AI時代に求められる「ビジネスアーキテクト」視点の獲得——デジタル・ITの"実装"だけでなく、"企画・構想"フェーズから主体的に動く

大手製造業様

Overview

概要

目的

  • システムの実装に意識が偏る状態から脱却し、業務変革(To-Be)を起点に企画・構想を描ける人材を育成する
  • 経験年数の異なるメンバー間で、構想策定・要件定義を進めるための共通言語(型)を構築する

課題

  • 若手・中堅の関心が「どう作るか(手段)」に偏り、上流工程への関与が受動的になっていた
  • 業務を整理し関係者に説明するための標準的なアプローチが、部門内で共有されていなかった

支援の成果

  • 実務に即した上流の型(背景→現状→課題/ニーズ→To-Be)の修得により、受講直後から共通の思考フレームが浸透した
  • 「IT化ではなく業務改革が目的」という目線合わせが進み、現場での主体的な提案姿勢の向上につながった

基幹システムの刷新プロジェクトでは、業務プロセス変革・業務改革を見据えたシステム化構想(デジタル・IT企画)の策定が、企画段階における重要な論点となります。大企業のDX戦略においても、ビジネスとデジタルの双方を理解し、業務課題を起点に構想を描ける人材の育成が重要性を高めています。しかし現場では、中堅・若手人材において「システムをどう実装するか」への意識が強く、構想策定や要件定義の進め方そのものへの理解が十分でないケースが散見されます。結果として、プロジェクトへの関与範囲が限定的になりがちだという課題が指摘されています。

大手製造業様の情報システム部門においても、今後のシステム化プロジェクトの展開を控える中、同様の課題意識がありました。リンプレスは、同社の若手・中堅メンバーを対象に、システム構想・要件定義の進め方を体系的に学び、「IT化が目的ではなく業務が目的である」という視点を再認識する、2日間の実践型「ビジネスアーキテクト育成研修」をインハウス形式で提供しました。

※本件に関するお問い合わせはこちらからお願いします。

1.「IT導入」は手段に過ぎない——「業務プロセス変革」を目的に企画・構想へ挑む第一歩

大手製造業様の情報システム部門では、基幹システムの刷新をはじめとする複数のシステム化プロジェクトが並行して進んでおり、若手・中堅メンバーがその実務の中核を担っています。パッケージやツールの機能を理解し、要件をシステムへ落とし込む「実装」の力は、日々のプロジェクト経験を通じて着実に蓄積されてきました。

一方で、同部門では自らが果たすべき役割を、改めて二つの軸で捉え直していました。一つは、費用感や制約条件も踏まえながら、パッケージやツールで「どう実現するか」を詰め、落とし所を明確にする要件定義の役割です。もう一つは、自社の事業特性や組織風土、既存のIT環境を踏まえ、IT・デジタルを梃子に「そもそも何をすべきか」を事業部門と共に考えるシステム構想の役割です。システム導入を業務プロセス変革へとつなげるには、この両輪がそろっていることが欠かせません。

しかし実際には、プロジェクトに参画した時点で導入方針がある程度固まっていることも多く、構想段階から当事者として関わる経験は限られていました。そのため、メンバーの関心は自然と「どう作るか」に向かいやすく、背景や目的に立ち返って業務を整理し、関係者に説明する進め方は、個々の経験に委ねられていたのが実情です。システム化プロジェクトを「導入して終わり」にせず、業務変革の成果にまで結びつけるため、企画・構想フェーズから主体的に力を発揮できる人材の育成が求められていました。

2. ビジネスアーキテクト的視点と上流工程の「型」を身につける研修設計

本研修は、知識として「分かった」で終わらせず、実務で再現できる進め方(型)を体験すること、そして「型を使って考える」「合意形成しながらまとめる」ことをやり切ることをゴールに設計しました。講義で概念を学ぶだけでなく、受講者自身が手を動かし、グループで議論しながら成果物を仕上げる演習を中心に2日間を構成しています。

最初に取り組むのは、「背景確認シート」を使った検討の出発点の整理です。プロジェクトの背景・目的・前提を最初に言語化して関係者とすり合わせることで、後工程の判断がぶれにくくなります。システム化の検討では「何を作るか」から議論が始まりがちですが、まず「なぜ取り組むのか」に立ち返る手順を、型として身につけることを重視しました。

続いて、ビジネスプロセスチャートや業務フローを用いて現状(AS-IS)を可視化し、課題からニーズ、目標へと構造的に整理したうえで、あるべき姿(To-Be)を描く演習を行いました。業務全体を俯瞰し、表面的な要望の奥にある本来のニーズを見極め、優先順位をつけるという一連の流れは、ビジネスとデジタルの双方を見渡す「ビジネスアーキテクト」の思考プロセスそのものです。

また、約20名の受講者は経験年数や担当領域、バックグラウンドがさまざまでした。グループ編成や進め方を工夫し、異なる立場のメンバーが議論を通じて一つの結論にまとめる過程そのものを、合意形成の実践の場として位置づけました。

3. 上流工程の「型」が部門の共通言語に——2日間で広がった意識変容と手応え

受講後のアンケートでは、総じて高い満足度・推奨度が寄せられました。特に、複数の受講者が共通して挙げたのが「背景確認シート」の有用性です。背景・目的・前提を最初に整理しておくことでアウトプットの質が高まる、明日からの実務にそのまま活用できる、という趣旨の声が繰り返し聞かれました。

AS-IS から To-Be へとニーズを構造化する流れについても、業務全体を俯瞰する視点や、課題を優先順位づけして整理する手順が実務に直結するという評価が得られました。内容が分かりやすく、自身の業務に置き換えてイメージしやすかったという感想も多く、演習中心の設計が実践性の面で受け入れられたことがうかがえます。

最も大きな変化は、「IT化が目的ではなく、業務が目的である」という視点を受講者が改めて実感した点です。システムを手段として捉え、業務・価値・目標から逆算して組み立てる姿勢が印象に残ったという声が寄せられました。本研修の価値は、上流の型(背景→現状→課題/ニーズ→To-Be)を、全員が同じ手順で体験できたことにあります。経験の異なるメンバーが同じ型と言葉で議論できる土台ができたことは、部門としての大きな前進となりました。

4. 個人の学びから組織の力へ——継続的な学びの場として根付かせる次のステップ

今回の研修で得た型を一過性の学びで終わらせないため、同社では今後、新たにプロジェクトに加わるメンバーも同様の学びの機会を得られるよう、定期的に開催される講座への参加を通じて継続的に育成していく方針です。社外の受講者と共に学ぶ形式も取り入れ、他社の視点に触れながら企画・構想力を磨く機会とする予定です。

受講者からは、パッケージ導入プロジェクトにおける現場ユーザーの巻き込み方や、関係者間で利害が対立した際の調整の進め方など、より実践的なテーマを学びたいという要望も寄せられました。上流の型を身につけた次の段階として、組織を動かしながら構想を実現していく力が求められていることを示す声だと言えます。

リンプレスは、今後も同社の情報システム部門が、システムの「実装」だけでなく「企画・構想」のフェーズから事業部門と共に価値を生み出す組織へと進化できるよう、継続的な人材育成を支援していきます。

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