DXの"実践"に役立つスキルが身につく、PBL(課題解決型研修)とは?
現代のビジネス環境は急速に変化しており、DXに代表されるような複雑な問題に対して、迅速かつ効果的に対応できる人材が求められるようになっています。
こういった複雑な問題や課題の解決には単なる"知識"の習得だけでは不十分です。
「課題発見能力」や「論理的思考力」「コミュニケーション能力」といった、より実践的なスキルを身につけることが重要であり、近年ではこういった実践力を身につけるために「PBL(課題解決型研修)」という教育手法が注目されています。
本記事では、PBLの定義や従来型の座学研修との違い、PBLの実施例などをご紹介いたします。
目次[非表示]
- 1.PBL(課題解決型研修)とは?従来の座学研修との違い
- 2.いま、PBL(課題解決型研修)が重要視されている理由
- 3.PBL(課題解決型研修)の具体例
- 3.1.①企業内研修
- 3.2.②教育機関
- 3.3.③デジタル分野
- 3.4.④社会貢献プロジェクト
PBL(課題解決型研修)とは?従来の座学研修との違い
PBL(Project-Based Learning:課題解決型研修)は、参加者が実際の課題やプロジェクトに取り組むことで学びを深める教育手法です。
従来行われてきた座学中心のインプット型研修は理論や基礎知識の習得には有効であるものの、実際の問題に対処する能力が十分に養われにくいという側面があります。
一方、PBLは参加者自身が直面している実際の問題や課題に取り組むことで、「問題解決力」「コミュニケーション能力」「クリティカルシンキング(批判的思考)」など実践的なスキルを習得できることに加えて、プロジェクトの成果物を学習の成果としてアウトプットすることができることが特徴です。
実践的な課題解決を通じて、知識を応用する能力を高めることができるため、従来のインプット型教育の限界を補完する手法として評価されています。
従来型の座学研修とPBLの違いを整理すると以下のようになります。
PBLでは学習者が中心となり、実際に起きている問題や課題に取り組むことから、より実践的なスキルを効果的に習得できることが最大の利点となります。
ただ、PBLだけに偏って取り組めばよいということではありません。
座学研修によって理論や基礎知識を身につけた後で、PBLによって実際の問題や課題に取り組むことで、理論と実践を結び付ける能力が養われることが期待されます。
いま、PBL(課題解決型研修)が重要視されている理由
前述の通り、DX関連プロジェクトは従来型のITプロジェクトとは違い、プロジェクトの規模や関わるステークホルダ、活用するテクノロジーが複雑化・高度化しています。
そういったプロジェクトを推進していく上では、プロジェクトマネジメントやデータサイエンス等の理論や基礎知識に加え、「問題発見能力」「課題解決能力」「コミュニケーション能力」といった実践的なスキルが求められます。
また近頃、企業は「DXによる具体的な成果(アウトプット)」が求められるフェーズへと徐々に移行しています。
“人材育成”はDX実現のための一つの手段として捉え、その先の“DXの実践“を見据えた取り組みに着手することが重要といえます。
しかし、こういった学びを活かす実践機会までを提供できている企業の数は多くありません。
とある調査によれば、日本企業では研修の機会は多いものの、その先の“実践の場が少ない“ということが明らかになっています。
こういった背景もあり、PBLは社員が現場で直ちに役立つスキルを習得するための方法として重要視されています。
PBL(課題解決型研修)の具体例
PBLの題材となりえるものは多岐に渡ります。
例えば「業務プロセスの自動化(RPA導入)」をテーマとしたPBLであれば、参加者が実際の業務プロセスにおける課題や問題点を可視化・分析し、効率化のための自動化ソリューションを設計~実装します。
その他にも、PBLは多岐にわたる業界や分野で行われています。
以下に、企業や教育機関におけるPBLの具体的な実施例をいくつか紹介します。
①企業内研修
新製品開発プロジェクト
目的:新しい製品のコンセプトから市場投入までのプロセスを学ぶ。
- プロジェクト内容:チームを組んで市場調査を行い、顧客ニーズに基づいた製品アイデアを考案。試作品を作成し、マーケティング戦略を立案。最終的に経営陣にプレゼンテーションを行う。
- 成果物:新製品の試作品、マーケティングプラン、ビジネスプラン。
業務プロセス改善プロジェクト
- 目的:業務の効率化やコスト削減を図るためのプロセス改善を学ぶ。
- プロジェクト内容:現在の業務プロセスを分析し、ボトルネックや改善点を特定。新しいプロセスを設計し、実行プランを策定。改善後の成果を測定し、報告書を作成。
- 成果物:業務プロセス改善の提案書、実行計画、成果報告書。
データ利活用推進プロジェクト(弊社事例)
- 目的:生産性向上や新たなビジネス価値創出に向けたデータ利活用の推進。
- プロジェクト内容:データ利活用の一連の流れを学習、実テーマに対して有効性の検証を実施。
- 成果物:AIモデル構築および運用、実行計画、成果報告書。
②教育機関
学校での地域課題解決プロジェクト
- 目的:地域社会の問題を解決するためのアイデアを生徒が提案する。
- プロジェクト内容:地域の問題を調査し、解決策を考案。地元住民や専門家と協力しながら、プロジェクトを実施。結果を発表し、フィードバックを受ける。
- 成果物:課題解決の提案書、プロジェクト実行報告、プレゼンテーション。
STEM教育プロジェクト
- 目的:科学、技術、工学、数学(STEM)の知識を実践的に学ぶ。
- プロジェクト内容: 実験やフィールドワークを通じて、科学的な問題を解決するプロジェクトを実施。例えば、環境保護プロジェクトやロボット製作プロジェクトなど。
- 成果物:実験結果のレポート、プロジェクト成果物(ロボット、環境改善策など)、発表資料。
③デジタル分野
デジタルマーケティングキャンペーン
目的:デジタルマーケティングの手法と戦略を学ぶ。
- プロジェクト内容:実際の企業や製品を対象にデジタルマーケティングキャンペーンを計画・実施。ソーシャルメディア、SEO、PPC広告などの手法を活用し、効果を分析。
- 成果物:マーケティングキャンペーン計画書、実施結果のレポート、分析結果の発表。
ソフトウェア開発プロジェクト
- 目的:ソフトウェア開発の全プロセスを経験し、実践的なスキルを習得する。
- プロジェクト内容:チームでソフトウェアの仕様を策定し、設計・開発・テストを行う。アジャイル開発手法を用い、定期的にスプリントレビューやレトロスペクティブを実施。
- 成果物:開発したソフトウェア、設計書、テスト結果、プロジェクト報告書。
④社会貢献プロジェクト
非営利団体とのコラボレーション
目的:社会問題に取り組み、実践的な解決策を提案する。
- プロジェクト内容:地域の非営利団体と協力し、特定の社会問題(例えば、ホームレス支援や環境保護)に対するプロジェクトを立案・実行。プロジェクトの進捗と成果を評価し、報告する。
- 成果物:社会問題解決のための提案書、実行計画、成果報告書。
これらの実施例を通じて、参加者は実際の問題解決に取り組みながら、理論と実践を結びつけ、実践的なスキルを習得することができます。
PBLは、学習者の主体的な学びを促進し、実際のビジネスや社会に直結する経験を提供するため、教育や研修の現場でますます重要視されています。