材育成の課題
多くの企業がIT人材育成に取り組む中で、いくつかの課題が浮き彫りになっています。
まず、IT技術は進化のスピードが速く、新しいスキルや知識を学び続けることが求められますが、現場では日々の業務に追われ、学ぶ時間を確保するのが難しいという点が挙げられます。また、社員ごとにスキルや理解度が異なるため、一律の教育プログラムでは効果が出にくいという課題もあります。続いて、専門的な知識を教えるための社内講師や教材の準備が整っておらず、育成体制そのものが不十分であるケースも少なくありません。
これらの課題を乗り越えるには、長期的な視点での育成計画と、企業全体での教育文化の醸成、外部研修機関の有効活用などが求められます。
IT人材を育成する手順
IT人材育成を成功させるには、計画的なアプローチが必要です。場当たり的な研修やスキル習得では、業務に活かせる人材を育成するのは困難です。まずは育成の目的を明確にし、その後、適切な人材を選定し、段階的に学習を進めることが重要になります。また、学習したスキルを実務で活かせる環境を整え、継続的なスキルアップを支援する仕組みを作ることも欠かせません。
以下のステップに沿って、効率的なIT人材育成を進めていきましょう。
1.IT人材育成のゴール策定
まず最初に、IT人材育成のゴールを明確にしましょう。
「どのようなスキルを持つIT人材を育てたいのか」「育成後にどの業務を担ってもらうのか」といった目的を具体的に定めます。
例えば、社内のDX推進を担うリーダーを育成するのか、それとも基礎的なITリテラシーを強化するのかでは、必要な学習内容が大きく異なります。また、技術的なスキルだけでなく、問題解決力やプロジェクトマネジメント能力など、業務遂行に不可欠なスキルも視野に入れましょう。明確なゴールがあれば、適切な学習プランの設計がしやすくなり、育成の方向性がブレにくくなります。
2.育成対象の選出
育成の目的が決まったら、次に対象となる社員を選出します。すべての社員に一律のIT教育を施すのではなく、業務内容や個々の適性を考慮して、育成対象を決めましょう。
例えば、新入社員には基礎的なITリテラシー研修を行い、技術職の社員にはプログラミングやクラウド技術などの専門スキルを学ばせるといった方法が挙げられます。また、将来的にIT部門のリーダーやDX推進担当者となる可能性のある社員をピックアップし、重点的に育成するのも有効な方法です。
社内での適性評価や自己申告制度を活用し、モチベーションの高い社員を選ぶことで、育成の効果を最大化できます。
3.IT人材として求められるスキルの学習
IT人材を育成する際には、単に技術的なスキルを習得させるだけではなく、仕事を進める上で必要な考え方や企画力も身につけさせることが重要です。特に、変化の激しいIT業界では、学び続ける姿勢や問題解決能力が求められます。
ここでは、IT人材に身につけさせるべき主なスキルを3つの観点から解説します。
IT技術
IT人材としての基礎となるのは、プログラミングやクラウド技術、データ分析といったIT技術です。エンジニアであればPythonやJavaなどのプログラミング言語を習得し、システム構築やアプリ開発ができることが求められます。ITインフラに関わる場合は、クラウドサービス(AWSやAzure)、ネットワーク、セキュリティといった分野の知識が不可欠です。
ITを活用するすべての職種において、基本的なデジタルリテラシーやデータの取り扱い方を学ぶことが、業務の効率化やDX推進の基盤となります。
マインドセット
IT人材にとって、技術力と同様に重要なのが「学び続ける姿勢」です。
IT技術は日々進化しており、特定のスキルを習得しただけではすぐに陳腐化してしまいます。そのため、新しい技術に対する好奇心や、継続的に学ぶ意欲を持つことが必要です。また、トラブルや課題に直面した際に、解決策を模索する問題解決能力や、他部門と協力してプロジェクトを推進するコミュニケーション力も欠かせません。
こうしたマインドセットを醸成するには、成功体験を積ませたり、学習を奨励する企業文化を作ることが有効です。
企画力・デザイン思考力
IT人材には、単にシステムを開発するだけでなく、ビジネスの課題を解決するための企画力やデザイン思考力も求められます。
特に、DXを推進する立場のIT人材は、ユーザー視点でのサービス設計や、業務プロセスの改善を考える力が必要になります。デザイン思考とは、ユーザーの課題を深く理解し、創造的な解決策を生み出すアプローチです。エンジニアやデータアナリストであっても、ユーザーのニーズを理解し、実用的なシステムやアプリを設計するスキルが求められます。
このような能力を高めるためには、ワークショップや実践的なプロジェクトを通じて、試行錯誤しながら学べる環境を整えることが重要です。
4.実務経験の蓄積
IT人材の育成において、座学や研修だけではなく、実際の業務を通じた経験の蓄積が欠かせません。知識を学ぶだけでは実践的なスキルは身につかず、現場での課題解決力も養えないためです。OJT(On-the-Job Training)を取り入れ、学んだスキルをすぐに業務で活用できる環境を整えましょう。
ITエンジニアの場合は、小規模な社内システム開発や既存システムの改善を担当させることで、実務の流れを理解しながらスキルを磨くことができます。また、データ分析を学んだ社員には、社内のデータを活用したレポート作成や予測分析を任せることで、実践的な知識を身につけさせることが可能です。
こうした経験の積み重ねが、即戦力としてのIT人材を育てる鍵となります。
5.育成効果の測定
IT人材育成が成功しているかを判断するには、効果測定を必ず実施しましょう。
どれだけ研修や実務経験を積んでも、実際の業務に活かせなければ意味がありません。そのため、定期的に育成プログラムの成果を評価し、必要に応じて改善することが重要です。
具体的な評価方法としては、スキルチェックテストや資格取得の達成度、業務パフォーマンスの変化などを指標とすることが考えられます。また、上司やチームメンバーからのフィードバックを収集し、現場での活躍度を測ることも有効です。加えて、育成対象者自身の自己評価やキャリア意識の変化を確認することで、モチベーション維持にもつなげられます。
こうしたデータをもとに、育成内容を柔軟に調整し、より効果的なプログラムへと進化させることで、企業全体のITスキル向上につなげることができます。
IT人材を育成するための具体的な施策
企業がIT人材を効果的に育成するには、戦略的な施策を組み合わせることが重要です。社内外での教育プログラムやスキル向上の仕組みを整備することで、従業員が学びやすい環境を提供できます。
以下では、具体的な施策を解説します。
社内研修プログラムの構築
IT人材を育成するための第一歩として、社内で独自の研修プログラムを構築することが挙げられます。プログラム内容は、基礎的なITスキルから、企業独自のシステムやプロセスに特化した内容まで幅広くカバーする必要があります。また、動画やオンライン学習ツールを活用することで、学びの効率を高めることが可能です。
定期的に内容を見直し、最新の技術やトレンドを反映させることで、実践的なスキルを提供できます。
OJT(On-the-Job Training)の活用
OJTは、業務を通じて実践的なスキルを習得する効果的な方法です。社員が日々の業務の中で、先輩社員やリーダーの指導を受けながら学ぶことで、業務スキルを迅速に習得できます。
特にIT分野では、座学だけでは理解しにくい部分が多いため、現場での実務経験が重要です。OJTを計画的に実施し、進捗を定期的に確認することで、より効果的な育成が可能となります。
メンター制度の導入
メンター制度は、経験豊富な社員が新入社員や若手社員の指導役となり、スキルや知識を共有する仕組みです。IT人材育成においては、技術的な指導だけでなく、キャリア形成のアドバイスやモチベーション向上にも寄与します。
定期的な面談やフィードバックを行うことで、育成対象者が抱える課題や不安を解消しやすくなり、学習効果が高まります。
資格取得の支援
社員のモチベーション向上や専門スキルの証明として、資格取得を支援することも重要です。基本情報技術者試験やAWS認定資格など、IT分野における資格を取得することで、社員の知識が証明されるだけでなく、業務にも活かしやすくなります。
企業側が資格取得費用を補助したり、試験対策の勉強会を開催したりすることで、社員が積極的に取り組める環境を提供しましょう。
外部研修サービスの活用
外部の研修サービスを活用することも効果的な施策の一つです。社内では提供が難しい高度な技術や専門的な知識を学ぶためには、専門機関のトレーニングプログラムを利用するのが有効です。
また、最新の技術トレンドに対応する研修や、ビジネス全体を視野に入れたマネジメントスキル向上プログラムなども選択肢に入れることで、社員のスキルを幅広く高めることが可能です。外部研修を通じて、社内では得られない視点や知識を吸収し、企業の競争力を高められるでしょう。
IT人材を育成するならリンプレス
IT関連の技術だけではなく、ビジネススキルや企画力も持つIT人材を育成するなら、リンプレスの研修の導入がおすすめです。
リンプレスでは、IT基礎トレーニングから、IT企画力を身につける上流工程まで、幅広い研修プログラムを提供しています。また、研修プログラムだけではなくDXの内製化を支援するコンサルティングサービスも行っているため、IT人材不足によるDX課題をまとめて解決いたします。
リンプレスの研修サービスでIT人材を育成した事例
リンプレスの研修サービスを実際に導入し、IT人材育成を実施した企業の事例を紹介します。
ワークマン株式会社
株式会社ワークマンは、勘や経験ではなくデータに基づいた意思決定をする「データドリブン」な経営によって、11期連続で最高益更新という好業績を挙げています。
もともと同社では、Excel上で膨大なデータを管理していましたが、店舗の拡大などから限界を感じ、「Pythonで効率化できるのではないか」と考えます。一部の社員は独学でPythonの外部資格を取得しましたが、データ活用のさらなる推進とAI実装の内製化を目指し、2022年11月にリンプレスの「Pythonハンズオントレーニング(インハウス研修)」を導入いただきました。
参加者の多くがPythonを使ったことがない初心者の方という状況でしたが、レベルに合わせてカスタマイズしたテキストとカリキュラムを提供させていただき、全ての参加者がPythonの基礎を理解していただけた結果となりました。
こちらの事例について詳しくは、以下のリンクからご覧いただけます。
株式会社ワークマン様の事例_“Excel経営”の経験をもとに「現場主導のDX推進」へ
コープデリ生活協同組合連合会
コープデリ生活協同組合連合会では、情報システム部門の世代交代のため「チャレンジ公募」という仕組みを使って、情シス部への異動希望者を募集しています。実際に異動したIT未経験者に対して、IT・情報システムの基礎やITプロジェクトの全体像を理解してもらうため、リンプレスの「Linpress Academy」を導入いただきました。
2週間に1回というペースでの受講において、参加者からは「毎週受講したい」「異動してすぐに、この研修を受講できて良かった」というお声をいただいております。また、他社の受講者とともに学べる環境によって、良い刺激をもらったという評価もいただきました。
こちらの事例について詳しくは、以下のリンクからご覧いただけます。
「実務に直結する経験と学びを得ることができた」 コンサル・研修を通じて、コープデリ連合会の新たな開発標準プロセス策定と人材育成に貢献
DX研修を実際に行った企業の事例を知りたい方は「導入事例:第一三共株式会社様」「導入事例:株式会社八十二銀行様」「導入事例:株式会社ワークマン様」こちらのページをご覧ください。
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まとめ
IT人材の育成は、企業の競争力を高め、DXを推進する上で欠かせない課題です。現在、IT人材不足が深刻化しており、企業が自社で育成することで、高い定着率や最適なシステム構築を実現できます。しかし、企業には育成の時間確保や効果測定などの課題も存在します。そのため、明確なゴール策定や育成対象の選定を行い、IT技術・マインドセット・企画力をバランスよく習得させることが重要です。さらに、OJTやメンター制度、資格取得支援などの施策を組み合わせることで、実践的なスキルを養えます。企業は長期的な視点で育成プランを構築し、継続的な学習環境を提供することで、優秀なIT人材の確保と育成を実現できるでしょう。
IT人材育成についてお悩みの方は、ぜひリンプレスにご相談ください。
<文/文園 香織>